病弱だったから異世界で元気に生活する。(仮)

椎茸大使

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食事と徹底洗浄

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コンコン!という軽快なノックの音がする。
そのノックに勇輝の側で待機していた雪羅が対応して、ドアを開けるとそこにはお付きのメイドさんが夕食を載せたカートを側に置いて待機していた。

「夕食をお持ちしました。中に運んでもよろしいでしょうか?」
「お願いします。あ、今勇輝様はお休みになっているので静かに運んでください。」
「はい。分かりました。」

雪羅の返答に応じたメイドは音を立てないように慎重に料理を運んでいく。
そうして雪羅の分も運ぼうとした時にアリスが自身の専属メイドに料理を運ばせながらやって来た。
その時に聞こえたカートの音で勇輝が目を覚ます。

「ふわぁ~。ひょっとして僕、寝ちゃっていた?」
「ええ。それはもうぐっすりと。今までずっと病院で過ごしていましたし、今日は色々ありましたからしょうがないですよ。それと、メイドさんがご飯を持ってきてくれましたよ。こちらに来てから何も食べてませんからお腹もかなり空いているでしょうし、すぐに食べましょう。」
「そういえばそうだった。」

そう言って勇輝は既に並べられている食事の前に来る。
その間もメイドさんは雪羅の分の夕食を運んできている。
そして改めてアリスの相手をしようと向き合ったところで

「あの、ユウキさん? 仕事もひと段落したので私もご一緒してもよろしいでしょうか?」

と勇輝に質問をする。
それに対して勇輝は

「いいよ。あ、どうせならメイドさん達も一緒に食べない?」

と答え、メイド達も一緒にと誘う。
しかし、従者が主と同じ食卓につくわけにはいかないと断るのだが勇輝の人と一緒に食べた方が美味しいし、ここ(この世界)のことを聞きたいしと言ったことで事情を知っているアリスから一緒に食べるように命じられ、それに従う形で食卓を一緒にすることになった。

それから五人で一緒に食事をしながらカトレイア領の特産や名物の話から始まり、街の自慢や騎士団での面白おかしな出来事、メイド同士のドジの暴露合戦、それに便乗したアリスが逆襲をうけてちょっとした可愛いミスを暴露されたりと昨日の誕生日会と同じくらい楽しい時間を勇輝は過ごした。



楽しい食事会が終わり、この日の汚れを落とす為に勇輝は風呂へと案内される。
流石に領主の館なだけあって広くて立派な風呂が勇輝の目の前に広がっている。
病院内では入浴可能時間が決められており、また病院内ということでそれほど大きくない風呂しか入ったことのない勇輝にとってはそれは未知の領域だった。
その未知に対する好奇心から速やかに服を脱ぐと風呂へと駆け出していく。
そうして浴槽に入ろうとしたところで勇輝は腕を掴まれる。
誰だろうと振り向くと……そこには湯浴み着のお付きのメイドさんが勇輝を掴んでいた。

「ユウキ様。お風呂に入るのは結構ですが、先ずは身体の汚れを落としていただかないと。ですので、僭越ながら私がユウキ様のお身体を流させていただきます。」
「えっ!?け、結構です。」

同年代と思しきメイドに洗われることに対する羞恥心から断ろうとするが問答無用とばかりに引きずられていく。
式神憑依をすれば強力な力を振るえる勇輝であるが素の力は最弱といってもいいレベルである為になす術なく引きずられ、そのままメイドによって大事なところを含め隅々まで綺麗に洗われることになった。

「もう、お婿にいけない…」



そして翌朝。
昼寝をしたり、そもそも転移の際に時間がずれて午後になっていたりで普段とは違ってかなり早く起きてしまった。
勇輝の居た病院は起床は七時、消灯は夜九時とかなり健康的な生活をしていたのも要因の一つだろう。
そうして早起きをした勇輝は特にすることも無かったので今は屋敷を散歩している。
そして迷う。
定番である。

「ここどこ?」

それから一時間。
勇輝は彷徨い続け、結局自分の部屋に戻れたのはたまたま遭遇した執事っぽい人に道を教えられてからだった。

「心配しましたよ、勇輝様。朝、部屋を訪ねたら何処にもいなかったのですから。」
「ごめん、雪羅。早く目が覚めたから散歩してたら道に迷っちゃって。」

自分の部屋に戻って直ぐの一幕。
尋ねても返事はなく中にもいなかった為に心配した雪羅は居ても立っても居られなくなり、メイドさんに勇輝の捜索を頼み、自身はミイラ取りがミイラになるようなことがないよう勇輝の部屋の前でじっと待っていた。
ちなみに雪羅の部屋は勇輝の部屋の隣である。

部屋に入り事情を説明してようやく雪羅が落ち着いた頃にドアがノックされる。
勇輝がドアを開けるとそこには夕食の時と同じメンバーが朝食を携えて立っていた。
そして夕食の時と同様にみんなで一緒に食事をした後、アリスがこんなことを言う。

「それでユウキさん。父が戻ってくるまでの間に服を買いに行ってきてはどうでしょう? ずっと同じ服というわけにも行きませんし、防具なんかももっと体に合ったものの方が良いでしょうし。私はまだ仕事が少し残っていて同行することが出来ないので代わりにこちらのリルカを連れて行ってください。」

そう言ってアリスは勇輝に付けたメイドに道案内をするよう指示をする。

「えっ? でもいいんですか? リルカさんにも仕事があるだろうし……それに姫さまがとか言ってたし。」
「大丈夫です。それにその話は父が戻ってからの方がいいかと。それとこちらを。これは冒険者ギルドへの紹介状で、これを持っていけば手数料無しで登録することが出来ます。各ギルドのギルドカードは身分証として使えるので、この機会に登録した方がいいかと思いまして。」
「冒険者ギルド!それってモンスターと戦って収入を得たり、ダンジョンに潜ったりするやつだよね。そういう事なら是非!雪羅、早く行こう。リルカさんも。」
「ちょ、ちょっと待ってください、勇輝様。行きますから。手を引っ張らないで~。」

勇輝の突然の行動に雪羅は情けない声を出してしまうが、御構い無しとばかりに進んでいき、勇輝は空いた方の手でリルカも引っ張って街の方へと向かうのだった。
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