病弱だったから異世界で元気に生活する。(仮)

椎茸大使

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チェンジリング

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ランドルの先導の元、アリスと勇輝、そして召喚された雪羅は城の内部を歩いている。
その一方で、ランドルは受けた報告と人数が違う事と何喰わぬ顔で一緒に来ている雪羅に対して首を傾げている。
気になって仕方がなかったランドルは意を決して雪羅に何者か聞いてみた。

「あの、あなたは一体誰なんですか?」
「私ですか?  私は勇輝様の式神です。」
「えっ?  はあ。」

期待していた答えがもらえなかったランドルは生返事をするしかなかった。
その所為か微妙な空気になってしまい、ランドルは追加の質問をすることが出来ず、一同は無言のまま進んでいく。
ランドルは姫王が居るであろう執務室へと向かっている途中に玉座の間の前を通ると、何故かそこに護衛騎士が控えていたことに疑問を感じる。
この日の来客はアリス達が初めてだというのにだ。
不思議に思ったランドルは護衛騎士に尋ねる。

「姫王様は執務室ではないのか?」
「ちょっとな。それよりもそちらの三人は?」
「カトレイア伯爵の娘さんと来訪者、後の一人はよく分からん。」
「来訪者……もしかして……」
「どうした?」
「実は、先日姫王様は勇者召喚を行ったんだよ。」
「勇者召喚!?」
「馬鹿。声が大きい。……でも、その時は儀式自体は成功したんだが、勇者様が現れなくてな。だからもしかしたらと思ってな。」
「なるほど。それは確かに考えられるな。」

「はい。確かに僕は勇者ですよ。」

「「……………………。」」
「「聞こえてた?」」
「はい。」

「だってさ。」
「ああ。……ってこんなことしてる場合じゃない!!」
「うおっ!  急にどうした?」
「今姫王様が勇者召喚してるんだよ。急いで中止しないと。」
「そんなに慌てる必要があるのか?」
「前の時は倒れたんだよ。その後も丸一日寝たきりだったしな。」

そう言いながら護衛騎士は玉座の間の扉を勢いよく開けて、そのまま祈祷台のある部屋へと駆けていく。
ちなみにこの護衛騎士はランドルの幼馴染でジャクソンと言う。



ジャクソンが駆け出し、それを追いかけるようにランドルも走り出す。
その二人を勇輝達も追いかける。
しかし、彼らの行動は少しばかり遅く、扉を開くと眩い光が部屋を満たしており、皆が思わず目を瞑る。
そして光が収まるとそこには一人の少女が立っていた。

彼女の名前は蒼井優姫。
御神勇輝の幼馴染……と良く似た名前の少女だ。

「え?  何?  ここどこ?  何が起きたの!?」
「魔法世界トライザードによく来てくださいました。勇者様。」
「え!?  勇者?  どういう事?」
「本当によく来てくださいました。これで……この国も、救われます。」
「はい!?」
『残念ながらこの子はあなたの勇者じゃありませんよ。』
「誰ッ!」
「もう、わけがわかんない!」

感極まって涙を流し始めたリリアーナ、
そして突然目の前の光景が変わった事に戸惑っていた優姫だが、唐突に聞こえた声に対して、それぞれの反応を示した。
そして、その声の主が空間を割いて現れる。

「初めまして。私の名前はアリシアと言います。一応女神をしています。」
「「「「「「「「女神!?」」」」」」」」

突然現れた女神に対してこの場にいた全員が同じ驚きの声を上げた。
そして、アリシアはその後も言葉を続ける。

「こちらにいる蒼井優姫さんは元々こことは別の世界に迷い込むはずでした。ですが、あなたが勇者召喚を行うタイミングと優姫さんが転移した時間が重なった事と本来召喚されるはずだった人の名前が似ていた事で二人の転移する世界が入れ替わってしまったんですよ。」
「えっ!?  何!?  私ってどっちみち異世界に行く事になってたの!?」
「ええ。ですが、あなたが行く場所はそんなに悪いところではないですよ。それに、そこに行けばあなたの後悔が解消されるでしょうし。」
「後悔……が?」
「はい。」

