病弱だったから異世界で元気に生活する。(仮)

椎茸大使

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魔法練習中

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勇輝と葵がそれぞれの練習を開始して二時間。
最初に魔法を発動するまでは良かったのだが、魔法発動に必要なイメージや、魔法発動を補助したり、魔法を安定させる等の効果がある詠唱が足りていなく、訓練場はあちこちに穴が空き、地面が溶け、水浸しになっていた。
そしてそれを行った当人達は身体中煤だらけにしていたりびしょ濡れになっていた。
結局、この日の練習では勇輝はダークショット、葵は某RPGの火炎魔法のみ使えたようだ。



アリス及び、カトレイア家の恩人という立場であった為にアリスの家に厄介になっていた時は毎日メイド達に徹底洗浄されていた勇輝だが、ここではそのような事もなく一人のんびりと湯につかることが出来ていた。
もっとも、メイド達は勇輝を全身隈なく洗う気満々だったが、流石に“勇者二人”から断られては引き下がるしかなかった。

「ぷはぁ~。あ~、いい湯だ~。」
「そうだね~。」
「…………………………。」
「…………………………。」
「なんで、ここに、いるのかな?」
「ゆー君がいるから。」
「ちょっ!  ここ男湯!  男性用!」
「知ってるよ。」
「誰か入ってきたらどうすんの!?」
「丸焼き?」
「何物騒な事を可愛く言ってるの!?」
「あはは。冗談だよ。それに外にはちゃんと張り紙と見張りを用意したから。」
「そういう問題じゃないよね!」
「何照れてるの?  一緒にお風呂入ってたじゃん。」
「それ、昔のことだから!」
「それに婚約者なんだし気にしなーい、気にしない。」
「ちょっとは気にしてよーー!」

勇輝の魂の叫びが浴室に響いた。

その後は風呂から出ようとした勇輝に葵が押しとどめる。
その際に抱きついたために葵の胸が自然と押し付けられる形になり、勇輝はとある理由でしばらくの間風呂から出られなくなったが、概ね平和な感じでお風呂タイムが進行していった。

「つ、疲れた。」

風呂から上がり、メイドに用意されていた服に着替えて、風呂上がりの牛乳を飲んだ後に勇輝は呟く。
それを聞いた葵はこう返した。

「今日は色々あったからしょうがないよ。」
「ゆーちゃんがそれを言う?」
「?」

勇輝は、無自覚かい!  というツッコミが出かかったが、喉の奥へとなんとか押し込んだ。

「ちょっと疲れたから僕は夕食まで寝てるから。雪羅達が帰ってきたら、そう伝えてくれるかな?」
「いいよ。」
「じゃあ、おやすみ。」

そう言って勇輝は自身に与えられた部屋へと入り、そのまま眠りにつく。

その後に夕食になったのでメイドが呼びに来て起こされる勇輝だが、何故か葵が添い寝していて驚くなんて一幕があったものの、毒が混入されていてメイドが倒れるなんて事もなく夕食は無事に終わり、とても長かった、色々あった一日が終わりを告げた。



次の日から勇輝達は忙しい日々を過ごすことになった。
魔法もスキルもない世界で平和に過ごしていた二人な為に戦闘経験が皆無だった。
おまけに勇輝は契約に蝕まれていた関係で碌に運動もしたことがなかった事もあり、毎日のように戦闘訓練を行うことになった。
それと並行して勇輝達は色々な知識を教わることになった。
といっても、魔法世界トライザードの歴史を学ぶという事ではなく、戦闘に役立つ事柄を教わっていく。
確かに世界の事を知るのは必要なことだが戦争が迫ったこの状況ではなんの意味もないと感じた勇輝達はその指示に従う。

そしてこれはそんな日々の内の一日。

「昨日も教えた通りこの世界には魔法があり、様々な属性があります。そしてその属性には特色があります。火は攻撃力、水は操作性、風は速度、土は防御力。そして闇は特殊性、光は退魔能力。
これが基本属性の特色ですね。」
「先生。」
「なんでしょう、アオイ様?」
「相性は無いんですか?  例えば水は火に強いとか。」
「確かに相性はありますね。水は火に強く、土は水に強く、風は土に強く、火は風に強いです。でも、それはあくまでも相性だけですので、相手より強い攻撃をすれば打ち勝ちますし、技術で対応することも十分に可能です。」
「分かりました。」
「そうですか。それでは続きをしますね。」
「「はい。」」



「確かに魔法は強力だし効果範囲も広い。だが、それだけでは戦いに勝つ事はできません。なので本日からは基礎訓練に加えて近接戦闘術も学んでもらいます。ここに色々な武器を用意したので先ずは武器を選んで下さい。もちろん、刃引きしてあるのでご安心ください。」
「あの。」
「どうしましたか、ユウキ様?」
「えっと、刀ってありますか?」
「カタナ……ですか?  確か、昔の勇者が愛用した武器だと聞いた事がありますな。ですが、生憎こ我が国にはそのような武器は存在しないのです。」
「そうですか。それじゃあ、しょうがないですね。」
「申し訳ありません。」
「いえ、気にしてませんから。」

(霞月は刃引きしてないだろうな。でも、一応聞いてみようかな。)

「式神召喚、霞月。」
「お呼びでしょうか、勇輝様。」
「ねぇ、霞月って刃引きした状態になれる?」
「いえ、私は妖刀ですので流石にそれは無理です。」
「そっかぁ。それじゃあしょうがないか。」
「ですが片刃ですので峰を使えば問題ないかと。」
「それもそうだね。じゃあ、妖刀状態になってくれるかな?」
「はっ!」

「驚いた。それがユウキ様のスキルですか。」
「そうです。」
「それでは早速訓練を……と言いたいところですが、我が国にはそのカタナを指導できるものがおらないのです。」
『その件についてはご心配なく。私が勇輝様に教えますから。』
「えっと、どうやら霞月が扱い方を教えてくれるみたいです。なので先ずは自分達だけでやってある程度慣れてきたら模擬戦を……っていう流れで良いですか?」
「そうですな。私共が混じってはかえって悪影響になりかねませんし。」
「ありがとうございます。」
「いいなぁ。私も刀が使いたい。」
「そう言っても無いんだからしようがないじゃない。」
「そうだけどぉ~。」
「申し訳ありませんアオイ様。普通の武器で我慢してください。」
「は~い。」

そう言って葵は普通の剣を手に取って騎士団の人に教わり、そのまま一日が過ぎていった。
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