残春はさ迷える子羊達のコンチェルト

Mr.M

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第12楽章

第81話 支給品

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「遊戯室に戻ろう」
僕は茜に声をかけた。
彼女は青ざめた表情で
ぼんやりとベッドの方を見つめていた。
「大丈夫かい?」
僕はもう一度声をかけた。
すると突然、
彼女は車椅子を進めた。
そしてベッドの下に落ちていたカードを拾うと
それをポケットに仕舞って
ゆっくりとこちらを振り向いた。

少女は恥ずかしそうに
もう一つのポケットから
四角い小さなモノを取り出して
僕の方へ見せた。
「門の女性から・・これを渡されました。
 言い出せずにすみません・・。
 ゲームには無関係だと思っていたので・・」
それは男性用の避妊具だった。
「前に私が『8つの枢要罪』について
 話したのを覚えていますか?」
僕は黙って頷いた。
「平原さんの持っていた拳銃が『憤怒』。
 六条さんの話していた髑髏の小瓶が『暴食』。
 私に与えられた物は『色欲』。
 あの時、そんなことを考えていました」
「君も全員に支給品が配られていたと・・?」
今度は茜が無言で頷いた。
「僕の時計は『強欲』。
 西岡くんのパスポートは『虚飾』か」
僕の言葉に茜が首を傾げた。
「・・実はね。
 ここだけの話にして欲しいんだけど。
 西岡くんのパスポートは偽造品なんだ。
 彼は『西岡真』じゃない。
 正体不明の名無しの権兵衛なんだよ」
茜がハッと息を呑むのがわかった。

「西岡・・さんは
 何のために郷田さんの部屋に?」
「郷田さんの支給品を調べたいそうだ。
 でも。
 今更彼の支給品が見つかったところで・・ね」
「本当にそうだったんでしょうか?」
「えっ?」
「私達が遊戯室で話をしている間。
 西岡さんはここへ来て
 六条さんを殺したのではないですか?」
今度は僕がハッと息を呑む番だった。
「【犯人】は
 最低でも1人は殺さなければならない」
茜がぽつりと呟いた。
「もし。
 西岡さんが2人を殺したのでなければ。
 六条さんを殺す動機は十分にあります」
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