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開戦したが……
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「「グレイフィア王国に告ぐ。ここに居るは我が帝国精鋭1万。いずれもこれまでの戦役において勇猛をふるった猛者ばかりだ。今ならば間に合うが、降伏する気はあるか? ここで降るならば身の安全を保障しよう。されど、もしもそうでないというならば我が軍の猛者達が汝らを蹂躙し破壊と混沌を齎すだろう。さあ、どうする?」
「生憎と我が国の者たちにそのような軟弱者は存在せん。それに我が国には勝利の女神がついている。我らの心配よりも自身の心配でもした方が良いのではないか? 略奪者よ。」
……………みたいな事はあったりしませんか、リルカさん?」
「えーと、無いですねぇ、そんな事は。というか何ですか、それ?」
ここはドレアス・カトレイアが治めるカトレイア伯爵領の領主の館……すなわちカトレイア邸である。
そこに今勇輝と葵は滞在している。
その理由としては敵国の城内まで使い魔を放つような国を相手にするにあたって、開戦前ならともかく戦争中の警備が少なくなる間に暗殺者が襲ってきたり、火事場泥棒的なことを狙った盗賊をけしかけてこないとも限らない。
そう判断したリリアとグレイフィア王国のお偉方が万全を期す為に勇者二人をカトレイア邸に一時避難させることになったからだ。
因みに連れていくことになったレディックは転移後すぐに倒れた為、現在はメイド達によって介抱されている。
「いや、本かなんかでそういう風に戦争前にやっているのを見たことがあるような気がして。だからこっちでもそういうのあるかな~って思って。」
「そうですか。でも、それってどうやって相手側まで声を届けるんですか?」
「そうなんだよね。やっぱり気のせいなのかな?」
「きっとそうですよ。」
「そうですよね。」
「そうですよね。…………じゃなーーい! 何ナチュラルにメイドさんとおしゃべりしてるのよ。」
「何って休憩中だからだけど。」
「私はユウキ様付きのメイドですから。少なくともユウキ様がここに滞在する間は仕えるようにいい使っておりますので、ユウキ様が望むのならば談笑の相手をするくらい当たり前ですよ。」
「そうじゃなくて、戦争中に何のんびりしてるのよって事と、美少女メイドとおしゃべりしてるのって事よ。」
「嫉妬ですね。」
「うるさい。ずっと好きだったんだからこれくらいいいでしょ。」
「愛されてますね、ユウキ様。」
「あははは………未だに慣れないんですけどね。ずっと病院で過ごしてていつ死ぬかもわからなかったから、まさかそういう風に思われてたなんて夢にも思わなかったから。」
「そうですか。事情は理解できますが、これからはあまり鈍感になられないよう気をつけてくださいね。でないと、大変なことになりますから。」
「き、肝に銘じておきます。所で、あの子達は今どこに?」
「今は、メイドとしての研修中ですね。」
「は? メイド?」
「はい。なんでも、ユウキ様に恩返しがしたいと。将来ユウキ様の手伝いをしたいから何か教えて欲しいと志願してきたので取り敢えず危険のない範囲ということで基本的な家事を仕込んでいます。」
「そうなんですか。今日は折角だし一緒に遊びたかったんだけど、仕方ないか。」
「あの子達って、ゆー君が助けたって言ってた子達のこと?」
「そうだよ。あんなに遊びまわったのは初めてだったからまたしたいなと思ったんだけどね。」
「ふーん。で、可愛い子はいたの?」
「ちょっ! なんでそんな話になるの!?」
「妻としてそういうのはきちんと把握しないといけないと思ってね。」
「妻って気が早過ぎ!」
「ふふふっ。」
勇輝本人が気づいているのかは分からないが全く否定していない。
その事に気付いたリルカはくすくすと笑っていた。
~戦場~
