魔法少女、派遣します!

椎茸大使

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第7話

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朝見たニュースバラエティには一言物申したいものがある。
しかし、それはそれこれはこれ。
仕事は真面目に行う3人。

警察署に到着した3人を出迎えたのはこの前事務所に訪ねてきた人。
どうやら生活安全課に所属している警察官のようで、生活安全課の応接スペースへと案内される。
そこで事務員にお茶をすすっと出されてから打ち合わせがスタートする。

スタートすると言っても、元々この手の講座はよく行っていたということもあり、説明は淀みなく、あっという間に終わる。
『トライエレメンツ』からの質問する余地なかった程。
これまでの経験から疑問が出るような事も提供された資料に全て書いてあったからだ。
痒い所に手が届くどころか、痒くなる所にあらかじめ痒み止めというレベルだ。

そんなわけでスムーズに終わった打ち合わせの後、3人はリハーサルを行なう。
防犯講座の内容は決まっているので台本が用意されている。
相手は子供なのでアドリブで対応しないといけないこともあるが、それも今までの傾向から大体予想がついているようで、その辺のことも書き込まれている。
どれだけの年月と先輩ヒーロー達の頑張りがここに集約しているのか、気になる所。
しかし由那は気にならないようで、凄いやの一言で済ませていた。
確かに凄いんだけども……。

「既になんらかの能力を持っている人も、これから能力を手に入れる人も、持っていない人も、自分の行動には十分に気をつけましょう。ただ人を傷つけるだけならエネミーとは変わらない。だからこそ、自身の生き方に責任を持ちましょう。(ここでよく分からないという声が上がるはずだから……)よく分からないか~。だったらこう考えようね。自分から能力や暴力を使わない。誰かを守る時、誰かから能力や暴力を使われた時だけ、力を使うと。テレビに映るヒーロー達も人を傷つけるために力を使ってないよね?  ヒーローの人達と同じようにすればいいんだよ。」
「お疲れ様です。いい感じですね。休憩を挟んだ後、残りのリハーサルもやりましょう。」
「分かりました。」

(それにしても、警察がヒーローを真似しろって言っていいのかしらね?)

湊はふとそう思った。

途中で休憩を挟みつつリハーサルは問題なく終わった。

「お疲れ様でした。明日はよろしくお願いしますね。」
「はい。それでは、これで失礼します。」

挨拶を終えると3人は次の仕事場に向かう必要があるが、その前にお昼だ。
今日のメニューは光島グループが経営している高級ホテルのシェフが作ってくれたランチメニュー。
由那と湊の分もちゃんとある。
それをわざわざホテルに向かって食べるというから羨ましいことこの上ない。
メイドさんにお昼を持たせるのも、どこかのお店でというのも選択肢にはあったはずなのだが、お嬢様がそういう気分だったのでそういうことになった。
食事中、由那はパクパクと、湊はビクビクと食べていた。
湊はテーブルマナーを気にしていたからだが、由那は全く気にしていない。
由那は将来大物になるのかもしれない。

歯磨きを終えたら今度こそ次の仕事場へ。
次の仕事はまたヒーローショー。
今回は演出ではなく敵怪人役だ。
ヒーローなのに怪人をやる。
こういう時能力持ちだと派手さが増すのでヒーロー界隈では結構ポピュラーな仕事だ。
しかし、ヒーローショーにヒーローを雇用するのは有名ヒーローが主で、地方のヒーローやマイナーなヒーローだとその確率は途端に下がる。
御本人さんはヒーロー活動で忙しいので代役を立てるが、それでもイメージを崩すわけにはいかずヒーローを雇用する。
だが、マイナーどころだとその心配もなくなるので、一気に雇用されなくなるのだ。
資金力に差もある事だしね。
ちなみにヒーローショーにおけるヒーロー雇用のお値段は、ヒーロー役>>怪人役>>>雑魚敵>>>>>>>演出となる。
3人は大体演出。
今回は他のヒーローの代役として選ばれたのだ。

