6 / 67
第6話 王女様の側仕え
しおりを挟む向かい合うように座ったままの俺たち――俺はまたユンファ様に口付け、その甘い舌を舐めて、絡めとってやりながら。
ユンファ様の首元を覆っていた白い布、彼のうなじにある紐をほどき、緩めて――すると案外容易く、はらりとそれは、取り払うことができた。
そうして俺が脱がせるなりユンファ様は、は…と唇を自ら離し――その顔を伏せ気味に…それでいて嬉しそうに頬を染め、微笑んでいる。
「…そういえば…先ほど僕は、清いのは唇だけだなんだと言いましたが…ソンジュ様、実はまだ…――僕の首にも、ジャスル様の唇は触れておりません…、先ほどは、首布をしたままでしたから……」
「…おぉそうですか…、それは何より嬉しく思います。――ふ、では…失礼いたします、ユンファ様……」
ユンファ様はどこか緊張したように「はい…」と答えながら、その首を横へ反らして俺に差し出してくる。
俺はユンファ様の、まだ踏み荒らされていない新雪…その白く、流れるような美しい首筋を上からそっと鎖骨まで、つー、と指先で掠め撫でた。…意外にもしっかりと喉仏が、孤島のように浮かんでいるのが何とも官能的だ。
ひく…とわずかな反応を示した彼に、俺はその人の首筋へ顔を寄せ――口付ける。
「…ふ、…ん…っ♡」
ふにゅりと俺の唇が触れれば、ゾクゾク、と先ほどより反応を強め、ユンファ様は俺の肩をきゅうと掴んでくる。…甘く小さな声をもらしたユンファ様、カタカタと震えているその手、ぬくもりの濃いなめらかな白肌は粟立ち…――もう片手は自分の口元を押さえた彼、
「あっ、なっなんて声を…! ごめんなさい、く、擽ったくて……」
「…ふ…本当にそれだけですか、ユンファ様…? とても艶やかで、可愛らしい声でしたよ…。どうか堪えず、あるがままに声を出してくださいませ……」
どうせもう、誰ぞに聞かれたところで今更よ、ならば思うままにつがい合うほうがよい…俺はユンファ様の首筋にそう囁き――それから、舌を出してつぅと擽ればビクリ、ひっとよりあらわな反応を見せるユンファ様。
なんと初々しく、可愛らしい反応か…――。
つー…と舌でなぞり、軽く吸い付き、ペロペロと舐める…甘く、芳醇な桃の香も濃い――桃の味もまた、濃い。
「…ん…♡ …んぅ…♡ は、あ、くっ擽ったい…、ぁぁ…♡」
ひくん、……ひくん、と小さく跳ねるユンファ様の体は、俺を誘う。…擽ったい、などと言いながら甘い声を出しているこの人は、未知の快感にそう言っているだけなのだ。
「…ぅぅ…♡ そ、ソンジュ様…ぁ……」
ちろちろとその甘い肌を舐め、ちゅうと軽く吸い付きながら――するりと彼の衿元を撫でるよう割り、ユンファ様の肩のほうへ下げてゆく。
「…ソンジュ様…、あの……」
「…綺麗だ……」
あらわになった白い鎖骨は、くっきりと浮き――首の筋に繋がって、華奢な影を落としている。…というのもユンファ様は、先ほど思い切って自分の胸元を俺に見せ付けてきたわり、…胸板の中央まで衿元を掴んで引き上げ、胸を隠し、俯かせた顔を真っ赤にしているのだ。
しかし、その人の黒髪がさらりとかかる白い肩は、すっかり晒され――今曲げられている肘まで、その薄桃色の着物も、中の襦袢も下ろされている。
「…はは、むしろ…そのほうが艶やかでございますよ、ユンファ様……」
「……? それは、どういう…」
すかさずその鎖骨にちゅっと吸い付けば、ぁ、と息を詰めたユンファ様。
ならばと俺は、ユンファ様の帯を解いてゆく。…幸い、俺にとってこの装束は勝手知ったるという構造であり、俺がこの帯を解いてゆくのは、それこそ鎖骨を舐めながらでもできるほど、あまりにも簡単である。
――甘く香る芳醇な桃の熟れた匂い…若桃に、かぷりと甘噛み。…つまり、その鎖骨にやわく歯を立てると、ぴくんっとユンファ様の体が小さく跳ねる。
「…ッ♡ ソンジュ、様……」
そのあとは、鎖骨のくぼみを舌で擽る。…ユンファ様の、自分の着物を握ったその手にきゅうと、力が入る。
するりと、かかる髪を避けるように撫で付けたその人の肩――俺の手のひらは、ユンファ様の意外にも筋肉質な、それでいて細い二の腕をなめらかに、滑りゆく。
「…はぁぁ……♡ ソンジュ様、僕…幸せでございます…」
すると、それだけでふるふるとしたユンファ様の体がじんわりと熱くなり、内側からしっとりと湿ってくる――。
「……俺も、愛しのユンファ様に触れることが許され、今、至上の喜びを感じております……」
「……、ふふ…」
斜へ伏せられた、その端正な顔は頬が紅潮し、はにかんでほのかに笑う。――着物の衿元を持ち上げて胸元を隠し、やや竦められた白い肩、それによってよりくっきりと浮かんだ妖艶な鎖骨と…上部のみ覗く、平たく雪のように白い胸板。…艶美な黒髪がさらさら落ちて、いくらかまたその白い肩に、胸板にかかる。
可憐でありながら、何とも妖艶な人だ――男として、貪欲となるほどに。
1
お気に入りに追加
859
あなたにおすすめの小説

彼の秘密はどうでもいい
真朱
恋愛
アンジェは、グレンフォードの過去を知っている。アンジェにとっては取るに足らないどうでもいいようなことなのだが、今や学園トップクラスのモテ男へと成長したグレンフォードにとっては、何としても隠し通したい黒歴史らしい。黒歴史もろともアンジェを始末したいほどに。…よろしい。受けてたちましょう。
◆なんちゃって異世界です。史実には一切基づいておりませんので、ご理解のほどお願いいたします。
◆あらすじはこんなカンジですが、お気楽コメディです。
◆ざまあのお話ではありません。ご理解の上での閲覧をお願いします。スカッとしなくてもクレームはご容赦ください。
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り
楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。
たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。
婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。
しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。
なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。
せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。
「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」
「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」
かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。
執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?!
見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。
*全16話+番外編の予定です
*あまあです(ざまあはありません)
*2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪

【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
踏み台令嬢はへこたれない
IchikoMiyagi
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。

【コミカライズ決定】婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です
灰銀猫
恋愛
両親と妹にはいない者として扱われながらも、王子の婚約者の肩書のお陰で何とか暮らしていたアレクシア。
顔だけの婚約者を実妹に奪われ、顔も性格も醜いと噂の辺境伯との結婚を命じられる。
辺境に追いやられ、婚約者からは白い結婚を打診されるも、婚約も結婚もこりごりと思っていたアレクシアには好都合で、しかも婚約者の義父は初恋の相手だった。
王都にいた時よりも好待遇で意外にも快適な日々を送る事に…でも、厄介事は向こうからやってきて…
婚約破棄物を書いてみたくなったので、書いてみました。
ありがちな内容ですが、よろしくお願いします。
設定は緩いしご都合主義です。難しく考えずにお読みいただけると嬉しいです。
他サイトでも掲載しています。
コミカライズ決定しました。申し訳ございませんが配信開始後は削除いたします。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる