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*WEB連載版

第53話 女スパイ尋問ごっこ★

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 私は手を引かれ、殿下の寝室へとやってきた。

「はぁ~」

「大丈夫か?」

 急展開からのようやくの休息であるに息を整えていると、殿下が心配そうな顔をして覗き込んできてくれた。

「はい、なんとか」

「すまないな、急に巻き込んで」

「いえ、こちらこそ。妹がご迷惑をおかけしてしまい……」

「あんたが謝ることじゃないって。あいつ、今日はなんだかしつこくってさ。俺の部屋の前で張り込みかけてやがったんだよ」

「え!?」

 思わず部屋のドアを見てしまう。殿下の部屋、というのはまさにここだからだ。

「大丈夫、あいつのことは巻いたから。今頃図書室ウロウロしてるんじゃないか?」

 殿下はそう言って私をベッドの上に座らせた。

 そして私のことを抱きしめる。首筋に鼻を埋めてスンスン匂いを嗅ぐ殿下。

「ああ、アデライザの匂いだぁ」

 その舌でペロリと舐めてきた。そのまま唇を寄せてきてキスをする。

 ちゅぱっと音を立てるだけのキスだったけど、殿下は満足げな表情だった。

「あー幸せ。ずっとこうしたかったんだよ」

 ぎゅうっと強く抱き締められる。苦しいけど気持ちいい。

「最近ご無沙汰だったからな、どこかの馬鹿妹のせいで」

「すみません……」

「だからあんたが謝る必要はないって」

 そういってまたキスしてくる。

 こんどは長めのディープキス。お互いの唾液を交換し合う。唾液を流し込まれて飲み込むと、また深くまでルベルドは舌を絡めてきた。

「あ、ん……ま、待って、殿下……」

「二人っきりの時は、ルベルド、だろ?」

「は、はい。ルベルド、あの、ちょっと待って……」

「待たない」

 そういうなり彼は私を押し倒す。覆い被さってきた彼の顔は少し怖い。だけどそれが逆に色っぽくてドキドキしてしまう。

 そして、また深いキスが始まる。何度も角度を変えて貪るようなそれに頭がクラクラして……。
 やっと解放されたときには酸欠気味になっていた。

「い、いきなりすぎです、ルベルド。逃げてきたと思ったらこれって」

「もう我慢できないんだ。一刻も早くお前が欲しい」

「ま、待って下さい、落ち着いて。私、殿下に……ルベルドに、まずは謝ろうって思ってて……」

「謝る? なんだよ、それ」

 彼は服を脱ぎ捨てながら聞いてきた。引き締まった腹筋や胸板が恥ずかしくて、私は目を逸らす。

「あの……その。私、家庭教師としてここに来たわけですが、その。本当はもう一つ仕事を承っていまして……」

「知ってる。スパイだろ?」

「え……?」

 どうしてそれを……。

「兄貴が送り込んでくる家庭教師はみんなそうだったからな。だから俺は家庭教師っていうのは信用してなかったんだけど……、まぁ、あんたを送り込んでくれたことには感謝してるよ。ほんとに好みドンピシャだから」

 優しい手つきで頬を撫でられ、顔に熱が集まるのを感じた。そんな私の反応を楽しむようにニヤリと笑みを浮かべるルベルド。

「……そうだな。せっかく打ち明けてくれたことだし、ここは一つ女スパイごっこでもするか。あんたは俺のなにを調べようとしていたんだ、女スパイさん?」

「それは……ひゃあっ!」

 耳に吐息をかけられ、ゾクッとした感覚が背筋を走る。

「ほら、言えよ」

「やっ! はぁんっ!!」

 耳の中に舌を入れられて変な声が出てしまった。くすぐったいような感じなのに、なんだか気持ちよくて身体の奥がきゅんきゅんとうずく。

「あ、やだっ、言うっ、言うからぁっ」

 身を捩っても離してもらえず、むしろさらに激しく攻め立てられた。

 頭の中で火花が散ったみたいになって、何も考えられなくなる。もうどうなってもいいやという気分になった時ようやく解放され、私は肩で息をしていた。

「はぁっ、はぁっ……」

「ああ、色っぽいな」

 うっとりした様子の殿下の視線を感じてハッとする。一体何をやっているんだ、私たちは。

「だ、だから私は――」

「おっと、簡単に言ったらつまらないぞ」

「え……」

「いまのあんたは女スパイなんだからさ。秘密は身体を張って守ってもらわないと」

 なんて言いながらも殿下の紅い目が笑っている。

「それをエロいことして無理矢理聞き出すってシチュエーションが燃えるんだよ」

「えぇ………」

「さて、続きをしようか」

 私に再び覆い被さってくるルベルド。その瞳にははっきりと分かるほどの情欲の炎が灯っていた。

 ご無沙汰期間が長すぎて相当な欲求不満になってるみたいね、ルベルドったら。

 実際、私は女スパイの仕事を頼まれていたわけだし、そういう意味で負い目はあった。しばらくこの遊びに付き合うか……。





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