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第45話 常識でははかれない
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ソールーナの報告に目を輝かすフィメリアに、しかしソールーナの返事は渋い。
「どうなんでしょうかねぇ……」
その目もなきにしもあらず、といったところだろうか。
だが、すぐにソールーナは首を振った。
「……あ。やっぱりしてないと思いますよ」
「どうして?」
「明日なんですが。私、お休みをいただいておりますでしょう?」
「ええ」
「その明日にユミリオ様がうちの邸にいらっしゃることになってるんです」
「えっ!?」
「それに対して、そんなに思うところはないみたいですし」
あの夜、リュクレスに報告したあと。
『はっ!?』
と驚いたあと、リュクレスは言ったのである。
『お前、それ王子様と約束したのか?』
と。ソールーナが頷くと、
『お前……。常識でははかれない奴だな……』
と言ったきり、絶句して横になってしまったのだ。
それでリュクレスがモデルになりに邸に来る――という話題は終わり、今にいたる。
「少々お待ち遊ばせ? 明日ってリュクレスのお仕事は……?」
「もちろんありますよ」
「え、じゃあ……、あなたとユミリオが邸で二人っきり、ということになりませんかしら?」
「使用人たちもいますが」
「ええまぁ、それはそうでしょうけれども……」
もちろん、ソールーナとてまったくの初心娘というわけではないので、フィメリアがなにを心配しているかは分かっている。
だから深く頷いた。
「他意はないから大丈夫です。ただうちでゆっくりじっくりデッサンさせていただこうと思っているだけですから」
「……それ、リュクレスに馬鹿正直に報告したのね?」
「もちろんです。やましいことではありませんし」
痛くもない腹を探られるのはゴメンである。だから前もって報告しておいたのだ。……ちなみに反対される可能性は考えていなかった。というか王子様が一枚噛んだ約束を違えさせるほどの権力なんて、一騎士は持たない。
「うーん……。こと絵に関することですし、あなたに他意がないのは重々承知しておりますけれど……」
頬に手を当てて困ったような顔をするフィメリア。
「私、リュクレスのことばかり変えようと思っていましたけど……、もしかしたらあなたにも問題があるのかもしれませんわね……?」
「私に問題、ですか?」
「ええ……まぁ、そうね。とりあえず、本当に嫉妬されるようなことはしてはいけませんよ?」
「分かってます。大丈夫ですよ」
ふふっ、と笑うソールーナ。
それだけは絶対にない、と言い切れてしまう。
ユミリオの好意の対象が目の前のお姫様だということを、よく知っているからだ。
それを知らないフィメリアが念を押してくる。
「本当に、本当に頼みますよ? ユミリオはあれで王位継承権第一位という大事な身なのですから」
「分かってますよ。私は描くだけです。そう、絵をね……」
銀色の目をキラッと輝かせて頷くソールーナ。
時間をかけてスケッチさせてもらえることが、嬉しくてたまらないのである。
しかも小説の挿絵画家として採用されるかもしれないという……、まさにこれは花道。ソールーナはスポットライトが照らし出す道を歩き出したのだ。
「どうなんでしょうかねぇ……」
その目もなきにしもあらず、といったところだろうか。
だが、すぐにソールーナは首を振った。
「……あ。やっぱりしてないと思いますよ」
「どうして?」
「明日なんですが。私、お休みをいただいておりますでしょう?」
「ええ」
「その明日にユミリオ様がうちの邸にいらっしゃることになってるんです」
「えっ!?」
「それに対して、そんなに思うところはないみたいですし」
あの夜、リュクレスに報告したあと。
『はっ!?』
と驚いたあと、リュクレスは言ったのである。
『お前、それ王子様と約束したのか?』
と。ソールーナが頷くと、
『お前……。常識でははかれない奴だな……』
と言ったきり、絶句して横になってしまったのだ。
それでリュクレスがモデルになりに邸に来る――という話題は終わり、今にいたる。
「少々お待ち遊ばせ? 明日ってリュクレスのお仕事は……?」
「もちろんありますよ」
「え、じゃあ……、あなたとユミリオが邸で二人っきり、ということになりませんかしら?」
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「ええまぁ、それはそうでしょうけれども……」
もちろん、ソールーナとてまったくの初心娘というわけではないので、フィメリアがなにを心配しているかは分かっている。
だから深く頷いた。
「他意はないから大丈夫です。ただうちでゆっくりじっくりデッサンさせていただこうと思っているだけですから」
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「もちろんです。やましいことではありませんし」
痛くもない腹を探られるのはゴメンである。だから前もって報告しておいたのだ。……ちなみに反対される可能性は考えていなかった。というか王子様が一枚噛んだ約束を違えさせるほどの権力なんて、一騎士は持たない。
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「私に問題、ですか?」
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「分かってます。大丈夫ですよ」
ふふっ、と笑うソールーナ。
それだけは絶対にない、と言い切れてしまう。
ユミリオの好意の対象が目の前のお姫様だということを、よく知っているからだ。
それを知らないフィメリアが念を押してくる。
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「分かってますよ。私は描くだけです。そう、絵をね……」
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時間をかけてスケッチさせてもらえることが、嬉しくてたまらないのである。
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