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一騎打ち
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ドレアスとゲイルが戦い始めてから5分が経過した。
お互いに全力で攻撃し、全力で躱し、全力で防ぐ。
そんな攻防が5分間休みもせずに続き、その間に二人は一度たりとも傷どころかかすり傷一つ負っていない。
「流石だな、ゲイル。」
「馬鹿言え。現役冒険者の俺と拮抗してるお前の方が流石と言うべきじゃないのか? 貴族のくせによ。」
「ふん。兵達だけ戦わせるのが性に合わないだけだ。」
カトレイア家の家訓にこんな物がある。
「祖国の窮地を助ける力となれ」
カトレイア家の初代当主は領地を持たぬ貧乏貴族の三男だった。
長男が家を継ぐことが決まっており、成人したら貴族から外れる三男坊だったギリアムは騎士となるために日々修行に励んだ。
騎士は貴族でもなければ平民でもない。
しかし、その地位は準貴族として見られることもあり、功績を挙げれば本当の貴族になることも出来る。
幸いギリアムには剣術において非凡な才能を持っており、他の騎士希望の貴族出身のボンボンを抑えて見事騎士となった。
騎士となってからも鍛錬を重ね、盗賊のアジトを潰し、姫を狙う暗殺者を退け、大型の魔物を単独で撃破した。
その功績によって、勲章を貰い、一代限りの名誉貴族となり、そして、爵位を継がせることのできる永代貴族となった。
そんなギリアムは自身が国に剣を捧げたことで得た貴族としての誇りを家訓として残すことにした。
当初は「祖国の窮地を助ける騎士となれ」とする予定だったが、生憎自身の息子には剣の才が無くかった。
しかしその代わりに軍師としての才があった。
そんな息子を見てギリアムは考えを少し変えた。
何も剣だけが国を守る力ではない……と。
そして生まれたのが「祖国の窮地を助ける力となれ」という家訓。
ギリアム亡き後も現代まで数百年続いたカトレイア家は先祖の教えに従い、ある者は魔法を、ある者は薬学を、またある者は交渉術を。
カトレイアの者は自身の才覚と向き合い国を守るための力を身につけてきた。
そしてこのドレアスは初代と同じように剣の才能を持って生まれてきた。
ドレアスは初代が興したカトレイアの家と、先祖が王家より賜った土地と自身を育んだ祖国を守るために剣の腕を磨き、今ここに立っている。
対するゲイルもまた育ててくれた両親の為。三年前に結婚した妻と去年産まれた子供に誇れる父親であり続ける為、負けるわけにはいかないと歯を食いしばって戦っている。
実力伯仲。
互いに譲らぬ攻防。
そんな二人の顔に浮かぶのは優位に立てぬ苛立ちでも、友と戦わねばならない辛さでもなく笑顔だった。
歩んできた道は違えども友として競い合ってきた間柄。
国と国との戦でありながら二人はこれまでいく度と繰り返してきた模擬戦のように唯々、楽しんでいた。
しかし、その楽しい時間にも終わりは必ず来る。
互いに剣をぶつけ合ううちに疲労が溜まり傷を負い出したのだ、お互いに。
「どうした? 剣に勢いがなくなってきたぞ。」
「それはそちらも同じであろう。」
「バレてたか。」
「無論だ。」
「このままやってもお互い疲れてグダグダになるだけだし、いっその事大技で決着をつけねぇか?」
「フッ、それもいいな。その提案乗ってやろう。」
お互いが持てる全力を次の一撃に込める。
その結果圧縮しきれなかった魔力が渦巻き辺りを駆け巡る。
心の弱い兵達がその魔力に充てられて気を失い前のめりに倒れていく。
心の弱い兵達が倒れきった瞬間を合図に両者は駆け出して全力の一撃を放つ。
「オォォォォッ! 竜頭破断!」
ゲイルが放つのは鱗を破り、文字どおり竜の頭を断った技。
「ハァァァァッ! 神撃の覇墜!」
ドレアスの技は渾身の力を持って振るい、極めればどんな防御も意味を成さず敵はただ地に堕ちるだけというカトレイア流の基本技にして究極の技。
凄まじい激突音と衝撃波を発生させる。
冒険者と騎士のぶつかり合いはお互いの武器の破損という形で決着が着いた。
武器は砕け、魔力も空という状態では継戦することは出来ず一騎打ち初戦は引き分けという前代未聞の結末となった。
続く第二戦……(以下略)
そして遂に葵の出番となった。
ライオ・グリフィス「「俺たちの戦いは!?」」
天の声「敗者に価値はない。というか書くだけ無駄だし。」
ラ・グ「「酷っ!?」」
2敗1分けという後がない状況。
最後に頼れるのは異世界から召喚した二人の勇者だけである。
「すみませんアオイ様、ユウキ様。後を全部任せる形になってしまって、本当に何と言ったらいいのか……」
「気にしないでください。僕達はその為にいるんですから。それにライオさんもグリフィスさんも惜しいところまで行ってましたし、こればっかりしょうがないですよ。」
「そう言っていただけると、彼等も浮かばれますね。」
「「生きてますから! 俺ら別に死んでないですから!」」
「冗談ですよ。」
「あははは。まあ、私もかなり強くなったし安心して見ててよ、リリアさん。それと、この戦争が終わったらゆー君の事、はっきりさせよう。………そういえば、ここで私が負ければ必然的に追い払えるんじゃ……」
「それをしたらゆーちゃんの事嫌いになるから。」
「冗談! 冗談だから! 結城葵、全力全壊でがんばります!」
「全く……いってらっしゃい、ゆーちゃん。」
「いってきます。」
葵は一騎打ちを行う場に赴く。
そこは先程までドレアスとゲイルついでにグリフィスとライオが激闘を繰り広げた場所で、荒れた場所は既に修復されている。
対面に佇むのはラベスタ帝国の若き部隊長。
将来は騎士団長や将軍にと、将来を嘱望されている男だ。
初戦は太陽が真上に来た時に始まるが、二戦目以降は戦争を仕掛けられた国の人間がコインを弾き、そのコインが落ちた瞬間が開始の合図となる。
ちなみにその選ばれた人間は唯の一般兵であり、場の雰囲気と大役のプレッシャーで足をガクガクと震わせ、顔面は蒼白、吐く寸前という状態だったりする。
プルプルと震わせながらなんとか弾かれたコインがキンッと甲高い音を立てて地に落ちる。
最初に動いたのは葵だ。
「えい。」
ちゅどん
「「「「「は?」」」」」
別に魔法を禁止されているわけではないが、これまで剣によるガチバトルな上に葵自身も帯剣して参上したから誰もが剣で戦うと思っていた。
ところが蓋を開けてみれば無詠唱魔法一閃だ。
見ていた者はもちろん対戦相手も虚をつかれ、火魔法による爆発によって吹っ飛ばされ気絶した事で決着が着いた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
遅くなってしまい申し訳ありません。
やる気になれない時が多かったのとドレアスの技名が浮かばなくて……
今もですけど
お互いに全力で攻撃し、全力で躱し、全力で防ぐ。
そんな攻防が5分間休みもせずに続き、その間に二人は一度たりとも傷どころかかすり傷一つ負っていない。
「流石だな、ゲイル。」
「馬鹿言え。現役冒険者の俺と拮抗してるお前の方が流石と言うべきじゃないのか? 貴族のくせによ。」
「ふん。兵達だけ戦わせるのが性に合わないだけだ。」
カトレイア家の家訓にこんな物がある。
「祖国の窮地を助ける力となれ」
カトレイア家の初代当主は領地を持たぬ貧乏貴族の三男だった。
長男が家を継ぐことが決まっており、成人したら貴族から外れる三男坊だったギリアムは騎士となるために日々修行に励んだ。
騎士は貴族でもなければ平民でもない。
しかし、その地位は準貴族として見られることもあり、功績を挙げれば本当の貴族になることも出来る。
幸いギリアムには剣術において非凡な才能を持っており、他の騎士希望の貴族出身のボンボンを抑えて見事騎士となった。
騎士となってからも鍛錬を重ね、盗賊のアジトを潰し、姫を狙う暗殺者を退け、大型の魔物を単独で撃破した。
その功績によって、勲章を貰い、一代限りの名誉貴族となり、そして、爵位を継がせることのできる永代貴族となった。
そんなギリアムは自身が国に剣を捧げたことで得た貴族としての誇りを家訓として残すことにした。
当初は「祖国の窮地を助ける騎士となれ」とする予定だったが、生憎自身の息子には剣の才が無くかった。
しかしその代わりに軍師としての才があった。
そんな息子を見てギリアムは考えを少し変えた。
何も剣だけが国を守る力ではない……と。
そして生まれたのが「祖国の窮地を助ける力となれ」という家訓。
ギリアム亡き後も現代まで数百年続いたカトレイア家は先祖の教えに従い、ある者は魔法を、ある者は薬学を、またある者は交渉術を。
カトレイアの者は自身の才覚と向き合い国を守るための力を身につけてきた。
そしてこのドレアスは初代と同じように剣の才能を持って生まれてきた。
