残春はさ迷える子羊達のコンチェルト

Mr.M

文字の大きさ
上 下
82 / 117
第12楽章

第82話 クラブの2

しおりを挟む
遊戯室のドアの前で僕は茜の表情を窺った。
少女の表情はやや暗かったが、
口をきつく結んで精一杯気丈に振舞っていた。
僕はゆっくりとドアを開けた。

奥のカウンターに座っていた西岡が
振り返って椅子から立ち上がった。
「どこに行ってたんだ?」
「・・君に聞きたいことがある」
僕は努めて冷静に返した。
「その前に。
 まずは俺の話を聞いてもらおうか。
 このゲームの謎を解く
 決定的な証拠を見つけたぜ」
そう言うと西岡は
両手をデニムのポケットに突っ込んだまま
「くっくっく」
と不敵に笑った。
茜が僕の方を見て小さく頷いた。

遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。

茜はカウンターの横の小さな丸テーブルの前に
車椅子を着けた。
西岡は彼女とは正反対のカウンターの端に、
座っていた。

「何か・・作ろうか?」
僕はカウンターの中から2人に声をかけた。
「俺はコイツがあるから大丈夫だ」
西岡はそう言って
ジンジャーエールの瓶を揺らした。
「わ、私は・・
 アルコールの入った甘いモノを
 お願いできますか」
茜はやや躊躇いがちに呟いた。

遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。

「『カルーア・ミルク』です。
 甘口で飲みやすいけど
 アルコール度数は高いから気を付けて」
僕はそう言葉を添えて茜の前にグラスを置いた。
茜は恐る恐る口をつけた。
それから僕の方を見て微笑んだ。
僕は小さく頷いてから
西岡の背後を大きく回ってカウンターに戻った。

「それで。
 ・・西岡くん。
 一体君は何を見つけたんだい?」
西岡はそれには答えずに
瓶に口をつけてからコクコクと
ジンジャーエールを飲んだ。
それから徐に1枚のカードを取り出すと
カウンターに置いた。
それは端々が僅かに折れ曲がった
『クラブの2』だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...