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第10楽章
第67話 松平の推理②
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「・・馬鹿みたい」
その時、菅野がポツリと口を開いた。
「そもそも。
アタシが【犯人】なら
【市民】じゃなくて【探偵】を騙るわよ。
だってそうでしょ?
どうせ騙るなら
本物が現れた時のことを考えて
【探偵】を騙った方が得じゃない?」
「何だと?」
松平が微かに首を傾げた。
「わからない?
騙りに釣られて本物が現れた場合、
その本物を殺しちゃえば一石二鳥でしょ?
一挙両得。
えーっと他には・・
海老で鯛を釣る?
化粧とパッドで男を騙す?
ちょっと違うかしら」
菅野はさらりとそう答えると、
「あははは」と笑った。
彼女の発言を聞いた僕は
ブルっと体を震わせた。
「だ・か・ら。
呆けた爺の貧相な妄想で
アタシを【犯人】と決めつけないで!
って言ってるの」
そして菅野はグラスを煽ると
松平をキッと睨み付けた。
娼婦の鋭い視線に
老いた豚がブヒブヒと鼻を鳴らして威嚇した。
遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
「根拠はある。
お前さんは
頑なに【犯人】探しを拒否してたよなぁ?
そして散々【探偵】を
炙り出しにかかっていた。
さらに。
そこの小僧に便乗して【探偵】と【市民】の
対立構造を作った。
だが。
決定的な理由は・・
食後の会話だ。
あの時、
そこの小僧とした会話を覚えてるか?」
そう言って松平は西岡の方を指差した。
西岡は大きく頭を振ると
両手のひらを上に向けて肩を竦めた。
「小僧は
『【探偵】は殺された2人のどちらかだった』
そう言ったんだ」
「・・だから?
それが何だっていうのよ?」
菅野が口に手を当てて欠伸を噛み殺した。
「その後、
お前さんは
『そんなに都合よく【探偵】が
”死んでくれる”かしら?』
そう言ったんだ」
対する松平は口元を歪めた。
一瞬の静寂の後、
「プッ、アハハハハッ!
あっはっはっは」
菅野が噴き出した。
「だから?
それが何なのよ?」
「・・わからないのか?
お前さんは無意識のうちに
願望を口にしてたんだよ。
そしてそれは
極めて【犯人】寄りの発言だったんだ」
遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
松平だけでなく
西岡と茜の視線までもが菅野に注がれていた。
「・・ハイハイ。
結局、証拠はないわけね。
『極めて【犯人】寄りの発言』ですって?
アンタこそ呆けてるの?
アタシ達【市民】にとって
【探偵】は【犯人】と同じように敵なのよ!
アタシのことを【犯人】呼ばわりするなら
アタシが2人を殺したという
証拠を見せなさいよ」
そう言って菅野はグラスに口をつけた。
「そもそも。
お婆ちゃんを毒殺した
最重要容疑者のあのオバサンが
郷田も殺したんじゃないの?
車椅子の子猫ちゃんもそう推理してたでしょ?
何せあのオバサンは
郷田の死体の第一発見者でもあるんだから」
「どうやら誤解をしているようだなぁ。
儂が探しているのは
このゲームの【犯人】であって
殺人犯じゃないんだ」
松平の言葉は
遊戯室にふたたび静寂をもたらした。
その時、菅野がポツリと口を開いた。
「そもそも。
アタシが【犯人】なら
【市民】じゃなくて【探偵】を騙るわよ。
だってそうでしょ?
どうせ騙るなら
本物が現れた時のことを考えて
【探偵】を騙った方が得じゃない?」
「何だと?」
松平が微かに首を傾げた。
「わからない?
騙りに釣られて本物が現れた場合、
その本物を殺しちゃえば一石二鳥でしょ?
一挙両得。
えーっと他には・・
海老で鯛を釣る?
化粧とパッドで男を騙す?
ちょっと違うかしら」
菅野はさらりとそう答えると、
「あははは」と笑った。
彼女の発言を聞いた僕は
ブルっと体を震わせた。
「だ・か・ら。
呆けた爺の貧相な妄想で
アタシを【犯人】と決めつけないで!
って言ってるの」
そして菅野はグラスを煽ると
松平をキッと睨み付けた。
娼婦の鋭い視線に
老いた豚がブヒブヒと鼻を鳴らして威嚇した。
遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
「根拠はある。
お前さんは
頑なに【犯人】探しを拒否してたよなぁ?
そして散々【探偵】を
炙り出しにかかっていた。
さらに。
そこの小僧に便乗して【探偵】と【市民】の
対立構造を作った。
だが。
決定的な理由は・・
食後の会話だ。
あの時、
そこの小僧とした会話を覚えてるか?」
そう言って松平は西岡の方を指差した。
西岡は大きく頭を振ると
両手のひらを上に向けて肩を竦めた。
「小僧は
『【探偵】は殺された2人のどちらかだった』
そう言ったんだ」
「・・だから?
それが何だっていうのよ?」
菅野が口に手を当てて欠伸を噛み殺した。
「その後、
お前さんは
『そんなに都合よく【探偵】が
”死んでくれる”かしら?』
そう言ったんだ」
対する松平は口元を歪めた。
一瞬の静寂の後、
「プッ、アハハハハッ!
あっはっはっは」
菅野が噴き出した。
「だから?
それが何なのよ?」
「・・わからないのか?
お前さんは無意識のうちに
願望を口にしてたんだよ。
そしてそれは
極めて【犯人】寄りの発言だったんだ」
遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
松平だけでなく
西岡と茜の視線までもが菅野に注がれていた。
「・・ハイハイ。
結局、証拠はないわけね。
『極めて【犯人】寄りの発言』ですって?
アンタこそ呆けてるの?
アタシ達【市民】にとって
【探偵】は【犯人】と同じように敵なのよ!
アタシのことを【犯人】呼ばわりするなら
アタシが2人を殺したという
証拠を見せなさいよ」
そう言って菅野はグラスに口をつけた。
「そもそも。
お婆ちゃんを毒殺した
最重要容疑者のあのオバサンが
郷田も殺したんじゃないの?
車椅子の子猫ちゃんもそう推理してたでしょ?
何せあのオバサンは
郷田の死体の第一発見者でもあるんだから」
「どうやら誤解をしているようだなぁ。
儂が探しているのは
このゲームの【犯人】であって
殺人犯じゃないんだ」
松平の言葉は
遊戯室にふたたび静寂をもたらした。
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