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侵入大作戦、決行出来ませんでした

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オークを皆殺しにした後、念の為……僅かな希望に賭けて空間支配で周囲の気配を探るが……無情にも、何も反応はなかった。
……手遅れ、だった。
壊れたというのが、肉体的にか精神的にだった場合まだ望みがあると思ったんだけど……ダメだった。
死んでしまっていた。

「………………せめて、遺体だけでも丁重に弔ってあげよう」

オークの集落の中を探すと、それはあった。
集落の外れにある小さな小屋。
そこからは何かが腐ったような腐敗臭が漂ってきて、中を覗けばいくつもの死体が積み上がって山のようになっていた。
下の方は既に風化しているのか骨だけで、上の方はハエや虫が集り腐敗臭を漂わせる死体。
無神論者ではないが信仰心など持っていなかった俺でも、この時ばかりは神に祈らずにはいられなかった。
神様、どうかお願いします。この人達の来世は幸福なものでありますように、と。



集落の外にちょっとした広場を作ってそこに遺体を埋葬し、簡単なお墓を作る。
どうか、安らかに……。

お墓を作った後は集落中を探して遺品となるものを集め、それが終われば集落を全て燃やす。
またゴブリンやオークが住み着かないように。
外から見えないように結界で覆い隠し、魔法の気配も遮断しているので騒ぎになることはないだろう。

それらの作業をしていたらだいぶ日が暮れてきたのでさっさと元の場所に戻ってそこで夕食をし、街の人が寝静まるのをじっと待つ。
目立たないように火は出来るだけ使わないようにしているので周囲は真っ暗。
普通の人間3人は夜目が効かないので亜空収納に入っててもらう。
ルセアちゃんとハイネちゃんは種族柄夜目が効くらしいけど、今回は一緒に入っててもらう。
ちなみに俺も夜目は効く。
一応吸血鬼なんで。

そうして、闇夜に紛れてじっとしていると空気の読めない馬鹿がやってくる。
どうせなら認識疎外の結界でも張っておけばよかった。
やってきた馬鹿こと魔物はナイトハンター。
4本腕の猿みたいな身体に狼のような顔をした魔物。
真っ暗な夜に樹上から忍び寄り、隙を見て飛びかかって上から覆い被さり、2本の腕で体を押さえつけ、残った2本で愛撫しつつちんこを入れてくるという。
普段ならウェルカムなんだけど、今はそういう気分じゃない。
まだ、オークの集落での事が尾を引いてるみたいだ。

なので、真っ暗闇の中じっとしている俺を隙だらけだと勘違いして襲ってきたところに、ライジングでドラゴンな感じのナックルの要領で突き上げる。
とはいえだ、流石に完コピというのもどうかと思うので少し変えて指をピンと伸ばしての貫手にしてある。
するとどうだろう。
ピンと鋭く伸ばした手は一回転する体に合わせてナイトハンターの胴体を抉りながら貫くではないか。
ナイトハンターはそのたったの一撃で絶命した。

「あっけないね」

俺の二の腕付近までずっぽりと入り込んでいたナイトハンターだが、腕を下ろせばズルリと落ちた。
ナイトハンターを観察して気づいたけど、この4本腕の内の上2本の手は大きく、また指も異様に長い。
多分だけど、この2本の腕で拘束するから拘束しやすいように大きく長く変化したんだろう。
それに対して下の腕は手のひらの大きさはそこまでじゃないけど、指は長くて上2本と同じくらいの長さがある。
これで中を弄られたら気持ち良さそうだね。
まあ、もう死んでるんですけどね。

ナイトハンターを亜空収納に仕舞い込むと、また魔物に襲われないように今度はしっかりと認識疎外の結界を張って人々が寝静まるのを待つ。
何もせず真っ暗闇の中でじっと座り込む金髪赤眼の美少女は何も知らない人から見たらきっと驚くだろうね。
そんな事を考えながら夜遅くなるまで待ち、遂に行動を開始する。
長かった。
一人で何もせずぼーっとしているのはとにかく長かった。
オナニーする気にもなれなかったからとにかく暇だった。

だがそれももう終わりだ!
闇に紛れ、闇に潜む吸血鬼の本領発揮だ。
とうっ!
飛翔し、遥か上空である高度4000m付近まで上昇する。
流石にこの高さまで来るとめっちゃ寒いんだろうけど、そこは頼れる空間支配さんで快適にしている。
持っててよかった空間支配ってね。
実際空間に関する類の能力は大体できるもんね。
空間支配マジ便利!
で、身体強化の応用で眼を強化して街の様子を伺う。
流石にこの距離では細かな事は分からないけど街の中心付近にある大きな屋敷が見えればそれでいい。
そこがメルネレスさん家だろうし。

「あれかな……」

発見したらお屋敷に向けて急速降下。
ある程度近づいたら急停止して目視範囲内への短距離転移。
こうする事で普通に降下した際に生じるであろう衝撃や物音、風圧等を無効化する。
ゆっくり降りる事もできるけど、それをすると目撃される可能性があるので出来るだけ空から直接という風にしたかった。

庭に降り立ったらまずは確認。
空からそれっぽい建物を見て降りたけどさ、ここが本当にジュリアちゃん家なのか分からないし。
亜空収納からジュリアちゃんに出てもらうっていう手もあるけど、ここまで1人でこっそり暗躍隠密してたわけだし自分1人でなんとかしたい。
というわけで、門の前でしっかりとお仕事をしている警備の人を鑑定する。
すると警備の人の称号に『メルネレス家警備兵』っていう文字が。
いやー、良かったよ。
勇んでやって来たはいいけど実は別の人の家とかだとかっこ悪いもんね。

さて、そんじゃ気を取り直して、改めて行動開始だ。
空間支配で人の位置を、状態を、隈なく探っていく。
もちろんそれに合わせて侵入経路の洗い出しも並行して行う。
この建物の構造的に侵入するのなら裏庭側にある窓が最適だろう。
表側でない分警戒心が薄れる筈だ。
だけど、やっぱり吸血鬼ムーブもしたいしなぁ……飛び上がって窓から侵入とか超したい。
だってかっこいいんだもん。
うむむ……実利を取るかロマンを取るか……いや、まずはジュリアちゃんママの位置を見つけるのが先だ。
その場所を見てから考えよう。

ん?
んんっ?
あれ?
なんか、女性と思しき存在が子供と思しき大きさの存在と密着して揺れて……いやいやいやいやいやいや!!
何かの見間違いだろ!?
見間違いというか、感知間違い?
とにかく、きっと気のせいだ。
気のせいに違いない。
もしそういう事だとしても、多分超高性能ゴーレムとかで不貞を働いているわけじゃないはずだよ。
そうだよ、そうに違いない。

でも、とりあえず肉眼で確認しよう。
そう思って侵入するとか、見られないようにとかそういう考えは彼方に放り投げて飛翔して女性と思しき存在のいる部屋を覗いてみると……。

「あっ、あっ、あんっ♡  あっ、やっ、はぁんっ♡」

良かった。
メルネレス夫人はどうやらショタコンじゃなかったようで、人形にディルドーが付いている、なんていうかオナホみたいな物を使っていた。
うん。
ショタコンじゃなかったのは良かったんだけど……これ、いつ、どうやって入ろう?
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