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二つの夜
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「あ、アリス様。い、今なんと?」
一番最初に我に返った貴族の一人が先程のアリスの爆弾発言に対して聞き返した。
何を言っていたのか分かっているのに理解したくないという思い、聞き間違いであってほしいという思いから聞き返したのだ。
「ですから、アオイ様は、私とリリアと一緒にユウキ様と結婚すると言っているのです!」
聞き間違いでは無かった。
当然である。
そもそも目の前で発せられた言葉を聞き間違うと言うのであれば、それはそれで問題があるだろう。
その言葉にこの場にいた人間全てが我に返る。
そして発言の真意を確かめる為、理由を知る為、密かにアリスへと想いを寄せる一部が諦めきれずにといった様々な理由で声をかけようとする。
もちろん勇輝もなんでそんな発言をこの場でしたのかと問いかける。
しかし多くの人間が同時に発言していては誰が何を言っているのかなんて分かるはずもなく、それにアリスは困惑する。
と、そこにどよめきを伴ってリリアがやって来た。
「これは一体なんの騒ぎですか?」
「ひ、姫王様! 実は、先程アリス様が……」
リリアの問いかけに近くにいた一般兵(24歳独身彼女いない歴=年齢、常に彼女募集中)が事情を説明する。
内心で嫉妬の炎を激しく燃やしながら。
「な、何を馬鹿な! そんなのまだ早いですよ。だ、大体そういう事は私じゃなくてユウキ様が選ぶ事ですよ! ……まぁ、私としてはユウキ様と結婚するのも全然嫌ではないんですけど。」
全くと言っていいほど否定できてなかった。
というか、勇輝が望めば即結婚すら構わないと言わんばかりのポワポワしたオーラを醸し出してる。
そんなものを見てリリアが嫌がってると思う者も、否定してると思う者もいるわけがなかった。
そして一部の者が白眼を剥いていた。
多分、リリアの事が好きだったのだろう。
お気の毒に。
そんな発言をすれば当然のように矛先は勇輝に向かう。
勇猛な姿を見せた勇輝だが、相手は貴族。
つまりは偉い人である。
病人と医者と看護師とばかり接してきた勇輝にとっては雲の上のような存在だ。
実際には一国の王が懸想していてもはや玉座を手に入れたも同然であり、勇輝自身も勇者であるためそんじょそこらの貴族なんかよりもよっぽど上の立場なのだが、そんな事には気づいていない勇輝は強気に出ることもできず質問攻めに対してオロオロとしながら対応するしかなかった。
その結果勇輝はリリアは尊敬するに値する人であり、少なからず好意を持っていること、アリスはこの世界に来て初めて接した人(盗賊は当然のようにカウントしてない)であり、リリア同様好意的に思っていること、葵は幼馴染であそこまで慕われてるのだからと覚悟を決めたことを吐かされた。
その発言に葵の心は天にも昇るような思いだったと後に語ったという。
◇
「つ、疲れた………」
あの後も続いた質問責めに疲れ切っていた勇輝は一つの幸運に見舞われる。
1人のメイドが誤(ねら)って勇輝に片付けていたグラスの中身をかけてしまったのだ。
ぬれてそのままというわけにはいかないと勇輝は宴会場から解放され、今現在はたった1人で王城にある大きな浴場を独り占めできた。
ちなみに、それはアリスがユウキを助ける為にメイドに指示した事だったりする。
「それに……」
大きな浴場を独り占め出来た上に、あの場から解放された事に対して勇輝はメイドさんに心の中で感謝しつつ、精神的な疲れを癒していたが、その時の事を思い出していたせいか、心の内を暴露する羽目になった事までも思い出してしまった。
「うわぁーーー!! なんであんなこと言っちゃったかなぁーーー!! 僕のバカーーーーー!!!」
つい叫んでしまっていた。
しかし、ここには自分一人で誰にも聞かれてないと勇輝は心の中でホッとしていた。
