41 / 48
*WEB連載版
第59話 元婚約者の転落した人生
しおりを挟む「ダドリー様、美人局って、あの……、交際をネタに金品をゆするというあれですわよね……?」
「聞いてくれるか、アデライザ」
ダドリー様は語り始めた。
それによると、ダドリー様はイリーナの妊娠発覚後はちゃんと彼女と結婚するつもりだったらしい。だがしばらくして一人の女性が近づいてきたという。その女性はダドリー様に、妻となる人が妊娠中の今は女遊びをする最後のチャンスだから……と誘惑してきたのだそうだ。
「まあ、結局その誘いに乗ってしまったのは僕なんだがね」
ダドリー様は疲れた顔でそう呟いた。
それからはお決まりのパターンだったという。
後ろから怖い人が出て来て、『俺の女に手をだしたな!』と大金を要求されたのだ。それでお金を払ったらその女性に捨てられたんだとか。
「しかも何故かそれがイリーナの耳にそれが入ってしまってね。僕に激怒したイリーナは妊娠は嘘だったと告げ、僕のもとから去って行った」
ダドリー様は力なく笑った。
「……誰かに仕組まれたみたいな転落劇だったよ。いや、だがまだまだそこからだった、僕の人生はとことんケチがついていった……」
ダドリー様はうなだれて話を続ける。
「実は、浮気女と情夫へ渡した金は、アルフォード侯爵家の資産から抜き取ったものだった。僕個人ではそんな大金を持っていなかったからね……。とにかく、抜いた資産を補填しなければならなかった。そんなときに、うまい儲け話を持ちかけてくる男がいた」
うわぁ、嫌な予感しかしないわね。
「……ああ。もちろんその男に金を持ち逃げされたよ。アルフォード家の資産から金を抜き出し、あろうことか更に資産をだまし取られた僕は、当然のことながら廃嫡され家を追い出された……」
「そ、そうだったのですか。そんなことイリーナは言っていませんでしたけれど」
「イリーナが出て行ったあとのことだからね……」
ダドリー様は苦笑いする。
「寄る辺のない僕は生活を立て直そうと必死だった。だがどこも援助を申し出てはくれず……。そんな僕に救いの手を差し伸べてくれたのがオレリー家だった。といっても、娘を傷物にした責任をとれ、というものだったがね。僕にとっては救いの船だった……」
「そういうことだったんですか」
私は思わずため息をついた。踏んだり蹴ったりだったのね、ダドリー様。……自業自得で同情の余地なんかないけど。
「それでイリーナを迎えに来たってわけですか」
「……できたら君とも復縁したかったがね」
「は?」
「もしかしたらまだ僕のことを好いていてくれるんじゃないか、と。そう思って……」
「…………」
この赤月館に来てまでそんなこと普通いう? 呆れて物も言えないわ。
「まあ、それも叶わない夢だったようだ。君は本当に幸せそうで……。君の顔を見れば分かるよ。ルベルド殿下が君のことを深く愛しておられるのがね。僕の出る幕はもうないのか……」
「当たり前でしょう! ほんとに。あなたは何もかも遅いんです!」
私の言葉にダドリー様は傷ついたような表情をした。
「そうだね。今更こんなことを言うなんて虫が良すぎるよね。だが、最後にこれだけは言わせてほしい。すまなかった、アデライザ」
ダドリー様は頭を下げた。……まったく、本当に自分勝手な人ね。
「……今さらこんなそんなことされても困ります。私はもうあなたとは他人なんですから。これからはイリーナを大事にしてあげてください」
「そうだな……。僕は本当に愚かだ……。ところでイリーナは? ここにいると聞いてきたのだが」
「イリーナは……」
私が妹のことを話そうとしたとき。応接室のドアが勢いよく開いた。
「お姉さま!」
入ってきたのはイリーナだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,954
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。