「なんで私だけこんな仕事……。」
「ごめんねー。今回の敵怪人は2人組でさ、能力的にあの2人が適役なんだよね。」

残念な事に湊はまた発電機をしている。
スタッフの意向に応じないとなので仕方ない事だが。



「それでは、私達はこれで。」
「お疲れ様でーす。」

ヒーローショーも無事に終わり、3人は仕事場を後にする。
今回の報酬は1人1万円程。
幾らかは事務所に持っていかれるが、それでも手元にはそれくらい残る。
普段のバイト(演出等)では4千円程度が残るので倍以上だ。
これには由那も湊もホクホクだ。

この仕事で本日のお仕事は終了。
後は帰宅するもよし、遊んでいくもよしの状況だ。

「私、今度こそゲームセンターであのぬいぐるみを手に入れますわ!」
「ゲーセンかー。まあ、時間的にもそれくらいがいいかな。明日もあるからあんまり遅くなるのもどうかと思うしね。」
「私も太◯の達人やりたい!」

時刻は16時を少し過ぎた頃ということもあり、3人は軽く遊んでいくことを選んだようだ。
場所はゲームセンター。
お嬢様とゲームセンターはミスマッチな組み合わせだが、本人は全く気にしていないご様子。
今も、クレーンゲームの新しい景品を物色しているほどに場慣れしている。
最初はは由那に誘われるままに連れてこられ、不良の人達の溜まり場なのではと戦々恐々としていたが、ラブリーな瞳でこちらを見てくるウサぬいぐるみにハートを撃ち抜かれ、気づけば常連さんに。
今ではクレーンだけでなく、ガンシューティング、レース、メダル、カード、格ゲーも熟す程。
それも資金力の賜物だろう。

3人は時に個別で、時に一緒に遊んでいる内にあっという間に時間が過ぎていき、ゲームセンターから追い出される時間が迫ってきていた。
いくらヒーローでも遊びたいからという理由でお店に長居できるはずもない。
そろそろ帰ろうかと思っていたところに3人に近寄るチャラそうなお兄さん。
もしやナンパか!?  と身構える湊さんを他所に、気軽に話しかける火乃香さん。

「あら、どうしましたの?」
「すみません、火乃香さん。どうしても取れない景品があって、それで1つご教授願えないかと思いまして。」
「あら、そうですか。で、どれが取れないというのかしら?」
「これなんですけど。」
「ああ、これですか。このタイプはここを狙えば一発で取れますわよ。」
「あ、そうなんですか。ありがとうございます。ちょっとやってみますね。」
「ええ。ご武運を。」
「もちろんです!  今度会った時、いい報告を期待していてください。」

軽く御指南した火乃香は颯爽とその場を立ち去る。
その雰囲気はもはや常連を飛び越して熟練者の風格すら感じられる。
どれだけクレーンゲームに貯金したのか気になるところだ。

「えーと、火乃香?  さっきの人と知り合いなの?」
「ええ。何度か取り方を教えたことがある程度ですけど。」

さっきのチャラい人は火乃香より3つ年上だ。
本来はさん付けしなくてもいいはずなのだが、チャラい人は敬意を持ってそう呼んでいる。
本当は姐さん呼びしたいのだが、どう考えても年下で姐さんはないだろうと考えてさん付けしている事を火乃香は知らない。
この辺のゲーセンに通う人達の間で火乃香がアイドル的扱いになっている事も火乃香は知らない。
むしろ、知らない方が幸せだろう。
果たして、火乃香はその事をいつ知ることになるのやら。

遊び終えた3人はそれぞれ家に帰り、夕食や試験勉強をする。
普段よりも効率よく勉強をすることができた湊と火乃香。
試験期間に出された宿題を終わらせた由那。
3人は普段よりも進みが良かったようで、どうやらゲーセンで遊んだのがいいストレス発散に繋がったらしい。
そのため、3人は気分良く眠りにつくことができた。

その翌日。
仕事に遊びに勉強とハードスケジュール気味だったが充実した時間を過ごした為にぐっすりと寝ることができ、気分爽快、すっきりとした目覚めとなった3人。
朝の支度を終えて仕事場である警察署に向かう。

講習開始時間となり、早速警察の人達と一緒に子供達の前へ出る『トライエレメンツ』の3人。
軽い自己紹介の後リハーサル通り講習を行い問題なく進んでいく。
そして、最後にヒーローへの質問コーナーへと移行した。

