26 / 38
第27話 【閑話】ナルティーヌの場合2:ナルティーヌ視点
しおりを挟む
「……さん、ナル姐さん!」
誰かに呼ばれている。
誰だろう?
(ナルの……愛弟子ですわ……)
ナルティーヌはぼんやりと考えていた。
自分は愛弟子に呼ばれている。それを美少年に教えて貰った。だから早く返事をしてあげないといけない。
……美少年って、誰?
美少年とは、あの女の子みたいに可愛い少年のことだ。
(ナルの性欲処理をしてくれている…………)
そういう自己紹介だった。
「……っ!?」
ナルティーヌははっとした。
目を開けると、ベッドに寝ていた。目の前にはほっとした様子のパスカルがいる。
「よかった、姐さん。気づいたか!」
「ここは……?」
「道場の医務室だ」
目の前にはホッとした様子のパスカルがいた。ナルティーヌはベッドから身を起こす。
「大丈夫か? まだふらふらするか?」
ナルティーヌはぼんやりとしながら頭を押さえた。
自分がなぜここで寝ているのか思い出せないのだ。
「いったい……何があったのですか、ナルは……」
「俺に稽古をつけてくれていたらいきなり気絶したんだ」
「ナルが、気絶……? パスカル殿下の一撃を受けきれなかったってことですの?」
「いや、俺の剣なんかひとっつも入っていない。情けないが、さすが我が師と惚れ惚れする身のこなしだったぞ。ほんとに前触れもなく突然倒れたんだ」
「そうですの……」
なんとなく思い出してきた。
そうだ、自分はパスカルに剣の稽古をつけていたのだ。……覚えているのはそれだけだ。
……いや、違う。
それから……なにかあったような気がする。
ぼんやりとした意識で、ぼんやりとした空間で。
(そうですわ、誰かに会ったような……誰でしたっけ……?)
「ナル姐さん、無理はするな。すぐに回復術師を呼んでくるな」
「え、ええ、ありがとうございます、殿下」
こういう状態は侮らない方がいいことをナルティーヌは知っていた。一見外傷がなくとも脳みそにダメージを負っているかもしれないからだ。
記憶の混濁もみられるし、なんらかの事象が発生している可能性がある。
だが。
「ナル師範代!」
医務室のドアが開き、女の子みたいな可愛い少年が入ってきた。
「お前は……?」
パスカルが警戒する。この少年は先程までいなかったはずだから。……いや、ナルティーヌは知っている。ずっと面倒を見て貰ってきている相手だ……。
「トゥルッセ……」
ナルティーヌは小さく彼の名を口にした。
「トゥルッセ……、トゥルッセ・イティートル。ナルの弟子の一人で、武術の腕がないから主にマネージャーとしてサポートに回ってもらっている人……」
それからナルティーヌの性欲解消もしてくれている。だがそれはトゥルッセも気持ちいいと言ってくれているのでお互い様である。
そして、ナルティーヌは彼のことを特に好きというわけではない。何故なら彼は単なる性欲処理の相手にすぎないから。
……まるでなにかの設定のように、つらつらとそんなことが思い出されていった。
誰かに呼ばれている。
誰だろう?
(ナルの……愛弟子ですわ……)
ナルティーヌはぼんやりと考えていた。
自分は愛弟子に呼ばれている。それを美少年に教えて貰った。だから早く返事をしてあげないといけない。
……美少年って、誰?
美少年とは、あの女の子みたいに可愛い少年のことだ。
(ナルの性欲処理をしてくれている…………)
そういう自己紹介だった。
「……っ!?」
ナルティーヌははっとした。
目を開けると、ベッドに寝ていた。目の前にはほっとした様子のパスカルがいる。
「よかった、姐さん。気づいたか!」
「ここは……?」
「道場の医務室だ」
目の前にはホッとした様子のパスカルがいた。ナルティーヌはベッドから身を起こす。
「大丈夫か? まだふらふらするか?」
ナルティーヌはぼんやりとしながら頭を押さえた。
自分がなぜここで寝ているのか思い出せないのだ。
「いったい……何があったのですか、ナルは……」
「俺に稽古をつけてくれていたらいきなり気絶したんだ」
「ナルが、気絶……? パスカル殿下の一撃を受けきれなかったってことですの?」
「いや、俺の剣なんかひとっつも入っていない。情けないが、さすが我が師と惚れ惚れする身のこなしだったぞ。ほんとに前触れもなく突然倒れたんだ」
「そうですの……」
なんとなく思い出してきた。
そうだ、自分はパスカルに剣の稽古をつけていたのだ。……覚えているのはそれだけだ。
……いや、違う。
それから……なにかあったような気がする。
ぼんやりとした意識で、ぼんやりとした空間で。
(そうですわ、誰かに会ったような……誰でしたっけ……?)
「ナル姐さん、無理はするな。すぐに回復術師を呼んでくるな」
「え、ええ、ありがとうございます、殿下」
こういう状態は侮らない方がいいことをナルティーヌは知っていた。一見外傷がなくとも脳みそにダメージを負っているかもしれないからだ。
記憶の混濁もみられるし、なんらかの事象が発生している可能性がある。
だが。
「ナル師範代!」
医務室のドアが開き、女の子みたいな可愛い少年が入ってきた。
「お前は……?」
パスカルが警戒する。この少年は先程までいなかったはずだから。……いや、ナルティーヌは知っている。ずっと面倒を見て貰ってきている相手だ……。
「トゥルッセ……」
ナルティーヌは小さく彼の名を口にした。
「トゥルッセ……、トゥルッセ・イティートル。ナルの弟子の一人で、武術の腕がないから主にマネージャーとしてサポートに回ってもらっている人……」
それからナルティーヌの性欲解消もしてくれている。だがそれはトゥルッセも気持ちいいと言ってくれているのでお互い様である。
そして、ナルティーヌは彼のことを特に好きというわけではない。何故なら彼は単なる性欲処理の相手にすぎないから。
……まるでなにかの設定のように、つらつらとそんなことが思い出されていった。
0
お気に入りに追加
939
あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」


婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです


なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる