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第63話 決着つく
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「私、今すごいラッキーガールなんですよ」
当事者であるソールーナはフィメリアを羽交い締めにしたまま、まっすぐにリュクレスを見つめていた。
「なんと! 挿絵画家の採用が決まったんです」
「そ、そうか。おめでとうソールーナ」
リュクレスの戸惑いつつの祝辞に、ソールーナの顔がぱぁっと輝く。
「ありがとうございます! リュクレス様のおかげです!」
「俺の?」
「はい。リュクレス様を描いた絵、あれのおかげで採用が決まったんです」
「そうか、それは何より――」
「それに」
喰い気味にソールーナは言葉を続ける。
「あなたの素顔まで見ちゃいました! 超ラッキーですよね!」
「えっ!?」
ソールーナの腕の中、フィメリアが驚きの声をあげる。
「仮面の騎士の素顔を、見た……?」
「はい、姫様。リュクレス様の素顔って、驚くべき事に本人のいうとおりもの凄い超イケメンでした!」
しかし当の仮面の騎士リュクレスは素早く首を振る。
「半分だ。半分ならまだ間に合うかもしれん……!」
「そうです! 半分ならまだ間に合うかもしれません!」
(……何に?)
ソールーナの冷静な部分が呟くが、パニックに浮かれているソールーナは敢えてそれを無視する。
「大丈夫。私、いますごくラッキーなんです。だからきっと大丈夫。間に合う、間に合うんです。リュクレス様!」
フィメリアを拘束する腕に力を込めて、ソールーナは叫ぶ。
「でないと私……、私のせいで、リュっ、リュクレス様が……!」
混乱のなか、ソールーナの目にはいつの間にか涙が浮かんでいた。
「私のせいでリュクレス様の……力が……!!!」
ぽろり、と涙がこぼれ落ちる。
「そんなの嫌です! 私のせいでとか! だから早くキスしてください! 早く!」
「…………」
リュクレスが大きく息を飲む音があたりに響いた。
「…………今夜、俺は決着をつけるつもりだった」
静かに言い、リュクレスは片手で仮面を抑えながら、もう片方の手で握っていた剣を鞘に収める。
「そのために、俺はここに来た。全てを終わらせるために。……そして、いま、終わった」
「え……」
「もうキスはしない。好きでもない女の唇など、もともと価値はなかったんだ。……女神にはこう言ってやるさ。お前はゲームには勝ったが勝負には負けたんだ、とな」
それから言い足す。
「ちなみに俺はゲームには負けたが勝負には勝った。だからこれは引き分けだ。イーブンだ」
「負けず嫌いですね」
「ソールーナ、俺は……」
当事者であるソールーナはフィメリアを羽交い締めにしたまま、まっすぐにリュクレスを見つめていた。
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ぽろり、と涙がこぼれ落ちる。
「そんなの嫌です! 私のせいでとか! だから早くキスしてください! 早く!」
「…………」
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「…………今夜、俺は決着をつけるつもりだった」
静かに言い、リュクレスは片手で仮面を抑えながら、もう片方の手で握っていた剣を鞘に収める。
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「え……」
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それから言い足す。
「ちなみに俺はゲームには負けたが勝負には勝った。だからこれは引き分けだ。イーブンだ」
「負けず嫌いですね」
「ソールーナ、俺は……」
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