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第9楽章
第58話 8つの枢要罪 24時30分
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「・・君はどう思う?
【犯人】探しをしないという方針について」
僕は話題を変えた。
「そう・・ですね。
西岡さんはすごく頭の切れる方だと思います。
そして今の状況では、
あの方の作戦に従うことが
私達【市民】にとっては、
最善かもしれません・・」
少女の発言はどことなく歯切れが悪かった。
「・・それよりも。
私には死んだお2人のことが
気になります」
彼女は手に持っていたグラスを置くと
静かに続けた。
「このゲームの参加者は8人です。
何か気付きませんか?」
「それは・・
8という数字のことを言ってるのかい?」
そう言われて
すぐに思い浮かぶのは蛸の足の数。
8は西洋では不吉な数字とされており、
8本の足を持つ蛸は
「悪魔の化身」等と呼ばれている。
一方、日本では
漢字の8は下の方が広がる事から
「末広がり」を意味し、
幸運とされる。
同じモノでも地域が違えば
その解釈は真逆である。
だが。
それが何だろう?
僕は諦めて首を振った。
「『7つの大罪』はご存じですか?」
今度は唐突に7という数字が出てきた。
その昔「7つの大罪」を扱った映画を
観たことを思い出して僕は頷いた。
「では『8つの枢要罪』という言葉は
聞いたことはありませんか?」
「やっつのすうようざい?」
僕は少女の言葉を繰り返した。
「はい。
傲慢
虚飾
怠惰
憤怒
憂鬱
強欲
色欲
暴食
の8つの罪です。
そして憂鬱は怠惰に、
虚飾は傲慢に組み込まれ、
新たに嫉妬が加わって
『7つの大罪』になったそうです」
「・・それがこのゲームとどういう関係が?」
僕は少女の知識に驚くと共に
同時になぜそのようなことを知っているのか
という疑問が湧いた。
「ちょっと前に学校の授業で習ったんです」
少女は僕の表情に何かを読み取ったのか
そう付け足したが、
今時の学校ではそんなことまで教えるのかと
僕は新たな疑問に包まれた。
本当に彼女は堕天使なのではないか
そんな錯覚を起こしそうになった。
「・・最初に殺された郷田満。
彼は女の人達に
酷いことをしていました。
その罪は『色欲』と捉えることができます。
・・平原さんはすごく怒りっぽい方でした。
つまり『憤怒』。
それに彼女は
あんな危険な物を持っていました。
拳銃は『憤怒』の象徴でもある
と思いませんか?」
「つまり。
ここに集められた人間は
その『8つの枢要罪』に関係がある者達。
そう言いたいのかい?」
僕は少女の言葉を繋いだ。
「もしかすると。
主催者は咎人が咎人を罰するように
仕向けているのではないでしょうか」
遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
咎人。
僕は目の前の少女を見た。
彼女の温和な瞳がじっと僕を見つめていた。
胸がキリリと痛んだ。
堕天使に恋する・・隠者。
僕は軽く頭を振った。
「そ、それは・・」
そして口を開きかけたものの、
すぐに口を噤んだ。
「と。
これはあくまで私の妄想です。
それに人は大なり小なり、
意識的にしろ無意識にしろ、
何らかの罪を犯していますから」
そう言って塚本茜は微笑んだ。
遊戯室の柱時計が
ボーンと24時30分を告げた。
【犯人】探しをしないという方針について」
僕は話題を変えた。
「そう・・ですね。
西岡さんはすごく頭の切れる方だと思います。
そして今の状況では、
あの方の作戦に従うことが
私達【市民】にとっては、
最善かもしれません・・」
少女の発言はどことなく歯切れが悪かった。
「・・それよりも。
私には死んだお2人のことが
気になります」
彼女は手に持っていたグラスを置くと
静かに続けた。
「このゲームの参加者は8人です。
何か気付きませんか?」
「それは・・
8という数字のことを言ってるのかい?」
そう言われて
すぐに思い浮かぶのは蛸の足の数。
8は西洋では不吉な数字とされており、
8本の足を持つ蛸は
「悪魔の化身」等と呼ばれている。
一方、日本では
漢字の8は下の方が広がる事から
「末広がり」を意味し、
幸運とされる。
同じモノでも地域が違えば
その解釈は真逆である。
だが。
それが何だろう?
僕は諦めて首を振った。
「『7つの大罪』はご存じですか?」
今度は唐突に7という数字が出てきた。
その昔「7つの大罪」を扱った映画を
観たことを思い出して僕は頷いた。
「では『8つの枢要罪』という言葉は
聞いたことはありませんか?」
「やっつのすうようざい?」
僕は少女の言葉を繰り返した。
「はい。
傲慢
虚飾
怠惰
憤怒
憂鬱
強欲
色欲
暴食
の8つの罪です。
そして憂鬱は怠惰に、
虚飾は傲慢に組み込まれ、
新たに嫉妬が加わって
『7つの大罪』になったそうです」
「・・それがこのゲームとどういう関係が?」
僕は少女の知識に驚くと共に
同時になぜそのようなことを知っているのか
という疑問が湧いた。
「ちょっと前に学校の授業で習ったんです」
少女は僕の表情に何かを読み取ったのか
そう付け足したが、
今時の学校ではそんなことまで教えるのかと
僕は新たな疑問に包まれた。
本当に彼女は堕天使なのではないか
そんな錯覚を起こしそうになった。
「・・最初に殺された郷田満。
彼は女の人達に
酷いことをしていました。
その罪は『色欲』と捉えることができます。
・・平原さんはすごく怒りっぽい方でした。
つまり『憤怒』。
それに彼女は
あんな危険な物を持っていました。
拳銃は『憤怒』の象徴でもある
と思いませんか?」
「つまり。
ここに集められた人間は
その『8つの枢要罪』に関係がある者達。
そう言いたいのかい?」
僕は少女の言葉を繋いだ。
「もしかすると。
主催者は咎人が咎人を罰するように
仕向けているのではないでしょうか」
遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
咎人。
僕は目の前の少女を見た。
彼女の温和な瞳がじっと僕を見つめていた。
胸がキリリと痛んだ。
堕天使に恋する・・隠者。
僕は軽く頭を振った。
「そ、それは・・」
そして口を開きかけたものの、
すぐに口を噤んだ。
「と。
これはあくまで私の妄想です。
それに人は大なり小なり、
意識的にしろ無意識にしろ、
何らかの罪を犯していますから」
そう言って塚本茜は微笑んだ。
遊戯室の柱時計が
ボーンと24時30分を告げた。
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