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第11楽章
第78話 名も無き男の推理
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風が吹いていた。
「くっくっく。
俺は自分が【犯人】でないことを知っている。
死んだ郷田が【犯人】でなければ。
あの車椅子のお嬢ちゃんが
【犯人】としか考えられないんだ」
「それは君の言い分であって、
彼女にも同じ理屈が当てはまるんだよ」
その時。
すぅっと闇が落ちた。
ふたたび雲が月を隠したのだ。
「だが。
お嬢ちゃんはまだ自分の支給品を
公開していない。
怪しいと思わないか?」
「・・弱いね」
「あのお嬢ちゃんを疑う理由は他にもある」
男が小さく息を吸い込む音が聞こえた。
「まず1つ。
お嬢ちゃんの役職宣言のタイミングだ。
彼女が『クラブの7』を宣言したのは
たしか・・」
そこで男は一度言葉をとめた。
「【市民】の中では一番最後だよ」
暗闇に向かって僕は相槌を打った。
「つまり。
最後に残った数を答えるだけの簡単なゲーム。
お嬢ちゃんの宣言した『クラブの7』こそが
郷田のカードで
彼女のカードは『スペードの2』だ。
まさに。
残り物の福を引いたんだ」
風の音が耳に届いた。
男の話には若干の説得力があった。
【犯人】は【市民】を騙りたい。
だが。
【市民】がカードを所持している可能性を
考えた場合、
迂闊に騙ることはできない。
だから。
茜は最後にカードを宣言した。
唯一残された【市民】のカードである
『クラブの7』を。
「さらに。
お嬢ちゃんは郷田が【犯人】だと
主張していたにも関わらず、
あの派手な姉ちゃんを牢屋に入れた。
一度目は投票によって。
二度目は場の空気を利用して」
雲が流れて月が顔を出した。
月明りが僕の全身を包み込んだ。
にもかかわらず。
心の闇は晴れなかった。
「あんたがあのお嬢ちゃんのことを
どう思ってるのか知らないが、
彼女はあんたが考えているよりも
ずっと狡猾でしたたかな女かもしれないぜ」
名も無き男が僕の方をじっと見ていた。
「くっくっく。
俺は自分が【犯人】でないことを知っている。
死んだ郷田が【犯人】でなければ。
あの車椅子のお嬢ちゃんが
【犯人】としか考えられないんだ」
「それは君の言い分であって、
彼女にも同じ理屈が当てはまるんだよ」
その時。
すぅっと闇が落ちた。
ふたたび雲が月を隠したのだ。
「だが。
お嬢ちゃんはまだ自分の支給品を
公開していない。
怪しいと思わないか?」
「・・弱いね」
「あのお嬢ちゃんを疑う理由は他にもある」
男が小さく息を吸い込む音が聞こえた。
「まず1つ。
お嬢ちゃんの役職宣言のタイミングだ。
彼女が『クラブの7』を宣言したのは
たしか・・」
そこで男は一度言葉をとめた。
「【市民】の中では一番最後だよ」
暗闇に向かって僕は相槌を打った。
「つまり。
最後に残った数を答えるだけの簡単なゲーム。
お嬢ちゃんの宣言した『クラブの7』こそが
郷田のカードで
彼女のカードは『スペードの2』だ。
まさに。
残り物の福を引いたんだ」
風の音が耳に届いた。
男の話には若干の説得力があった。
【犯人】は【市民】を騙りたい。
だが。
【市民】がカードを所持している可能性を
考えた場合、
迂闊に騙ることはできない。
だから。
茜は最後にカードを宣言した。
唯一残された【市民】のカードである
『クラブの7』を。
「さらに。
お嬢ちゃんは郷田が【犯人】だと
主張していたにも関わらず、
あの派手な姉ちゃんを牢屋に入れた。
一度目は投票によって。
二度目は場の空気を利用して」
雲が流れて月が顔を出した。
月明りが僕の全身を包み込んだ。
にもかかわらず。
心の闇は晴れなかった。
「あんたがあのお嬢ちゃんのことを
どう思ってるのか知らないが、
彼女はあんたが考えているよりも
ずっと狡猾でしたたかな女かもしれないぜ」
名も無き男が僕の方をじっと見ていた。
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