ストーカー

Mr.M

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二章 葉月

八月十八日(木曜日)10

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二十時を回っても空腹感はなかった。
それが昼食のせいなのか、
それとも安倍瑠璃のせいなのか、
自分でもわからなかった。

僕は昼間に買っておいたサンドウィッチと、
若干生温かいコーヒー牛乳をテーブルに並べた。
それからテレビを点けて
チャンネルを適当なバラエティ番組に合わせた。
一人静かな部屋で食事をするよりも
多少の雑音があったほうが気分が紛れた。
僕はサンドウィッチを開けて、
電車の中で閃いた大烏犯人説について
もう一度考えを巡らせた。

大烏が最も疑わしいとされる根拠は
事件の起きたタイミングである。
次に地理的条件である。
高速道路を使って二十分という距離は
十分に許容範囲内と考えてよいのではないか。
そして時間的条件である。
大烏は暇を持て余していると言っていた。
これら三つの条件から
大烏犯人説は成り立っている。
そのうえでわからないのが動機である。
金と時間のある生活。
社交性を含めた人間性。
何不自由ない生活を送っている大烏が、
はたして殺人という犯罪に手を染めるだろうか。

今はまだその答えはわからないが、
地理的条件だけで
大烏を容疑者リストから外すのは
時期尚早と言わざるを得ない。

僕はふたたび容疑者リストに大烏を加えた。
今日一日は予定通りにはいかなかったが、
無駄ではなかった。
この調子で残る柏木と二四についても
情報を集めることができればよいのだが。
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