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第31話 余計なお世話と大富豪(ゲーム)

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 完全に面白がっているフィメリアに対し、ソールーナとしては面と向かって迷惑だとは言えない。なにせ相手は王女様なのだから。

 そんなソールーナの気持ちなど知らず、フィメリアはにっこりと微笑んだ。

「大丈夫。私の見立てでは、リュクレスはあなたのことが好きですわ」

 キスしたし、押し倒されたし、やたらと素顔を見せたいと言ってくるし……。まぁ嫌われてはいない、というのは理解している。

「そ、そうでしょうか」

「彼って鈍感なうえに臆病者なのよ、きっと。だから自分の気持ちにも気づかないの。でも、だからこそ、その気持ちをこっちが引き出してあげる必要があるんだわ。表にさらけ出させたら最後、そこから先は二人でゆっくり解決していくといいですわ」

「はぁ……」

 それは余計なお世話です、とは言えないソールーナである。何度もいうが、相手は王女様なのだ。

 でもなんとかしてやんわりと釘は刺しておきたいところである。

「あの、姫様? お心遣いはとても嬉しいのですが、私たちのことは私たちでなんとかいたしますよ。その……、夫婦なわけですし。これ以上姫様のお手を煩わせることもありません」

「いいえ、ダメよ。こんなおもしろ――こほん、今のままじゃいつまでたってもキス以上のことなんて起こらないでしょうからね」

 いまこの姫様、こんな面白いこと――と言いかけなかったか?

 ここは側仕えとして一言申し上げねばなるまい。

「あのですね、姫様。側仕えとして進言いたしますが、あまり人のこと面白がって引っかき回しちゃダメですからね」

「そういえばリュクレスのことだけど……」

 すっ、とフィメリアの青い瞳が細くなる。

「彼、私に剣を向けたのですわよね。今のところそれを知っているのは私とあなただけだし、私は問題にしようとは思いませんけど。もしこれをユミリオにでも言ったらどうなることか……」

「ひ、姫様。それは……」

 リュクレスの身柄を人質にとってきた。
 まさかここにきて切り札にしてくるとは……。

「まあ、そういうわけですわ。よろしくお願いね、ソールーナ」

 ぱっちん、とウインクするフィメリアに、

「……はい」

 ソールーナはしぶしぶ頷いた。

 まぁ、フィメリアの遊びにかき回されることになるわけだが。リュクレスにあらかじめこんなことになったんだ、と言っておけば混乱も起こらないだろう。

 人を騙すなど、御免被りたい。

 それに、短時間ではあるが主を変えるというのも楽しいではないか。

 うん、そう前向きに考えよう。

 どうせたったの三日間なのだから、楽しまねば損だ。

「……そういえば、姫様」

「うん?」

「姫様って大富豪できます?」

「大富豪? ゲームの?」

「はい。もしかしたらリュクレス様と大富豪で勝負することになるかもしれなくて。だから覚えたいんです、大富豪。革命返し! って叫びたいんです」

「ごめんなさいね。私、ああいうカードゲームの類いはよく知らなくて……。でもこれだけは分かるわ。別に叫ばなくてもできるんじゃないかしら」

「一応、必殺技なんで。叫んだ方がいいかなって」

「あ、でもユミリオならできるかもしれませんわよ。あの子ってカードゲームは好きな方ですし、多分知ってるわ」

「そうですか……!」

 キラン、とソールーナの銀色の目が光った。

 これは案外、思った以上に面白い配置換えになるかもしれない。




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