ボクは名探偵?

Mr.M

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七章 知と血

第40話 遺言状

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「な、何を言ってるのです・・。
 ち、父と・・兄・・ですって・・」
「ま、政姉ぇ・・爺ぃと使用人の戯言に
 ま、惑わされるんじゃないよ。
 こ、此奴らはこの家を乗っ取るつもりだよ」
政子と富子は明らかに動揺していた。
「も、もしその話が本当なら・・
 ひ、秀吉は実の姉との間に・・
 こ、子を作ったことになるのですよ・・」
「それだけじゃないよ。
 アンタは自分の娘の菊子との間にも
 子供を作ったことになるんだよ!
 この鬼畜野郎!」
「かっかっか」
秀吉は二人の発言を笑い飛ばした。
「何をほざいておるんじゃ。
 この夜霧の家がどうやって栄えてきたか、
 お前らも知らぬわけではあるまい。
 親兄妹との交配こそが
 純血を守る唯一の手段じゃろう!」


「あっはっはっはっは」
静まり返った茶の間に
政子の笑い声が響き渡った。
「な、何がおかしいんだい、政姉ぇ。
 あ、頭が変になっちまったのかい?」
「あはははは。
 富子。
 この老いぼれが父親だろうと
 無能な使い走りが兄だろうと
 この際どうでもいいのですよ。
 大切なのは今、この状況。
 お母様の遺言状を覚えているでしょう?」
政子のその言葉に富子がニタリと口を歪めた。
「そ、そうだったね。
 今や夜霧の財産はアタシと政姉ぇのモノ。
 爺ぃ!
 残念だったね。
 アンタにゃ一文も手に入らないんだよ!」
「あはははは」
「いひひひひ」
政子と富子は顔を見合わせて笑った。
「かっかっか」
秀吉がさらに大きな笑い声をあげた。
政子と富子が訝しげな視線を秀吉に向けた。
「何がおかしいのです?」
「ついにボケたかい、狸爺ぃ」


そこで秀吉は真顔になりボクの方に目を向けた。
この部屋に入ってきて
初めてボクという存在に気付いたようだった。
秀吉はボクの頭の天辺から足の爪先まで
ねっとりした視線を這わせてきた。
それからふたたびボクの顔を正面から見据えた。
「・・お前さんか?
 姫子が呼んだ探偵というのは」
ボクはごくりと唾を飲み込んでから頷いた。
すると秀吉は懐から一枚の紙を取り出して
ボクの方へ差し出した。
ボクは秀吉の許へ歩み寄って
その紙を受け取った。
その紙に書かれた文字を見て
ボクは言葉を失った。

「どうしたのです!」
「何が書いてあるんだい!」
政子と富子の鋭い視線を受けながら
ボクは震える声でそれを読み上げた。
「・・夜霧家の全財産は
 夜霧姫子の弟である秀吉に
 受け継がれるものとする」

「ジリジリジリジリ」
騒がしく耳障りな虫の音が
静まり返った部屋に虚しく響いた。
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