ドレアスは初代が興したカトレイアの家と、先祖が王家より賜った土地と自身を育んだ祖国を守るために剣の腕を磨き、今ここに立っている。
対するゲイルもまた育ててくれた両親の為。三年前に結婚した妻と去年産まれた子供に誇れる父親であり続ける為、負けるわけにはいかないと歯を食いしばって戦っている。
実力伯仲。
互いに譲らぬ攻防。
そんな二人の顔に浮かぶのは優位に立てぬ苛立ちでも、友と戦わねばならない辛さでもなく笑顔だった。
歩んできた道は違えども友として競い合ってきた間柄。
国と国との戦でありながら二人はこれまでいく度と繰り返してきた模擬戦のように唯々、楽しんでいた。
しかし、その楽しい時間にも終わりは必ず来る。
互いに剣をぶつけ合ううちに疲労が溜まり傷を負い出したのだ、お互いに。
「どうした? 剣に勢いがなくなってきたぞ。」
「それはそちらも同じであろう。」
「バレてたか。」
「無論だ。」
「このままやってもお互い疲れてグダグダになるだけだし、いっその事大技で決着をつけねぇか?」
「フッ、それもいいな。その提案乗ってやろう。」
お互いが持てる全力を次の一撃に込める。
その結果圧縮しきれなかった魔力が渦巻き辺りを駆け巡る。
心の弱い兵達がその魔力に充てられて気を失い前のめりに倒れていく。
心の弱い兵達が倒れきった瞬間を合図に両者は駆け出して全力の一撃を放つ。
「オォォォォッ! 竜頭破断!」
ゲイルが放つのは鱗を破り、文字どおり竜の頭を断った技。
「ハァァァァッ! 神撃の覇墜!」
ドレアスの技は渾身の力を持って振るい、極めればどんな防御も意味を成さず敵はただ地に堕ちるだけというカトレイア流の基本技にして究極の技。
凄まじい激突音と衝撃波を発生させる。
冒険者と騎士のぶつかり合いはお互いの武器の破損という形で決着が着いた。
武器は砕け、魔力も空という状態では継戦することは出来ず一騎打ち初戦は引き分けという前代未聞の結末となった。
続く第二戦……(以下略)
そして遂に葵の出番となった。
ライオ・グリフィス「「俺たちの戦いは!?」」
天の声「敗者に価値はない。というか書くだけ無駄だし。」
ラ・グ「「酷っ!?」」
2敗1分けという後がない状況。
最後に頼れるのは異世界から召喚した二人の勇者だけである。
「すみませんアオイ様、ユウキ様。後を全部任せる形になってしまって、本当に何と言ったらいいのか……」
「気にしないでください。僕達はその為にいるんですから。それにライオさんもグリフィスさんも惜しいところまで行ってましたし、こればっかりしょうがないですよ。」
「そう言っていただけると、彼等も浮かばれますね。」
「「生きてますから! 俺ら別に死んでないですから!」」
「冗談ですよ。」
「あははは。まあ、私もかなり強くなったし安心して見ててよ、リリアさん。それと、この戦争が終わったらゆー君の事、はっきりさせよう。………そういえば、ここで私が負ければ必然的に追い払えるんじゃ……」
「それをしたらゆーちゃんの事嫌いになるから。」
「冗談! 冗談だから! 結城葵、全力全壊でがんばります!」
「全く……いってらっしゃい、ゆーちゃん。」
「いってきます。」
葵は一騎打ちを行う場に赴く。
そこは先程までドレアスとゲイルついでにグリフィスとライオが激闘を繰り広げた場所で、荒れた場所は既に修復されている。
対面に佇むのはラベスタ帝国の若き部隊長。
将来は騎士団長や将軍にと、将来を嘱望されている男だ。
初戦は太陽が真上に来た時に始まるが、二戦目以降は戦争を仕掛けられた国の人間がコインを弾き、そのコインが落ちた瞬間が開始の合図となる。
ちなみにその選ばれた人間は唯の一般兵であり、場の雰囲気と大役のプレッシャーで足をガクガクと震わせ、顔面は蒼白、吐く寸前という状態だったりする。
プルプルと震わせながらなんとか弾かれたコインがキンッと甲高い音を立てて地に落ちる。
最初に動いたのは葵だ。
「えい。」
ちゅどん
「「「「「は?」」」」」
別に魔法を禁止されているわけではないが、これまで剣によるガチバトルな上に葵自身も帯剣して参上したから誰もが剣で戦うと思っていた。
ところが蓋を開けてみれば無詠唱魔法一閃だ。
見ていた者はもちろん対戦相手も虚をつかれ、火魔法による爆発によって吹っ飛ばされ気絶した事で決着が着いた。
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