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第1話 パーティー追放
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「そういうわけで、ジャック。お前をパーティーから追放する」
「お前をバストバフしてやろうか!」
そう俺は叫んだ。
ここはギルドの経営する酒場で、目の前にいるのはこの前入ったばかりの中堅冒険者パーティーのリーダーである。
目の前のリーダー、名はセージ――がこめかみに指をあて、真剣に悩み始めた。
「……会話が絶望的なまでに噛み合ってないんだが」
「いきなり俺を追放するような奴と会話を噛み合わせるメリットなんてないからな」
「ということは、一応俺の言葉の理解はできてたんだな……」
「あんたは男だ。だから小さくするほど胸が無い。それに男なのに巨乳って絵的に面白いから意趣返しになるじゃん」
「つまり嫌がらせか」
「嫌がらせじゃない、復讐だ! いきなり人のことパーティー追放とか中堅リーダーのすることじゃねえだろ!」
ダン! とテーブルを叩くがセージはまったく動じない。
「言いたいことはそれだけか、ジャック……!」
カッ、と目を見開くセージ。
「いいか? いま流行りの範囲バフスキル持ちだって聞いたからパーティーに採用したのに肝心のスキルがまさかのお笑いスキルとか、俺たちも被害者みたいなもんだからな!?」
「お笑いスキルじゃねぇよ!」
そう、時代はパーティーバフ時代。
範囲バフスキルでパーティ全体の攻撃力を上げたり、防御力を上げたりする戦術が主流だ。
つい一年前までは範囲バフなんて使えねーとか言われていたのに有名パーティーが使い始めた途端に流行りだしたのである。
まあ、戦術の流行なんてこんなもんだよね。
で、俺は今をときめく範囲バフスキルを持っていたってわけだ。
「胸を大きくするスキルとか、お笑いスキルの他になんっていうんだよ!」
「肉体改造スキルだ!」
「そんなご大層なもんか? 所詮は宴会芸スキルだろ」
「俺の胸囲拡大は一流だぜ。バフだけじゃ二流なんだよ。デバフも使いこなせてこそ一流……、そして俺はバフもデバフもイケる。つまりは貧乳派も安心なんだ!」
「……なぁ、率直な意見いっていいか」
「どうぞ」
「バストバフとかいってるけどさ、つまりは胸の大きさ変えられるだけだよな?」
「そうだけど」
「……それ、バフっていうのか?」
「肉体改造は立派にバフ部門に入るバフだぞ」
セージはそこで「はぁ」とため息をついた。イケメン顔のこいつにため息疲れると妙にムカつく。
「……まあ、言われてみれば確かにそうか。胸が急に大きくなるというのは腕が急に伸びたりするのと同じ肉体改造部門ではあるよな……。まさか戦闘中にバフ撒くって言われて期待してたらパーティー全員が豊胸されるとは思わなかったが」
「女戦士の気持ちが分かっただろう! 相手の気持ちになることは大事なんだ!」
「うち、男所帯だけどな」
「ならばなおのことじゃないか。女戦士の気持ちを知るんだ。女はなんと人類の半分はいる。女の気持ち、知っておいて損はないぞ」
「とにかくお前追放するから」
話は終わった――と言わんばかりにセージは立ち上がる。
「ちょっまっ、お前後悔するからな!」
「いや冷静に考えてないだろ。バストバフスキル能力者がいなくなってどう後悔するんだよ……。じゃあな、次のバフ撒きとの面接の時間なんだ」
「くそっ……」
馬鹿にしやがって!
去って行くイケメンの背中に、俺は意識のなかでスキルの照準を合わせた。
そして、小さく、奴の背に届かないように呟く。
「時限式・胸囲拡大」
キュイン、と俺にしか聞こえない照準成功音がして、セージの胸が大きくなるのが約束された。
……今目の前で胸を大きくしたら、すぐに俺に助けを求めてきて面倒くさいからな。
俺がいないところでじっくりと巨乳女戦士の気持ちを味わってもらおうじゃないか。なぁ、中堅パーティーのリーダーさんよ!