…………………………………まあ、すでに人いるんですけどね。
「えーと、ユウキ、さん?」
そこにはバスタオルを体に巻いたアリスがいた。
「あ、アリス、さん? なんで、ここに……………というか、さっきの、聞いてました?」
「その………………はい。」
「うわぁーーーー! 恥ずか死ぬーーーー!!」
「だ、大丈夫ですよ! 私以外には誰もいませんし、その、秘密にしてますから! そ、それとも………私が相手では、嫌、ですか?」
「そんな事ないよ! アリスさん綺麗だし優しいし嫌なんて事ないよ! えと、でも、やっぱり恥ずかしいのは恥ずかしいわけで…………って、そういうことじゃなくて! なんで、ここにいるの!?」
「いえ、その………お背中をお流ししようかと思って。お嫌でしょうか?」
そう言うアリスは悲しそうな表情をする。
その表情におされて勇輝は了承すると笑顔になるアリス。
そんな笑顔を見た勇輝は苦笑しつつ湯船から上がりシャワー(勇者立案のマジックアイテム)の前に座り、アリスは石鹸を泡立てると手拭いで洗っていく。
「痛くはありませんか?」
「大丈夫です。」
「………………………。」
「………………………。」
告白まがいの宣言やらなんやらでお互いが気恥ずかしさで話を続けることができず、気まずい空気が辺りを漂う。
そうこうしている間もアリスは手を止めず一頻り洗うとシャワーで勇輝の背中を流す。
「ユウキさん。」
「な、なに、アリスさん?」
「その、今晩は……………………いえ、明日の試合も頑張ってくださいね。私、応援してますから。」
「はい。頑張ります。」
アリスは、明日で自分の今後の人生が決まる。
もし明日負ければ自分は………と考え、ならばいっその事勇輝と、と考え一緒に夜を過ごして欲しいと言おうとしたが、結婚前の貴族の娘がそのような事するなんてはしたないと、また勇輝に無用な負担を与えるわけにはいかないと思い直し、応援すると伝えた。
今こうしてここにいるのは夜を共にしようと誘うため。
負ければ十中八九奴隷として、戦利品として扱われるという恐怖がアリスにはあるからだ。
しかし、ここで勇輝を誘っても負担になるだけと思い直し勇輝が勝つと信じて待とうと決意しての言葉だった。
そして勇輝も先ほどの言葉で伝えたいことがなんなのかをなんとなく察していた。
その上で言い直し、応援すると言ってくれたのだという事をしっかりと理解し受け止めての返答だった。
その後はお互いに湯船に浸かりたわいない事を話したり、子供達がどう過ごしていたかを伝えたりしてゆっくりとお風呂タイムを楽しんだ。
お風呂から上がった勇輝はそこでアリスと別れ、自身にあてがわれた部屋へと帰り、明日の為にと早めに寝ることにした。
したのだが、とある人物が勇輝のベッドの中に潜り込んできて微睡んでいた勇輝は目を覚ますことになる。
夜這いだ。
「ユウキ様、起きてください。」
「んぅ~、だれ~?」
「私です。リリアです。」
「りりあさん? ………………リリアさん!? なんで僕のベッドに!?」
「えと、よ……………ょ……です。」
「え? なんて?」
「ですから、その、よ、夜這いに来ました!」
「なんで!? 王様が気軽にそんなことしちゃだめでしょ!?」
「王とか、そんなの関係ありません! …………………私、怖いんです。明日、全てが決まって、もしもユウキ様が負けたらと考えたら………もちろん、ユウキ様が負けるとは思ってませんが、それでも、万が一負けたら私は敵国に………だったらせめて純潔を捧げる相手くらいは自分で決めたいじゃないですか。お願いします、ユウキ様。私にお情けを下さい。」
勇輝は困惑していた。
当然だろう。
入院歴10年は伊達ではなく、身近な異性は葵他幼馴染と看護師、医師くらいな上に殆どが年上でそういう対象にはならなかった。
それにずっと入院患者だったのだからそういう事とは関わることが殆どなくこんな時にどうすればいいのか全く分からなくても仕方ないことだろう。
