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*WEB連載版

第59話 元婚約者の転落した人生

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「ダドリー様、美人局って、あの……、交際をネタに金品をゆするというあれですわよね……?」

「聞いてくれるか、アデライザ」

 ダドリー様は語り始めた。

 それによると、ダドリー様はイリーナの妊娠発覚後はちゃんと彼女と結婚するつもりだったらしい。だがしばらくして一人の女性が近づいてきたという。その女性はダドリー様に、妻となる人が妊娠中の今は女遊びをする最後のチャンスだから……と誘惑してきたのだそうだ。

「まあ、結局その誘いに乗ってしまったのは僕なんだがね」

 ダドリー様は疲れた顔でそう呟いた。

 それからはお決まりのパターンだったという。
 後ろから怖い人が出て来て、『俺の女に手をだしたな!』と大金を要求されたのだ。それでお金を払ったらその女性に捨てられたんだとか。

「しかも何故かそれがイリーナの耳にそれが入ってしまってね。僕に激怒したイリーナは妊娠は嘘だったと告げ、僕のもとから去って行った」

 ダドリー様は力なく笑った。

「……誰かに仕組まれたみたいな転落劇だったよ。いや、だがまだまだそこからだった、僕の人生はとことんケチがついていった……」

 ダドリー様はうなだれて話を続ける。

「実は、浮気女と情夫へ渡した金は、アルフォード侯爵家の資産から抜き取ったものだった。僕個人ではそんな大金を持っていなかったからね……。とにかく、抜いた資産を補填しなければならなかった。そんなときに、うまい儲け話を持ちかけてくる男がいた」

 うわぁ、嫌な予感しかしないわね。

「……ああ。もちろんその男に金を持ち逃げされたよ。アルフォード家の資産から金を抜き出し、あろうことか更に資産をだまし取られた僕は、当然のことながら廃嫡され家を追い出された……」

「そ、そうだったのですか。そんなことイリーナは言っていませんでしたけれど」

「イリーナが出て行ったあとのことだからね……」

 ダドリー様は苦笑いする。

「寄る辺のない僕は生活を立て直そうと必死だった。だがどこも援助を申し出てはくれず……。そんな僕に救いの手を差し伸べてくれたのがオレリー家だった。といっても、娘を傷物にした責任をとれ、というものだったがね。僕にとっては救いの船だった……」

「そういうことだったんですか」

 私は思わずため息をついた。踏んだり蹴ったりだったのね、ダドリー様。……自業自得で同情の余地なんかないけど。

「それでイリーナを迎えに来たってわけですか」

「……できたら君とも復縁したかったがね」

「は?」

「もしかしたらまだ僕のことを好いていてくれるんじゃないか、と。そう思って……」

「…………」

 この赤月館に来てまでそんなこと普通いう? 呆れて物も言えないわ。

「まあ、それも叶わない夢だったようだ。君は本当に幸せそうで……。君の顔を見れば分かるよ。ルベルド殿下が君のことを深く愛しておられるのがね。僕の出る幕はもうないのか……」

「当たり前でしょう! ほんとに。あなたは何もかも遅いんです!」

 私の言葉にダドリー様は傷ついたような表情をした。

「そうだね。今更こんなことを言うなんて虫が良すぎるよね。だが、最後にこれだけは言わせてほしい。すまなかった、アデライザ」

 ダドリー様は頭を下げた。……まったく、本当に自分勝手な人ね。

「……今さらこんなそんなことされても困ります。私はもうあなたとは他人なんですから。これからはイリーナを大事にしてあげてください」

「そうだな……。僕は本当に愚かだ……。ところでイリーナは? ここにいると聞いてきたのだが」

「イリーナは……」

 私が妹のことを話そうとしたとき。応接室のドアが勢いよく開いた。

「お姉さま!」

 入ってきたのはイリーナだった。





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