上 下
77 / 126

レンちゃん負け知らず(えろではないです)

しおりを挟む
四則演算。
それは足し算、引き算、掛け算、割り算からなる基本的計算の事。
異世界においては文字が読めないと同じくらいに、この四則演算に関して分からない、出来ないという話は多い。
日本では小学生のうちに習う内容ではあるが、世界が変われば常識が変わるもので、貴族が知識を独占して庶民には勉強する機会がないのが常識なんて事だってあり得るわけだ。
まあ、何が言いたいかと言えば、コーネリアさんは%が分からなかったんだ。
ちなみにその時のセリフが「すみません。そのぱぁせんとぉとはなんでしょうか?」だ。

「えっと、コーネリアさんは計算はどのくらいできる?」
「一通りは習いました。これでも騎士ですから!」

ドヤァって感じにふんすしてるのはかわいいね。
でもそっか。
一応四則演算は出来たか。
まあ、騎士さんに割合はそこまで必要な内容じゃないし数字が出ればそれで十分なのかもしれない。
文官や貴族なら教わってるかもしれないけど。

「パーセントってのは割合でどのくらいっていうので、簡単にいえば数値を100個に分けてその分けた個数がいくらあるかっていうものなんだ」
「はぁ……」
「えっと、仮にステータスが100だとするでしょ?  その100を100個に分けてその内のどのくらいの個数かっていうのがパーセントなんだよ」
「はい?」
「あー、もう、いいや。手加減はいる?  いらない?」

分かっている事と、説明出来る事は別物だね。
言葉にするの難しいや。

「面倒になって説明やめてるし」

そこ、うるさい。
というかハイネちゃんは分かるのかね。

「いりません!」
「身体強化はあり?  なし?」
「まずはなしでお願いします!」
「了解」

コーネリアさんは剣のみのスタイルの模様。
騎士といえば剣と盾ってイメージがあったけど、あの時あった遺体には他に女騎士は居なかった。
だから多分、コーネリアさんが1番近くでジュリアちゃんを護る人間。
女同士だからこそ近付ける場所があるからね。
でも、そういう所に剣はともかく大きくて邪魔になる盾は持っていけない。
それ故の剣のみというスタイルという事かな。

「レンさんは格闘家でしたか……」
「うんにゃ、剣だろうが弓だろうが槍だろうが斧だろうが鎌だろうが魔法だろうがなんだって出来る万能型だよ。勿論素手もね。ただ、お金が掛からないから素手ってだけ。扶養家族が多いから無駄遣い出来ないんだよね」

一応、武器がないわけでもないが強過ぎるんだよね。
軽く振っただけでゴブリンの上半身が消滅してしまうくらいに。
そんなもん使えるかー!
というわけで素手です。

「それじゃ行くよ」

言うが早いか、コーネリアさんに向かって7割の速度で駆け出していく。
そしてコーネリアさんの手前で横へと10割の速度で跳ぶ。
目の前での急激な方向転換と速度の緩急によってコーネリアさんからは突然消えたように見える……といいが、少なくとも一瞬見失うだろう。
その一瞬を使って更に惑わせる。
右へと跳んだ後、そこから上へと跳び上がる。
左へと身体ごと向けたコーネリアさんの視線の先には既に俺はおらず、自分に落ちてくる影で今俺の位置を把握したが……もう遅い。
体を捻りながら手を伸ばしてコーネリアさんの鎧を掴む。
そしてコーネリアさんの真後ろに着地してそのままの勢いでコーネリアさんを投げ飛ばす。
最初を首を掴もうかと思ったけど、なんか流石に危ないかなと途中で変更して鎧にした。
だから投げ辛いのなんのって。
でも小柄な身体を活かして重心の下へと入り込んで、そこからステータスの力で頑張った。

ズダンッと地に転がったコーネリアさんの上に飛び乗る。
いわゆるマウントポジションだ。
そして首に軽く手をかける。

「俺の勝ち~」
「何も……出来なかった」
「まあ、一般的な格闘家から外れた戦い方したからね。対応出来なくても仕方ないって」

ぶっちゃけ、こんなアクロバティックな投げ技は無駄だらけなんだよね。
でもその無駄が時には相手を翻弄したりもするのだよ。
無駄を削ぎ落として最適化した最速の動きとは真逆の、無駄を増やして翻弄し相手の動きを遅らせる技。

「こんなすぐに終わったんじゃ何も分からないだろうし、まだやるよね?」
「はい!」

2戦目。
さっきのは流石に変則すぎだろうし、ずっとあんな戦い方をしていたら手合わせをする意味がない。
あくまでもああいう戦い方もあるって程度に留めておくべきだろう。
剣と魔法とエロのファンタジー世界だろうとある程度の物理法則があるのだし基本は地に足つけて戦うのが主流。
そして、コーネリアさんはそういう経験が積みたいんだ。
だからここからはオーソドックスに王道的に行こう。

