ストーカー

Mr.M

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一章 文月

七月十八日(月曜日)7

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それからも彼女は水着姿で施術を受け続けた。

そして僕は確信した。
彼女の異常な性癖を。

彼女の施術の日は朝から緊張した。
同時に彼女の官能的な肉体は僕の欲望を刺激した。
恐怖と悦楽という相反する感情が
僕の中でせめぎ合っていた。

しかし人間、誰しも慣れる。

僕の反応が弱くなることに満足できなかったのか、
彼女の水着は徐々に過激になっていった。
さらに彼女は施術中に時折、
体をくねらせたり、
微かな吐息や喘ぎ声ともつかぬ囁きを
発するようになった。

この半年、
僕は
「見ざる、聞かざる、言わざる」
を貫き通して彼女の施術をやり過ごした。
そして。
僕という玩具に飽きたのか、
彼女の来店頻度も少しずつ減っていった。


明日はそんな彼女がやってくる。
前回の施術から三週間が空いてた。

午前中の予約が彼女一人というのが
せめてもの救いだった。
精神と体力を著しく消耗する彼女の施術の後で、
すぐに次の施術となると僕がもたない。

午後からの予約客は
十四時から
八橋菖蒲(やつはし しょうぶ)
十五時三十分から
柏木督右衛門(かしわぎ とくえもん)
十七時三十分から
柳道風(やなぎ みちかぜ)
の三名だった。

八橋菖蒲は専業主婦だ。
子供が独立していることもあって
今は夫婦二人悠々自適に暮らしていた。
彼女の話のほとんどは旦那に対する不満で、
それを延々と聞かされるこちらとしては
毎回反応に困るばかりである。
それでも彼女は
月に一度は来店してくれるお得意様だった。

柏木督右衛門は現役のプロレスラーだ。
プロレスラーにしては
それほど大きいとは言えない体だったが、
見た目だけで判断してはいけない。
服の下に隠されたその肉体は、
実際に施術をすると
その鍛え抜かれた筋肉に驚かされる。
そして目立ちすぎる赤毛。
彼は「RED BEAN」を名乗る
有名な覆面レスラーだった。
プロレスに疎い僕でも
その名前なら聞いたことがあった。
世間ではマスクからはみ出した赤毛から、
中身は外国人ではないかと言われていた。
彼の試合を何度か動画で見たことがあるが、
そのプレイスタイルは
僕の知る彼とは別人のように荒々しく、
反則ギリギリの激しいものだった。
人間、
外見だけではその人の本質はわからないのだ。
柏木も定期的に来店してくれるお得意様だった。

最後の柳道風は初めての客だった。
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