「お前をバストバフしてやろうか!」
そう俺は叫んだ。
ここはギルドの経営する酒場で、目の前にいるのはこの前入ったばかりの中堅冒険者パーティーのリーダーである。
目の前のリーダー、名はセージ――がこめかみに指をあて、真剣に悩み始めた。
「……会話が絶望的なまでに噛み合ってないんだが」
「いきなり俺を追放するような奴と会話を噛み合わせるメリットなんてないからな」
「ということは、一応俺の言葉の理解はできてたんだな……」
「あんたは男だ。だから小さくするほど胸が無い。それに男なのに巨乳って絵的に面白いから意趣返しになるじゃん」
「つまり嫌がらせか」
「嫌がらせじゃない、復讐だ! いきなり人のことパーティー追放とか中堅リーダーのすることじゃねえだろ!」
ダン! とテーブルを叩くがセージはまったく動じない。
「言いたいことはそれだけか、ジャック……!」
カッ、と目を見開くセージ。
「いいか? いま流行りの範囲バフスキル持ちだって聞いたからパーティーに採用したのに肝心のスキルがまさかのお笑いスキルとか、俺たちも被害者みたいなもんだからな!?」
「お笑いスキルじゃねぇよ!」
そう、時代はパーティーバフ時代。
範囲バフスキルでパーティ全体の攻撃力を上げたり、防御力を上げたりする戦術が主流だ。
つい一年前までは範囲バフなんて使えねーとか言われていたのに有名パーティーが使い始めた途端に流行りだしたのである。
まあ、戦術の流行なんてこんなもんだよね。
で、俺は今をときめく範囲バフスキルを持っていたってわけだ。
「胸を大きくするスキルとか、お笑いスキルの他になんっていうんだよ!」
「肉体改造スキルだ!」
「そんなご大層なもんか? 所詮は宴会芸スキルだろ」
「俺の胸囲拡大は一流だぜ。バフだけじゃ二流なんだよ。デバフも使いこなせてこそ一流……、そして俺はバフもデバフもイケる。つまりは貧乳派も安心なんだ!」
「……なぁ、率直な意見いっていいか」
「どうぞ」
「バストバフとかいってるけどさ、つまりは胸の大きさ変えられるだけだよな?」
「そうだけど」
「……それ、バフっていうのか?」
「肉体改造は立派にバフ部門に入るバフだぞ」
セージはそこで「はぁ」とため息をついた。イケメン顔のこいつにため息疲れると妙にムカつく。
「……まあ、言われてみれば確かにそうか。胸が急に大きくなるというのは腕が急に伸びたりするのと同じ肉体改造部門ではあるよな……。まさか戦闘中にバフ撒くって言われて期待してたらパーティー全員が豊胸されるとは思わなかったが」
「女戦士の気持ちが分かっただろう! 相手の気持ちになることは大事なんだ!」
「うち、男所帯だけどな」
「ならばなおのことじゃないか。女戦士の気持ちを知るんだ。女はなんと人類の半分はいる。女の気持ち、知っておいて損はないぞ」
「とにかくお前追放するから」
話は終わった――と言わんばかりにセージは立ち上がる。
「ちょっまっ、お前後悔するからな!」
「いや冷静に考えてないだろ。バストバフスキル能力者がいなくなってどう後悔するんだよ……。じゃあな、次のバフ撒きとの面接の時間なんだ」
「くそっ……」
馬鹿にしやがって!
去って行くイケメンの背中に、俺は意識のなかでスキルの照準を合わせた。
そして、小さく、奴の背に届かないように呟く。
「時限式・胸囲拡大」
キュイン、と俺にしか聞こえない照準成功音がして、セージの胸が大きくなるのが約束された。
……今目の前で胸を大きくしたら、すぐに俺に助けを求めてきて面倒くさいからな。
俺がいないところでじっくりと巨乳女戦士の気持ちを味わってもらおうじゃないか。なぁ、中堅パーティーのリーダーさんよ!
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