ここはグレイフィア王国とラベスタ帝国が戦を行う場所。
王都に戦火が及ばないよういくばくか離れており、今現在、両陣営は陣形を組み開戦の瞬間を待っていた。
そして、規定の時間となり両陣営本陣から全軍へと、拡声魔法を付与されている魔道具によって開戦が伝えられた。
開戦を伝えられた両軍の魔法部隊はそれぞれ遠距離攻撃を開始し、上空にて魔法をぶつけ合い爆発を起こす。
そして両軍の前衛陣も爆発に合わせるように一気に駆け出していく。
ところがラベスタ帝国側が駆け出してからものの数分でかなりの兵が姿を消す。
落し穴だ。
戦争規定には開戦前の事前準備は当然のように認められている。
本陣の設営や兵達の展開、兵器の配置などを開戦してから行うというのは滑稽であるし時間の無駄だから。
それに合わせて罠の設置などもある程度容認されており、今回のような落し穴もそれなりに前例がある。
もちろん帝国側もそれはある程度考えていたが、指揮官達は多少兵を損なおうとも大勢には影響はもたらさないと気にしていなかったし、兵達も自分がかからなければ問題ないと考えていた。
しかし、今回の落し穴はこれまでとは規模がまるで違っていた。
突然足下に大穴が出現し数百人もの兵が落ちたのだ。
しかも後続は突然の出来事で止まる事ができず次々に穴の中に落ちていった。
これまでに使われたのは数人が落ちる程度のものだったが今回は百人単位だ。
その為兵達も指揮官も皆動揺しており動きが鈍り、さらに大穴であるため踏みとどまった者たちは迂回せねばならない。
そんな隙を見逃すはずもなく王国側は弓兵隊を使い多くの兵を討ち取っていく。
そして両軍が激突する頃には兵の数は千人近くも差ができていた。
~カトレイア邸~
「そろそろ落ちたかな?」
「落ちたとは?」
「ゆー君が式神を使って大きな落し穴を作ってたから、それの事じゃない?」
あの後も暫く談笑を続けていたおかげで勇輝達は結構仲良くなっていた。
そして開戦時間をほんの少し過ぎたぐらいで勇輝がポツリと呟き、それにリルカが質問し葵がそれに答える。
最初の険悪さ(一方通行)はなりを潜め、良好な関係を築けている二人を見て内心ホッとしている勇輝がそこにはいた。
ちなみにあの落し穴は勇輝の立案だったりする。
「生憎と我が国の者たちにそのような軟弱者は存在せん。それに我が国には勝利の女神がついている。我らの心配よりも自身の心配でもした方が良いのではないか? 略奪者よ。」
……………みたいな事はあったりしませんか、リルカさん?」
「えーと、無いですねぇ、そんな事は。というか何ですか、それ?」
ここはドレアス・カトレイアが治めるカトレイア伯爵領の領主の館……すなわちカトレイア邸である。
そこに今勇輝と葵は滞在している。
その理由としては敵国の城内まで使い魔を放つような国を相手にするにあたって、開戦前ならともかく戦争中の警備が少なくなる間に暗殺者が襲ってきたり、火事場泥棒的なことを狙った盗賊をけしかけてこないとも限らない。
そう判断したリリアとグレイフィア王国のお偉方が万全を期す為に勇者二人をカトレイア邸に一時避難させることになったからだ。
因みに連れていくことになったレディックは転移後すぐに倒れた為、現在はメイド達によって介抱されている。
「いや、本かなんかでそういう風に戦争前にやっているのを見たことがあるような気がして。だからこっちでもそういうのあるかな~って思って。」
「そうですか。でも、それってどうやって相手側まで声を届けるんですか?」
「そうなんだよね。やっぱり気のせいなのかな?」
「きっとそうですよ。」
「そうですよね。」
「そうですよね。…………じゃなーーい! 何ナチュラルにメイドさんとおしゃべりしてるのよ。」
「何って休憩中だからだけど。」
「私はユウキ様付きのメイドですから。少なくともユウキ様がここに滞在する間は仕えるようにいい使っておりますので、ユウキ様が望むのならば談笑の相手をするくらい当たり前ですよ。」
