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八章 日暮れと死
第46話 夕餉①
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茶の間の障子戸を開けると
政子と富子が座っているのが見えた。
息子もそして遺産も失った二人。
二人は明らかに疲弊していた。
ボクは居心地の悪さを感じつつ、
二人から少し離れた所に座った。
広いはずの茶の間が今はやけに狭く感じた。
それでも
二人がこちらに目を向けることはなかった。
しばらくして
福と竹千代、そして五代が膳を運んできた。
夜霧家の長男であり、
政子と富子の兄でもあるはずの竹千代が
今でも変わらず使用人という身分に
甘んじていることが予想外だった。
「お太閤様がまだ
お見えになって
おりません。
お食事の用意ができたことを
お知らせしてきなさい」
福が五代に命じた。
「そ、それならボクが代わりに・・」
ボクはこの気まずい空間から
逃げ出す口実ができたことに
ホッと胸を撫で下ろした。
キュッキュッと軋む
鴬張りの廊下を歩いていると、
屋敷の外から
「リーリー。リーンリーン」
と美しくも悲しげな虫の音が聞こえてきた。
酉の間の襖の前で
ボクは一度「コホン」と小さく咳払いをした。
それから
「秀吉さん?」
と呼びかけた。
返事はなかった。
「食事ができましたよ」
ボクは続けて襖越しに声をかけた。
しかしまたもや返事は無かった。
「は、入りますよ?」
姫子の死体を発見した時のことを思い出して
ボクの手は微かに震えていた。
ボクはごくりと唾を飲み込んでから
恐る恐る襖を開けた。
部屋の中に秀吉の姿はなかった。
政子と富子が座っているのが見えた。
息子もそして遺産も失った二人。
二人は明らかに疲弊していた。
ボクは居心地の悪さを感じつつ、
二人から少し離れた所に座った。
広いはずの茶の間が今はやけに狭く感じた。
それでも
二人がこちらに目を向けることはなかった。
しばらくして
福と竹千代、そして五代が膳を運んできた。
夜霧家の長男であり、
政子と富子の兄でもあるはずの竹千代が
今でも変わらず使用人という身分に
甘んじていることが予想外だった。
「お太閤様がまだ
お見えになって
おりません。
お食事の用意ができたことを
お知らせしてきなさい」
福が五代に命じた。
「そ、それならボクが代わりに・・」
ボクはこの気まずい空間から
逃げ出す口実ができたことに
ホッと胸を撫で下ろした。
キュッキュッと軋む
鴬張りの廊下を歩いていると、
屋敷の外から
「リーリー。リーンリーン」
と美しくも悲しげな虫の音が聞こえてきた。
酉の間の襖の前で
ボクは一度「コホン」と小さく咳払いをした。
それから
「秀吉さん?」
と呼びかけた。
返事はなかった。
「食事ができましたよ」
ボクは続けて襖越しに声をかけた。
しかしまたもや返事は無かった。
「は、入りますよ?」
姫子の死体を発見した時のことを思い出して
ボクの手は微かに震えていた。
ボクはごくりと唾を飲み込んでから
恐る恐る襖を開けた。
部屋の中に秀吉の姿はなかった。
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