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第5話 通勤中の二人
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結婚式から帰ってきた翌日。
ソールーナとリュクレスは揃ってイメツィオ家の馬車に乗り、王城へと向かった。
ソールーナはフィメリア王女の側仕えという仕事のため、リュクレスは王宮騎士団の仕事のため、である。ソールーナは仕事用の地味めなドレスを着用しているし、リュクレスは騎士団から支給されたとう黒い騎士の制服に身を包んでいる。
特に話すこともなく、馬車内には気まずい沈黙だけが横たわっていた。
「……あの」
耐えかねて口を開いたのはソールーナだった。
「昨日はずいぶん遅いお帰りでしたね」
「騎士団の連中に歓迎会をされてな」
「まぁ、そうだったんですか」
家に帰りたくないから――ソールーナに会いたくないから――、というわけではなかったのか。
「俺は早く帰って寝たかったんだが、初っぱなから断るのも今後の人間関係に支障が出るだろうと思って付き合ったんだ。俺は二日酔いにはならないから、飲むだけならいくらでも飲めるからな」
「それは大変でしたね……」
リュクレスは自分のことを嫌っていてなかなか帰ってこないのかと思っていたのだが……。
(リュクレス様にはリュクレス様の事情があるのね)
白い結婚、カタチだけの夫婦。それが自分と彼なのだから仕方がないと思っていたけれど……だが裏を知ると、腑に落ちるものがあった。……流浪の騎士だったリュクレス。根付き草になって苦労しているのだ。
「リュクレス様のお仕事って、どんなものなんですか?」
「王宮騎士団の分隊副師団長という立場を貰ったよ」
「分隊副師団長! 凄いですね。いきなり役職付きで迎えられるなんて」
「主な仕事内容は雑用だけどな。なんにせよ、流浪の騎士上がりには荷が重いよ。正直、面倒くさい。昨日なんか随分イジられたしな……」
「イジられるって?」
「新婚さんを邪魔してやれー、みたいなやつだよ。男が集まるとそういう話題になったりするんだ。酒も入ってるしな。だからなかなか帰してくれなかった」
「そ、そうなんですか」
「まったく。そんなんじゃないのになぁ……」
あくびを噛み殺しながらぼやくリュクレスを見て、ソールーナは微笑む。
「でも、なんだか楽しそうです。そういう話ができるお仲間がいるっていいですよね」
「楽しい? ……いや別に楽しくはないけどな。ああいうのは苦手だ。ただ俺にも立場ってものがあってな……。だいたいお前とはそういう関係じゃないし。はー、まったく。集団行動はこれだから嫌なんだよ」
「ふぅん……?」
どうにも要領を得ず、ソールーナは首を傾げるばかりであった。
そんな二人を乗せた馬車は、やがて王城の門を潜った。
ソールーナとリュクレスは揃ってイメツィオ家の馬車に乗り、王城へと向かった。
ソールーナはフィメリア王女の側仕えという仕事のため、リュクレスは王宮騎士団の仕事のため、である。ソールーナは仕事用の地味めなドレスを着用しているし、リュクレスは騎士団から支給されたとう黒い騎士の制服に身を包んでいる。
特に話すこともなく、馬車内には気まずい沈黙だけが横たわっていた。
「……あの」
耐えかねて口を開いたのはソールーナだった。
「昨日はずいぶん遅いお帰りでしたね」
「騎士団の連中に歓迎会をされてな」
「まぁ、そうだったんですか」
家に帰りたくないから――ソールーナに会いたくないから――、というわけではなかったのか。
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「それは大変でしたね……」
リュクレスは自分のことを嫌っていてなかなか帰ってこないのかと思っていたのだが……。
(リュクレス様にはリュクレス様の事情があるのね)
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「王宮騎士団の分隊副師団長という立場を貰ったよ」
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「イジられるって?」
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「そ、そうなんですか」
「まったく。そんなんじゃないのになぁ……」
あくびを噛み殺しながらぼやくリュクレスを見て、ソールーナは微笑む。
「でも、なんだか楽しそうです。そういう話ができるお仲間がいるっていいですよね」
「楽しい? ……いや別に楽しくはないけどな。ああいうのは苦手だ。ただ俺にも立場ってものがあってな……。だいたいお前とはそういう関係じゃないし。はー、まったく。集団行動はこれだから嫌なんだよ」
「ふぅん……?」
どうにも要領を得ず、ソールーナは首を傾げるばかりであった。
そんな二人を乗せた馬車は、やがて王城の門を潜った。
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