「「「はい、はい、はーい!」」」
「えーと、それじゃ、そこの緑の服を着た男の子。」
「はい!  おねーさんたちはいつからヒーローになりたいと思ったんですか?」
「私は家名に恥じぬ立派な人間になろうと思い、その活動の一環としてヒーロー活動を始めましたわ。いつから、というのであれば、家の仕事を知り、その手助けをしたいと思った時ですかね。」
「私は生まれつきこの力があったけど、それを活かそうと思ったことはなかったの。ただ普通に生活できればなぁって、考えていたんだけど、ある日火乃香お姉さんが誘ってきたの。一緒にヒーローをやりましょうって。それで断れきれなくて引き受けたんだけど、最初の仕事でありがとうって言ってもらったの。その時、すごく嬉しかったんだ。だからその時かな。誘われたからじゃなくて、ちゃんとヒーローになりたいって思ったのは。」
「私は、前にヒーローに助けられたことがあるの。その時に、助けてくれたヒーローみたいになりたいって思ったのがきっかけかな。」

3人はそれぞれヒーローになりたいと思ったきっかけを話す。
順番は火乃香、湊、由那の順番だ。

「他にはないかなー?」
「はい!」
「はい。」
「はい。」
「はいはいはい!!」
「じゃあ、そこの元気のいい君。」
「はい!  どうやったらヒーローになれますか?」
「どうやったら、かぁ~。えーとね、ヒーローっていうのはみんなこういうカードを持っているの。このカードはヒーローとして認めますよーっていうカードなんだ。それで、このカードを手に入れるにはヒーローになれるかの試験……えーと、テストがあるの。そのテストに合格するともらえるんだよ。」
「そのテストは僕も受けることができますか?」
「まだ無理かな。テストを受けるには10歳を超えている必要があるの。だからもう少しだけ待ってね。」

ヒーローをやるのであればある程度年齢を重ねている方が好ましい。
それは善悪の判断やとっさの時の対応力が身についていると判断できるからだ。
その為、ヒーローという存在に関する法律を決める為の会議が行われた当初は16歳以上からとする予定だった。
しかし、ある議員の発言によって10歳からとなった。
その発言とは、魔法少女に関するもの。

魔法少女には大きく分けて2種類のタイプが存在する。
1つ目は『リ◯カルマジカル』や『レ◯ーズ』などのタイプ。
体内の魔力を用いて奇跡を起こすもので、由那達もこのタイプ。
もう1つがその発言に深く関わっているタイプで、異世界の妖精等と契約をするというもの。
『◯と契約して、魔◯少女になってよ』や日朝なんかはこのタイプ。

当時はまだ可能性の段階であったが、魔法少女といえば2番目のイメージが強く、それは議員は勿論、多くの人々もそうであった。
それ故、その意見を無視する事ができなかった。
結果、少女達がヒーローとして活動出来るようにという考えの元、10歳以上という条件へと変更されたのだ。

「分かった!  だったら僕は早く大きくなる!」
「うん。いい返事だ。応援してるよ。」

その後もいくつかの質問を受け答えていく。
恋人はいますか?  などというおませな定番もありつつも順調に進んでいき、時間的にラストの質問がされる。

「た、戦うのって、怖くないんですか?  私、超能力が使えるんですけど、ちょっと物を浮かせるくらいしか出来なくて、だから、ヒーローになるのが怖いんです。」
「能力があるからって、無理にヒーローになる必要はないよ。能力があるのにヒーローになっていない人もいるし、逆に能力がなくてもヒーローになっている人がいる。だから無理矢理ヒーローにしようとする人はいないから安心していいよ。」
「そうなの?  安心しました。」

「もう時間なのでこれで講座はおしまいとなります。みんな、手伝ってくれたヒーローのお姉ちゃん達に最後にありがとうを言おうか?」
「「「ありがとうございました!」」」
「こちらこそ。」
「じゃあね。」
「ばいばい。」

こうして無事に防犯講座は終了した。
笑顔で手を振る子供達に手を振り返しながら3人は帰っていった。
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