話がひと段落したと思ったリリアーナがアリシアに質問をする。

「あの!  それでどうして女神様がここに?」
「それはですね、まあ、分かるとは思いますが、本来あるべき状態に戻すというか、要するに蒼井優姫さんを転移する予定だった世界に送るのですよ。あ、心配しなくてもあなたの勇者様は私の部下が連れてきますよ。」
「はあ…。」

「ふむ。御神勇輝さん。ちょっといいですか?」
「え、あ、はい。何でしょう?」

突然呼ばれた事に戸惑う勇輝だが、アリシアの放つ雰囲気に気圧されながらも応対する。
リリアーナはいつの間にかいた勇輝達に対して思うところはあるのものの神の前という事でその事は後回しにした。

「あなたが持つ魔法銃を私に譲って下さいませんか?」
「え?  別にいいですけど……。でも、壊れてますよ。」

そう言いながら勇輝はアリシアに宝物庫から取り出した魔法銃ー黒星ーと専用のカートリッジを渡す。
それを受け取ったアリシアは魔法………ではなく、普通に修理をする。
魔法か何かで直すと思っていた勇輝だったが突然床に座り修理しだした女神を見て、その不思議な光景につい笑みを浮かべてしまう。
そしてそれは他の者も同様だったようでみんなが微笑ましいものを見るような目で暫しの間アリシアを眺めていた。



アリシアの修理が終わる頃にアリシアが現れたところとは別の場所の空間が歪み、そこから緑色の髪をした女性と一人の黒髪の少女が現れた。

「結城葵さんを連れてきましたよ、アリシア様。」
「丁度いいタイミングですね、レイカー。」

アリシアに声をかけた女性、レイカーはアリシアの部下である女神だ。
そしてそのレイカーが連れてきた少女こそがリリアーナが本来召喚するはずだった勇者という事なのだが……

「えっ?  ゆーちゃん?」
「ゆー……君。」

ゆーちゃんと呼ばれた少女、結城葵はまだ勇輝が病院で生活する前に幼馴染として遊んだりし、病院で生活するようになっても遊びに来たりした少女だった。

「ゆー君!!」
「うわっ!」
「なんでゆー君がここに!?  私、ゆー君が突然いなくなって、すごく心配して、色々探し回って、でも、全然見つからなくて、だから、私、ゆー君が死んじゃったのかと……」
「心配かけてごめんね、ゆーちゃん。」

心配していた勇輝がいた事で感極まって勇輝に抱きつく葵。
そのまま葵は勇輝が目の前にいる事を実感するかのようにぎゅっと抱きしめる。
しばらくその光景を眺めていたアリシアは徐に口を開く。

「感動の再会を邪魔するのは心苦しいのですが、そろそろ戻らなければいけないので、こちらの用事を済ませていいでしょうか?」
「あ、はい。」
「ではまず、先ほど勇輝さんに譲っていただいたこの魔法銃を蒼井優姫さんに差し上げます。あなたがこれから行く世界には魔物と呼ばれるモンスターがいますからその対処用に渡しますね。」
「あの、元の世界に帰ることはできないんですか?」
「残念ながら私達はそれをしてはいけないんです。今回は例外中の例外として、本来の道筋に戻すことは出来ますけど、それ以外は無理なんです。」
「そう…ですか。」
「それと、貴方にも私の加護を渡しておきますね。加護についての詳しい内容はは向こうで。」
「…はい。」

「次にリリアーナさん。」
「はい!」
「あなたの持つスキルをどう使うかはあなたの自由ですが、そう簡単に異世界の人に頼ってはいけませんよ。あなた方からすれば藁にもすがる思いで助けを求めているのでしょうが、見方を変えればこれはただの一方的な拉致なんですから。なので、これからは極力自分たちの力で解決するよう努力しましょうね。もちろん、召喚された勇者の皆様の身の安全や衣食住などの保障なんかも忘れないように。」
「はい。分かっています。」
(皆様?)
「よろしい。それでは私達はこれで。」

アリシアはそう言うと空間に穴を開け、そこからレイカーと蒼井優姫を連れてこの世界から去るのだった。
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