しかし、どうしたらいいのかと混乱している時にリリアの手が、体が震えてる事に勇輝は気づいた。
リリアは優しい人で、国民の為に頑張っていると言ったのは自分だ。
彼女が普通の女の子だと、自分達とそんなに変わらないと言った事を思い出した。
自身の身に迫る恐怖、王としてのプレッシャー、国民全ての命を背負う重み、それら全てがごちゃ混ぜになり、それでも前を向いてひたむきに頑張ってきた女の子が見せてきた少女の姿を見て、勇輝は美しいと、愛おしいと思った。
そう思うと不思議な事に、王とか、葵の事とかそんなことは関係なく、リリアの事が欲しいと勇輝は本能的に感じ、気づけばリリアにキスをしていた。
勇輝の突然の行動にリリアは目を見開くが、すぐに目を閉じ、ユウキに身を委ねた。
数秒の後、どちらからともなく離れるとリリアは勇輝に声をかける。
「ユウキ様。」
「ごめん、リリアさん。でも、リリアさんの事を見てたら、我慢できなくて。本当に、僕でいいんだよね。」
「はい。ユウキ様がいいんです。」
「僕、こういう事は初めてだから上手くできるか分からないけど、頑張るから。」
「はい。」
そうして夜は更けていく。
◇
一方ここは葵の部屋。
そこには葵とアリスがいた。
「本当に良かったのですか?」
「あんなに震えていたら、譲るしかないじゃん。」
勇輝の知らぬところで既に葵、アリス、リリア間で終戦協定が結ばれていた。
この戦争に勝てば勇輝を取り込もうと、繋がりを持とうと貴族連中が本格的に動き出す事は容易に想像がついた。
それ故に3人は争うよりも協力した方がいいと結論付け、お互いを認め合い助け合おうという事になった。
そして、葵は今夜、勇輝に夜這いをかけようと考えていたが震えていたリリアを見て、自分は明日勇輝が勝った後でいいと考え、リリアに勇輝の部屋に行く事を勧めたのだ。
「ならせめて、その表情をやめないと。」
「だって、それでもモヤモヤするんだもん。」
葵の様子を見てアリスは呆れたような、それでいて気持ちは理解できるというような顔をした後、メイドに何か飲み物と軽食を頼んだ。
少女二人の夜は静かに過ぎてくのであった。
一番最初に我に返った貴族の一人が先程のアリスの爆弾発言に対して聞き返した。
何を言っていたのか分かっているのに理解したくないという思い、聞き間違いであってほしいという思いから聞き返したのだ。
「ですから、アオイ様は、私とリリアと一緒にユウキ様と結婚すると言っているのです!」
聞き間違いでは無かった。
当然である。
そもそも目の前で発せられた言葉を聞き間違うと言うのであれば、それはそれで問題があるだろう。
その言葉にこの場にいた人間全てが我に返る。
そして発言の真意を確かめる為、理由を知る為、密かにアリスへと想いを寄せる一部が諦めきれずにといった様々な理由で声をかけようとする。
もちろん勇輝もなんでそんな発言をこの場でしたのかと問いかける。
しかし多くの人間が同時に発言していては誰が何を言っているのかなんて分かるはずもなく、それにアリスは困惑する。
と、そこにどよめきを伴ってリリアがやって来た。
「これは一体なんの騒ぎですか?」
「ひ、姫王様! 実は、先程アリス様が……」
リリアの問いかけに近くにいた一般兵(24歳独身彼女いない歴=年齢、常に彼女募集中)が事情を説明する。
内心で嫉妬の炎を激しく燃やしながら。
「な、何を馬鹿な! そんなのまだ早いですよ。だ、大体そういう事は私じゃなくてユウキ様が選ぶ事ですよ! ……まぁ、私としてはユウキ様と結婚するのも全然嫌ではないんですけど。」
全くと言っていいほど否定できてなかった。
というか、勇輝が望めば即結婚すら構わないと言わんばかりのポワポワしたオーラを醸し出してる。
そんなものを見てリリアが嫌がってると思う者も、否定してると思う者もいるわけがなかった。
そして一部の者が白眼を剥いていた。
多分、リリアの事が好きだったのだろう。
お気の毒に。
そんな発言をすれば当然のように矛先は勇輝に向かう。
勇猛な姿を見せた勇輝だが、相手は貴族。