「そうじゃなくて、戦争中に何のんびりしてるのよって事と、美少女メイドとおしゃべりしてるのって事よ。」
「嫉妬ですね。」
「うるさい。ずっと好きだったんだからこれくらいいいでしょ。」
「愛されてますね、ユウキ様。」
「あははは………未だに慣れないんですけどね。ずっと病院で過ごしてていつ死ぬかもわからなかったから、まさかそういう風に思われてたなんて夢にも思わなかったから。」
「そうですか。事情は理解できますが、これからはあまり鈍感になられないよう気をつけてくださいね。でないと、大変なことになりますから。」
「き、肝に銘じておきます。所で、あの子達は今どこに?」
「今は、メイドとしての研修中ですね。」
「は? メイド?」
「はい。なんでも、ユウキ様に恩返しがしたいと。将来ユウキ様の手伝いをしたいから何か教えて欲しいと志願してきたので取り敢えず危険のない範囲ということで基本的な家事を仕込んでいます。」
「そうなんですか。今日は折角だし一緒に遊びたかったんだけど、仕方ないか。」
「あの子達って、ゆー君が助けたって言ってた子達のこと?」
「そうだよ。あんなに遊びまわったのは初めてだったからまたしたいなと思ったんだけどね。」
「ふーん。で、可愛い子はいたの?」
「ちょっ! なんでそんな話になるの!?」
「妻としてそういうのはきちんと把握しないといけないと思ってね。」
「妻って気が早過ぎ!」
「ふふふっ。」
勇輝本人が気づいているのかは分からないが全く否定していない。
その事に気付いたリルカはくすくすと笑っていた。
~戦場~
ここはグレイフィア王国とラベスタ帝国が戦を行う場所。
王都に戦火が及ばないよういくばくか離れており、今現在、両陣営は陣形を組み開戦の瞬間を待っていた。
そして、規定の時間となり両陣営本陣から全軍へと、拡声魔法を付与されている魔道具によって開戦が伝えられた。
開戦を伝えられた両軍の魔法部隊はそれぞれ遠距離攻撃を開始し、上空にて魔法をぶつけ合い爆発を起こす。
そして両軍の前衛陣も爆発に合わせるように一気に駆け出していく。
ところがラベスタ帝国側が駆け出してからものの数分でかなりの兵が姿を消す。
落し穴だ。
戦争規定には開戦前の事前準備は当然のように認められている。
本陣の設営や兵達の展開、兵器の配置などを開戦してから行うというのは滑稽であるし時間の無駄だから。
それに合わせて罠の設置などもある程度容認されており、今回のような落し穴もそれなりに前例がある。
もちろん帝国側もそれはある程度考えていたが、指揮官達は多少兵を損なおうとも大勢には影響はもたらさないと気にしていなかったし、兵達も自分がかからなければ問題ないと考えていた。
しかし、今回の落し穴はこれまでとは規模がまるで違っていた。
突然足下に大穴が出現し数百人もの兵が落ちたのだ。
しかも後続は突然の出来事で止まる事ができず次々に穴の中に落ちていった。
これまでに使われたのは数人が落ちる程度のものだったが今回は百人単位だ。
その為兵達も指揮官も皆動揺しており動きが鈍り、さらに大穴であるため踏みとどまった者たちは迂回せねばならない。
そんな隙を見逃すはずもなく王国側は弓兵隊を使い多くの兵を討ち取っていく。
そして両軍が激突する頃には兵の数は千人近くも差ができていた。
~カトレイア邸~
「そろそろ落ちたかな?」
「落ちたとは?」
「ゆー君が式神を使って大きな落し穴を作ってたから、それの事じゃない?」
あの後も暫く談笑を続けていたおかげで勇輝達は結構仲良くなっていた。
そして開戦時間をほんの少し過ぎたぐらいで勇輝がポツリと呟き、それにリルカが質問し葵がそれに答える。
最初の険悪さ(一方通行)はなりを潜め、良好な関係を築けている二人を見て内心ホッとしている勇輝がそこにはいた。
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