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第62話 フィメリア拘束
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ソールーナは確かに見てしまった。仮面の英雄騎士リュクレスの素顔を。本当に凄いイケメンだった。――ただし、半分だけだ。
素顔を見られれば失われるという神与の英雄力――、ソールーナが見てしまったわけだから、もう失われてしまったのだろうか。
いや、半分しか見ていないのだからノーカウントかもしれない。そうであってほしい。すぐに隠したからノーカウントだろう。きっとそうだ。フィメリアとユミリオは見ていないようだし、これはもしかしなくてもノーカウントだ。
混乱したソールーナの頭は、必死にノーカウント、ノーカウント、と唱えていた。
だが、確証はない。いやむしろ無理がある。ソールーナの頭はそれほど混乱していたのだ。
(大丈夫、私は落ち着いてます。要は聖女様……、つまり今代の聖域認定聖女様であらせられる聖女姫フィメリア様とキスしてしまえばいいってことですよ。そうしたら私のしたこともチャラになる。ふふふっ、私ってば冴えてる!)
などと、ソールーナは考えてしまっていた。
「…………」
「どうしました? やはり何処か痛みでも……」
気遣ってくれるフィメリアの手を、ソールーナはぐいっと引っ張った。
そうして自分は姫様の背後をとり、彼女を羽交い締めにする。
「え? ちょ、ちょっとソールーナさん!?」
驚くフィメリアを無視して、ソールーナは叫んだ。
「リュクレス様! 今です! キスをして! さぁキスです!!!」
「なっ!?」
「なに!?」
「なん――!?」
フィメリア、リュクレス、ユミリオの順で驚愕の声が上がる。
「な、何を言っているのソールーナ! 離して!」
「ダメです。離したら逃げるでしょう? リュクレス様とキスするまでは離しませんよ」
じたばたと暴れるフィメリアだが、それをソールーナは簡単に押さえ込んでいた。噂に聞くところの火事場の馬鹿力――それがソールーナに力を貸してくれているのだ。
一方、ユミリオは呆然と立ち尽くしていた。
いきなりの展開に思考が追いついていなかったのだ。
もう一方のリュクレスといえば、唖然としながらソールーナを見ていた。ところでリュクレスの仮面は縦に割れ目がついている。割れているのに、うまいこと仮面として顔にくっついているものである。
「ソールーナ……。ところでお前、俺の素顔見たよな?」
「まだ間に合うかもしれません! だから早く!」
ソールーナは鋭く叫んだ。
「さっさとフィメリア様とキスするんです!」
「離しなさい、ソールーナ!」
ソールーナの腕の中でフィメリアが暴れるが、火事場の馬鹿力を発揮中のソールーナには叶わなかった。
そんなフィメリアだが、ある違和感に気づいていた。
――これは。
どんなに魔力を込めて動いても、ソールーナのがっちりホールドをほどけないのだ。
まるで、フィメリア以上の魔力で押さえ込まれているかのように……。
――事実は事実として受け入れましょう……。
冷静に、フィメリアは分析する。
ソールーナはフィメリア以上の魔力を持っているとしか考えられない。普段は隠れているそれが、混乱状態のせいで覚醒しているのだ。
聖域に聖女認定を受けたフィメリア以上の魔力を持つというのなら。ソールーナは……、その正体は……。そこまで考えて、フィメリアはハッとなった。
(まさか! でもソールーナならそういう無茶苦茶なことがあってもおかしくないわ、だってソールーナですもの……!)
素顔を見られれば失われるという神与の英雄力――、ソールーナが見てしまったわけだから、もう失われてしまったのだろうか。
いや、半分しか見ていないのだからノーカウントかもしれない。そうであってほしい。すぐに隠したからノーカウントだろう。きっとそうだ。フィメリアとユミリオは見ていないようだし、これはもしかしなくてもノーカウントだ。
混乱したソールーナの頭は、必死にノーカウント、ノーカウント、と唱えていた。
だが、確証はない。いやむしろ無理がある。ソールーナの頭はそれほど混乱していたのだ。
(大丈夫、私は落ち着いてます。要は聖女様……、つまり今代の聖域認定聖女様であらせられる聖女姫フィメリア様とキスしてしまえばいいってことですよ。そうしたら私のしたこともチャラになる。ふふふっ、私ってば冴えてる!)
などと、ソールーナは考えてしまっていた。
「…………」
「どうしました? やはり何処か痛みでも……」
気遣ってくれるフィメリアの手を、ソールーナはぐいっと引っ張った。
そうして自分は姫様の背後をとり、彼女を羽交い締めにする。
「え? ちょ、ちょっとソールーナさん!?」
驚くフィメリアを無視して、ソールーナは叫んだ。
「リュクレス様! 今です! キスをして! さぁキスです!!!」
「なっ!?」
「なに!?」
「なん――!?」
フィメリア、リュクレス、ユミリオの順で驚愕の声が上がる。
「な、何を言っているのソールーナ! 離して!」
「ダメです。離したら逃げるでしょう? リュクレス様とキスするまでは離しませんよ」
じたばたと暴れるフィメリアだが、それをソールーナは簡単に押さえ込んでいた。噂に聞くところの火事場の馬鹿力――それがソールーナに力を貸してくれているのだ。
一方、ユミリオは呆然と立ち尽くしていた。
いきなりの展開に思考が追いついていなかったのだ。
もう一方のリュクレスといえば、唖然としながらソールーナを見ていた。ところでリュクレスの仮面は縦に割れ目がついている。割れているのに、うまいこと仮面として顔にくっついているものである。
「ソールーナ……。ところでお前、俺の素顔見たよな?」
「まだ間に合うかもしれません! だから早く!」
ソールーナは鋭く叫んだ。
「さっさとフィメリア様とキスするんです!」
「離しなさい、ソールーナ!」
ソールーナの腕の中でフィメリアが暴れるが、火事場の馬鹿力を発揮中のソールーナには叶わなかった。
そんなフィメリアだが、ある違和感に気づいていた。
――これは。
どんなに魔力を込めて動いても、ソールーナのがっちりホールドをほどけないのだ。
まるで、フィメリア以上の魔力で押さえ込まれているかのように……。
――事実は事実として受け入れましょう……。
冷静に、フィメリアは分析する。
ソールーナはフィメリア以上の魔力を持っているとしか考えられない。普段は隠れているそれが、混乱状態のせいで覚醒しているのだ。
聖域に聖女認定を受けたフィメリア以上の魔力を持つというのなら。ソールーナは……、その正体は……。そこまで考えて、フィメリアはハッとなった。
(まさか! でもソールーナならそういう無茶苦茶なことがあってもおかしくないわ、だってソールーナですもの……!)
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