つまりは偉い人である。
病人と医者と看護師とばかり接してきた勇輝にとっては雲の上のような存在だ。
実際には一国の王が懸想していてもはや玉座を手に入れたも同然であり、勇輝自身も勇者であるためそんじょそこらの貴族なんかよりもよっぽど上の立場なのだが、そんな事には気づいていない勇輝は強気に出ることもできず質問攻めに対してオロオロとしながら対応するしかなかった。
その結果勇輝はリリアは尊敬するに値する人であり、少なからず好意を持っていること、アリスはこの世界に来て初めて接した人(盗賊は当然のようにカウントしてない)であり、リリア同様好意的に思っていること、葵は幼馴染であそこまで慕われてるのだからと覚悟を決めたことを吐かされた。
その発言に葵の心は天にも昇るような思いだったと後に語ったという。
◇
「つ、疲れた………」
あの後も続いた質問責めに疲れ切っていた勇輝は一つの幸運に見舞われる。
1人のメイドが誤(ねら)って勇輝に片付けていたグラスの中身をかけてしまったのだ。
ぬれてそのままというわけにはいかないと勇輝は宴会場から解放され、今現在はたった1人で王城にある大きな浴場を独り占めできた。
ちなみに、それはアリスがユウキを助ける為にメイドに指示した事だったりする。
「それに……」
大きな浴場を独り占め出来た上に、あの場から解放された事に対して勇輝はメイドさんに心の中で感謝しつつ、精神的な疲れを癒していたが、その時の事を思い出していたせいか、心の内を暴露する羽目になった事までも思い出してしまった。
「うわぁーーー!! なんであんなこと言っちゃったかなぁーーー!! 僕のバカーーーーー!!!」
つい叫んでしまっていた。
しかし、ここには自分一人で誰にも聞かれてないと勇輝は心の中でホッとしていた。
…………………………………まあ、すでに人いるんですけどね。
「えーと、ユウキ、さん?」
そこにはバスタオルを体に巻いたアリスがいた。
「あ、アリス、さん? なんで、ここに……………というか、さっきの、聞いてました?」
「その………………はい。」
「うわぁーーーー! 恥ずか死ぬーーーー!!」
「だ、大丈夫ですよ! 私以外には誰もいませんし、その、秘密にしてますから! そ、それとも………私が相手では、嫌、ですか?」
「そんな事ないよ! アリスさん綺麗だし優しいし嫌なんて事ないよ! えと、でも、やっぱり恥ずかしいのは恥ずかしいわけで…………って、そういうことじゃなくて! なんで、ここにいるの!?」
「いえ、その………お背中をお流ししようかと思って。お嫌でしょうか?」
そう言うアリスは悲しそうな表情をする。
その表情におされて勇輝は了承すると笑顔になるアリス。
そんな笑顔を見た勇輝は苦笑しつつ湯船から上がりシャワー(勇者立案のマジックアイテム)の前に座り、アリスは石鹸を泡立てると手拭いで洗っていく。
「痛くはありませんか?」
「大丈夫です。」
「………………………。」
「………………………。」
告白まがいの宣言やらなんやらでお互いが気恥ずかしさで話を続けることができず、気まずい空気が辺りを漂う。
そうこうしている間もアリスは手を止めず一頻り洗うとシャワーで勇輝の背中を流す。
「ユウキさん。」
「な、なに、アリスさん?」
「その、今晩は……………………いえ、明日の試合も頑張ってくださいね。私、応援してますから。」
「はい。頑張ります。」
アリスは、明日で自分の今後の人生が決まる。
もし明日負ければ自分は………と考え、ならばいっその事勇輝と、と考え一緒に夜を過ごして欲しいと言おうとしたが、結婚前の貴族の娘がそのような事するなんてはしたないと、また勇輝に無用な負担を与えるわけにはいかないと思い直し、応援すると伝えた。
今こうしてここにいるのは夜を共にしようと誘うため。
負ければ十中八九奴隷として、戦利品として扱われるという恐怖がアリスにはあるからだ。
しかし、ここで勇輝を誘っても負担になるだけと思い直し勇輝が勝つと信じて待とうと決意しての言葉だった。
