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第60話 ソールーナを庇うリュクレス(リュクレス視点)

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 双子の王子と王女の叫び声がリュクレスの耳をつんざく。

「ダメよ!? どうしてっ、ソールーナ!!」

「隠れていてくださいと言ったでしょう!」

 二人の制止の声が指し示すのは、こちらに駆け出してくるソールーナ……。

 リュクレスは、目の前に広がる光景に焦りまくっていた。

(なんでここにソールーナがいるんだよ!?)

 いないはずの女性がいる。しかも、

(なぜ動ける!)

 この結界内では力なきものは気を失うはずである。――倒れたフィメリアの婚約者のように。
 つまりソールーナにもなんらかの力がある、ということなのだろうか?

 だが、今はそんなことはどうでもいい。

 フィメリアの放った三本の矢のうち、最初の二本はリュクレスの気を引くための囮。
 本命の三本目の矢は時間差攻撃として放たれたもので、フィメリアはこれを、空に向けて射ることで気づかせまいとした。
 空の金の光に紛れてしまい、リュクレスですら気づかなかった光の矢――それに気づいたソールーナが、自分を助けようと飛び出してきたのだ。

 だが、今更遅い。
 光の矢はもうすぐそこまで迫っているし、剣を振るうより先に当たるだろう。
 ……しかも、ソールーナに。
 リュクレスの直感がそう告げていた。

(させるものか!!)

 ソールーナを庇おうと、リュクレスは走ってきた彼女をがっちりと受け止めた。そして、素早くそのまま地面に押し倒す。

 次の瞬間、ドゴォオオン!!! 爆発音のような轟音が響き渡った。

 ソールーナの代わりに背に矢を受けるつもりだったのだが、どうやら爆発の魔力が込められた魔法の矢だったようである。

 ――爆風が収まり砂埃が立ち込める中、リュクレスはきつく目を閉じていた。彼に抱きしめられた状態で同じくソールーナも目を閉じている。

 やがて、砂埃も収まっていき、双方の瞳はゆっくりと開いていき……、

「……ソールーナ、無事か?」

 リュクレスは腕の中を見下ろしながら、優しく尋ねた。

「は、い……?」

「なにかあったのか?」

「あ、あ……」

 ソールーナの様子がおかしい。目を見開き、口をぱくぱくとさせているのだ。

 ……そういえば、リュクレスの視界もおかしい。まるで右目だけ仮面をつけていないかのような視界で……。

「リュ、リュクレス様」

 押し倒されたまま、あわあわとしながら、顔を真っ赤にするソールーナ。

「なんだよ」

「か、か、か、仮面……」

「え?」

 指差される箇所を触ってみると、なんと仮面が縦半分、欠けているではないか!



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