開始とともにコーネリアさんへと接近する。
ここまではさっきと同じだが、ここから更に加速して一気に懐へと潜り込んでまずは先制の一撃。
そう思ったがコーネリアさんは今回は目が追いついているのか、こっちの接近に合わせて剣を振り下ろしてくる。
それを見切って、大きく躱す。

そして振り下ろした剣を引き戻される前に更に一歩前へと踏み込んでついに懐へ。
今度こそ先制の……ってもう先制じゃないか。
とにかく、まずは一撃。
コーネリアさんは身を捩って躱そうとするが、遅い。
クリーンヒットにはならないが、肩を打ち据えてバランスを崩させる。

2発目。
剣では防げないと悟ったのか、剣を手放して腕でガードされる。
だがこのままいく。
ガードの上から殴って殴って、殴りまくる。
剣士を相手にするならの答えの1つ、インファイトだ。
近過ぎる位置には人体の構造上まともぬ剣を振る事なんて出来やしない。
出来るのは精々突き刺そうとするくらいだろうが、それだって一度振り上げる必要があるため対処は可能。
つまり、懐に入って武器を手放させた時点で既にこっちのものという事だ。

攻撃を上半身に集中させて意識を上に向けさせたところでお腹めがけての膝蹴り。
足を縦回転させるように、膝を打ち下ろすかのように、抉るようにしての膝蹴り。
意識外な上に、自身のガードで視界が狭まっていたこともあり、コーネリアさんは反応が遅れてクリーンヒットする。
コーネリアさんは騎士らしく金属鎧を纏っているが衝撃は通る。
ましてや、鎧をひしゃげさせる程の一撃だ。
かなりのダメージになるだろう。
その証拠に、コーネリアさんはお腹を押さえて蹲っている。
ってか、あれ?
ちょっと待って……。
なんか、赤いものを吐いてない?
やべっ、やり過ぎた!?



あの後、治療魔法を使ってなんとか無事に済んだ。
やべーやべー。
手合わせで殺してしまうところだったよ。
とりあえずコーネリアさんにはしばらく安静にしててもらうとしよう。

それはさておき、何故このようなことになったのか。
それは、ステータスが一定ではないからだ。
ステータスは最大値を表していて、常にステータス通りの数値ではない。
もちろん、通常時もそれなりに高くはあるが、最大じゃない。
そして意識外から繰り出される渾身の膝蹴り。
肘や膝は素人でも簡単に威力を出すことの出来る部位だ。
それを格闘系のスキル保持者が全力で叩き込む。
……うん、内臓にダメージがいってもおかしくないよね。
とまあ、そんな感じでコーネリアさんは吐血したわけだ。

コーネリアさんが戦えなくなったのでここでお開き……じゃあつまらないので、3人へ見てた感想や気になったことを聞いてみた。

「ちょっと気になったんだけど、レンちゃんなら紙一重でも避けられたんじゃないかなって思った時があったんだけど、それってどうして?」
「紙一重で躱すのが危険だからだよ。逆に聞くけど、もしも相手が幻術を使ってきて、効果自体は認識を横に5cmだけずらすっていう単純で弱いものだったりする。で、本来の位置よりも右に認識をずらされた状態で、左に紙一重で躱した場合だとどうなると思う?」
「それはえっと、認識が右にずれてるわけだから実際は左にいて、そして左に紙一重で……あ」
「そう。攻撃を喰らうよね。それだけじゃなくて、もしかしたらスキルの中に剣の両側に刃を発生させて一振りで3つの斬撃を放てるなんていうものがあるかもしれない。もしかしたら魔法の剣で刀身が曲がったり伸びたりするかもしれない。それはもしかしたらだけど可能性は0じゃないし、そもそも完璧に見切れるとは限らないよね?  それでわざと紙一重で躱すなんていう舐めプするには大き過ぎるリスクだ。成功したら隙は最小限で済みますが失敗したら死ぬかもしれません……なんて状態で命をベットするのは馬鹿のすることだよ」

紙一重で躱すという行為は、地球でならば最小限の動作で済んで即座に反撃出来るが、こっちではそうはいかない。
さっきも言ったが、ここは剣と魔法とエロのファンタジー世界だ。
スキルがあれば魔法もある。
世界の理が違うのに同じ事をしても通用するとは限らない。
何より、それでダメだった時に失うのは命だ。
なら、余裕を持って躱すべきだ。
慢心ダメ、ぜったい。
マンティコア戦で嫌というほど思い知らされたよ。
本当にもうね、あの時毒を喰らわなければ激しいえっちが……なんでもないです。

「そんなわけで、紙一重で躱さなかったわけ。他に何か質問は?  なければ時間が余ってるしみんなと手合わせするよ」
「「「えっ!?」」」

大丈夫大丈夫。
みんなとやる時はちゃんと手加減するから。
だからそんな怯えないで。
普通に凹むから。
チートステータス持っててもメンタルは一般人のクソ雑魚レベルなんだよ。

そしてお昼になるまで3人をちぎっては投げでちぎっては投げてを繰り返しました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

処理中です...