そして勇輝も先ほどの言葉で伝えたいことがなんなのかをなんとなく察していた。
その上で言い直し、応援すると言ってくれたのだという事をしっかりと理解し受け止めての返答だった。
その後はお互いに湯船に浸かりたわいない事を話したり、子供達がどう過ごしていたかを伝えたりしてゆっくりとお風呂タイムを楽しんだ。
お風呂から上がった勇輝はそこでアリスと別れ、自身にあてがわれた部屋へと帰り、明日の為にと早めに寝ることにした。
したのだが、とある人物が勇輝のベッドの中に潜り込んできて微睡んでいた勇輝は目を覚ますことになる。
夜這いだ。
「ユウキ様、起きてください。」
「んぅ~、だれ~?」
「私です。リリアです。」
「りりあさん? ………………リリアさん!? なんで僕のベッドに!?」
「えと、よ……………ょ……です。」
「え? なんて?」
「ですから、その、よ、夜這いに来ました!」
「なんで!? 王様が気軽にそんなことしちゃだめでしょ!?」
「王とか、そんなの関係ありません! …………………私、怖いんです。明日、全てが決まって、もしもユウキ様が負けたらと考えたら………もちろん、ユウキ様が負けるとは思ってませんが、それでも、万が一負けたら私は敵国に………だったらせめて純潔を捧げる相手くらいは自分で決めたいじゃないですか。お願いします、ユウキ様。私にお情けを下さい。」
勇輝は困惑していた。
当然だろう。
入院歴10年は伊達ではなく、身近な異性は葵他幼馴染と看護師、医師くらいな上に殆どが年上でそういう対象にはならなかった。
それにずっと入院患者だったのだからそういう事とは関わることが殆どなくこんな時にどうすればいいのか全く分からなくても仕方ないことだろう。
しかし、どうしたらいいのかと混乱している時にリリアの手が、体が震えてる事に勇輝は気づいた。
リリアは優しい人で、国民の為に頑張っていると言ったのは自分だ。
彼女が普通の女の子だと、自分達とそんなに変わらないと言った事を思い出した。
自身の身に迫る恐怖、王としてのプレッシャー、国民全ての命を背負う重み、それら全てがごちゃ混ぜになり、それでも前を向いてひたむきに頑張ってきた女の子が見せてきた少女の姿を見て、勇輝は美しいと、愛おしいと思った。
そう思うと不思議な事に、王とか、葵の事とかそんなことは関係なく、リリアの事が欲しいと勇輝は本能的に感じ、気づけばリリアにキスをしていた。
勇輝の突然の行動にリリアは目を見開くが、すぐに目を閉じ、ユウキに身を委ねた。
数秒の後、どちらからともなく離れるとリリアは勇輝に声をかける。
「ユウキ様。」
「ごめん、リリアさん。でも、リリアさんの事を見てたら、我慢できなくて。本当に、僕でいいんだよね。」
「はい。ユウキ様がいいんです。」
「僕、こういう事は初めてだから上手くできるか分からないけど、頑張るから。」
「はい。」
そうして夜は更けていく。
◇
一方ここは葵の部屋。
そこには葵とアリスがいた。
「本当に良かったのですか?」
「あんなに震えていたら、譲るしかないじゃん。」
勇輝の知らぬところで既に葵、アリス、リリア間で終戦協定が結ばれていた。
この戦争に勝てば勇輝を取り込もうと、繋がりを持とうと貴族連中が本格的に動き出す事は容易に想像がついた。
それ故に3人は争うよりも協力した方がいいと結論付け、お互いを認め合い助け合おうという事になった。
そして、葵は今夜、勇輝に夜這いをかけようと考えていたが震えていたリリアを見て、自分は明日勇輝が勝った後でいいと考え、リリアに勇輝の部屋に行く事を勧めたのだ。
「ならせめて、その表情をやめないと。」
「だって、それでもモヤモヤするんだもん。」
葵の様子を見てアリスは呆れたような、それでいて気持ちは理解できるというような顔をした後、メイドに何か飲み物と軽食を頼んだ。
少女二人の夜は静かに過ぎてくのであった。
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