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第1楽章
第3話 麗人
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「どちら様でしょう」
不意に背後から声がした。
僕は驚いて
先生に叱られた子供のように
恐る恐る振り向いた。
そして。
その声の主を見て僕は言葉を失った。
その声色からして女性だと思ったのだが、
果たしてそれが正しいのか
僕にはすぐに判断できなかった。
そこに立っていたのは
白と黒の2色から成るスーツに
その身を包んだ細身の人物だった。
年の頃は20代半ばだろうか。
黒く艶のある髪は
女性としては短く刈られていたが、
男性であれば長い部類に入る。
身長は僕と同じくらい。
女性ならば高いといえるが、
男性であれば平均的な身長だった。
そしてその顔。
どちらにしても
恐ろしいほどに美しかった。
色白できめの細かい肌。
切れ長の目は
睨んだ者を一瞬で黙らせてしまうくらいの
鋭さがあった。
スッと通った鼻はツンと高く、
薄い唇が鮮やかな赤に染まっていて、
それが性別を超越した色気を醸し出していた。
この浮世離れした美しさは現実のモノなのか。
僕は完全に目を奪われていた。
その時、
スーツの胸元の膨らみを僕の目が捉えた。
そこでようやく
僕は目の前の人物が女性だと理解した。
男装の麗人。
女性にしては凛々しすぎて、
男性にしては美しすぎる。
「どうしました?」
再び男装の麗人が口を開いた。
「あ、あの・・。
鈴木(すずき)です・・」
僕は急いでポケットから招待状を取り出して
彼女に見せた。
男装の麗人は招待状に目を落とすと
微かに首を傾げた。
感情のないロボット。
アンドロイドのようだと思った。
彼女はすぐに僕の方へ視線を戻した。
「本日ご招待されたのは
鈴木会長のはずですが。
もしかして。
会長のお孫さんでしょうか?」
僕は首を縦に振った。
男装の麗人はそれで納得したのか小さく頷いた。
「鈴木洋(すずき ひろし)様ですね。
お待ちしておりました。
玄関を入られて廊下を左に進まれて下さい。
突き当りの部屋が
応接室となっております」
そして彼女は胸ポケットから
1枚のトランプのカードを出した。
僕は首を傾げつつそのカードを受け取った。
何の変哲もないそのカードは
『クラブの6』だった。
「鈴木様は【市民】となります。
カードはこのままお持ちになられても
破棄されても構いません。
ですが。
お持ちになる場合には
くれぐれも他のお客様に見られぬよう
しっかりと保管して下さい」
そう言うと彼女は深々と頭を下げた。
僕はもう一度手の中のカードに目を落とした。
彼女の説明は
十分に納得できるものではなかったが、
中でも『他のお客様』
という点が引っ掛かった。
客は僕1人ではないようだ。
僕は彼女に気付かれぬよう小さく舌打ちをした。
「それともう一つ・・」
不意に背後から声がした。
僕は驚いて
先生に叱られた子供のように
恐る恐る振り向いた。
そして。
その声の主を見て僕は言葉を失った。
その声色からして女性だと思ったのだが、
果たしてそれが正しいのか
僕にはすぐに判断できなかった。
そこに立っていたのは
白と黒の2色から成るスーツに
その身を包んだ細身の人物だった。
年の頃は20代半ばだろうか。
黒く艶のある髪は
女性としては短く刈られていたが、
男性であれば長い部類に入る。
身長は僕と同じくらい。
女性ならば高いといえるが、
男性であれば平均的な身長だった。
そしてその顔。
どちらにしても
恐ろしいほどに美しかった。
色白できめの細かい肌。
切れ長の目は
睨んだ者を一瞬で黙らせてしまうくらいの
鋭さがあった。
スッと通った鼻はツンと高く、
薄い唇が鮮やかな赤に染まっていて、
それが性別を超越した色気を醸し出していた。
この浮世離れした美しさは現実のモノなのか。
僕は完全に目を奪われていた。
その時、
スーツの胸元の膨らみを僕の目が捉えた。
そこでようやく
僕は目の前の人物が女性だと理解した。
男装の麗人。
女性にしては凛々しすぎて、
男性にしては美しすぎる。
「どうしました?」
再び男装の麗人が口を開いた。
「あ、あの・・。
鈴木(すずき)です・・」
僕は急いでポケットから招待状を取り出して
彼女に見せた。
男装の麗人は招待状に目を落とすと
微かに首を傾げた。
感情のないロボット。
アンドロイドのようだと思った。
彼女はすぐに僕の方へ視線を戻した。
「本日ご招待されたのは
鈴木会長のはずですが。
もしかして。
会長のお孫さんでしょうか?」
僕は首を縦に振った。
男装の麗人はそれで納得したのか小さく頷いた。
「鈴木洋(すずき ひろし)様ですね。
お待ちしておりました。
玄関を入られて廊下を左に進まれて下さい。
突き当りの部屋が
応接室となっております」
そして彼女は胸ポケットから
1枚のトランプのカードを出した。
僕は首を傾げつつそのカードを受け取った。
何の変哲もないそのカードは
『クラブの6』だった。
「鈴木様は【市民】となります。
カードはこのままお持ちになられても
破棄されても構いません。
ですが。
お持ちになる場合には
くれぐれも他のお客様に見られぬよう
しっかりと保管して下さい」
そう言うと彼女は深々と頭を下げた。
僕はもう一度手の中のカードに目を落とした。
彼女の説明は
十分に納得できるものではなかったが、
中でも『他のお客様』
という点が引っ掛かった。
客は僕1人ではないようだ。
僕は彼女に気付かれぬよう小さく舌打ちをした。
「それともう一つ・・」
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