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第25話 ゼナと謎の美少年
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「ああ、こんにちは、トゥルッセくん」
フレデリクが挨拶を返す。フレデリクはこの下級生のことを知っているようだ。
それにしてもこの下級生、ずいぶん可愛い顔をしている。女の子みたいに可愛いが、男子制服を着ているということは男子生徒だろう。
「どうも、先輩方。うちのナルティーヌが大変お世話になっております」
「?」
ゼナは首を傾げた。
この女の子みたいな可愛らしい少年は、ナルティーヌの関係者のようだが……。もしかしてナルティーヌの家の従者?
そんなふうに思ってフレデリクの顔を見ると、フレデリクは気づいた顔をした。
「ゼナは初めてだったか。彼はトゥルッセ・イティートルくんだ」
「はじめまして、トゥルッセさん。私はイレルフ公爵家のゼナと申します」
「どうも初めまして、ゼナ先輩。お噂はかねがね……ナルティーヌから聞いております」
「ゼナ。彼にはね、うちの愚弟が大変お世話になっているんだよ」
「そんな、お世話になっているのはこちらのほうですよ。まさか王太子弟殿下がうちの流派に入門してくれるなんて……! おかげで入門者が続出してるんです」
ほくほく笑顔の美少年である。
「……?」
「ああ。彼はヴァランティーヌ流武術の門下生で……なんというのかな、ナルティーヌの個人マネージャーといえばいいのかな」
「はい。門下生ではあるものの武術の腕はさっぱりでして。そのぶんナルティーヌ師範代のマネージャーとしてサポートをさせていただいております」
「し、師範代……」
しかもマネージャー付きとは。
(ナルさんて凄い人だったのね)
友達のナルティーヌが遠い存在のように思えてしまうゼナである。
トゥルッセはにっこりと微笑んだ。
「いまもこれを差し入れに来たところなんです。授業が終わったので……これ、特性の薬草水なんですよ」
……手に提げたバスケットからガラスの瓶が覗いていた。あれが薬草水とやらだろう。
「そうだ、先輩方もどうですか? ナル師範代にも上がってもらって、みんなで。すっきりして美味しいですよ。美容にいい効果も入ってるんです」
「まあ、美容にいいのですか」
浮かれた声が出てしまうゼナ。
美容にもいいと言われたら、つい乗り気になってしまうではないか。
「はい。ナル師範代の希望で美容にいい薬草を入れてるんです。お肌がつるつるになりますよ」
「それはぜひ飲んでみたいですわ」
「いや」
と断ったのはフレデリクだった。だが顔はあくまでも笑顔のままである。
「僕たちには大事な公務があるから……、ねっ、ゼナ」
ゼナの肩を抱いて引き寄せるフレデリク。ゼナは頬を染めて俯いた。
(もう、フレデリク様ったら)
「あっ、すみません、お二人ともお忙しかったんですね。ではまた今度お誘いさせてください」
「い、忙しいわけではなくて、その」
「ああ、とても急いでいるんだ。じゃあな、トゥルッセくん。パスカルとナルティーヌによろしく」
「はい、かしこまりました」
ぺこり、と頭を下げる美少年トゥルッセ。
フレデリクはゼナの肩を抱いたままその場を離れた。
「邪魔が入ったな」
ゼナの耳元で囁いたフレデリクの声音には不機嫌さが滲み出ていた。
「まあ、フレデリク様ったらそんなことおっしゃって……。パスカル様がお世話になっている方なのでしょう?」
「パスカルのことは関係ないよ」
ゼナの肩を抱く腕の力が増す。
「僕はただゼナと二人で居たかっただけだ」
「フレデリク様……」
ゼナの顔が真っ赤に染まっていく。フレデリクはゼナの顎に手をかけると自分のほうへ向かせた。
「ゼナ、可愛いゼナ、僕のゼナ、君は僕だけのものだ。君を想う気持ちは他の誰にも負けていない自信がある」
「フレデリク様……」
「だからゼナ、あっちの木陰に行こうか。していない体位があるだろ? 試してみよう」
結局そうなるらしい。
しかし、ゼナの身体が奥からうずくのも確かだ。
身も心もすっかりフレデリクに惚れてしまっているゼナであった。
フレデリクが挨拶を返す。フレデリクはこの下級生のことを知っているようだ。
それにしてもこの下級生、ずいぶん可愛い顔をしている。女の子みたいに可愛いが、男子制服を着ているということは男子生徒だろう。
「どうも、先輩方。うちのナルティーヌが大変お世話になっております」
「?」
ゼナは首を傾げた。
この女の子みたいな可愛らしい少年は、ナルティーヌの関係者のようだが……。もしかしてナルティーヌの家の従者?
そんなふうに思ってフレデリクの顔を見ると、フレデリクは気づいた顔をした。
「ゼナは初めてだったか。彼はトゥルッセ・イティートルくんだ」
「はじめまして、トゥルッセさん。私はイレルフ公爵家のゼナと申します」
「どうも初めまして、ゼナ先輩。お噂はかねがね……ナルティーヌから聞いております」
「ゼナ。彼にはね、うちの愚弟が大変お世話になっているんだよ」
「そんな、お世話になっているのはこちらのほうですよ。まさか王太子弟殿下がうちの流派に入門してくれるなんて……! おかげで入門者が続出してるんです」
ほくほく笑顔の美少年である。
「……?」
「ああ。彼はヴァランティーヌ流武術の門下生で……なんというのかな、ナルティーヌの個人マネージャーといえばいいのかな」
「はい。門下生ではあるものの武術の腕はさっぱりでして。そのぶんナルティーヌ師範代のマネージャーとしてサポートをさせていただいております」
「し、師範代……」
しかもマネージャー付きとは。
(ナルさんて凄い人だったのね)
友達のナルティーヌが遠い存在のように思えてしまうゼナである。
トゥルッセはにっこりと微笑んだ。
「いまもこれを差し入れに来たところなんです。授業が終わったので……これ、特性の薬草水なんですよ」
……手に提げたバスケットからガラスの瓶が覗いていた。あれが薬草水とやらだろう。
「そうだ、先輩方もどうですか? ナル師範代にも上がってもらって、みんなで。すっきりして美味しいですよ。美容にいい効果も入ってるんです」
「まあ、美容にいいのですか」
浮かれた声が出てしまうゼナ。
美容にもいいと言われたら、つい乗り気になってしまうではないか。
「はい。ナル師範代の希望で美容にいい薬草を入れてるんです。お肌がつるつるになりますよ」
「それはぜひ飲んでみたいですわ」
「いや」
と断ったのはフレデリクだった。だが顔はあくまでも笑顔のままである。
「僕たちには大事な公務があるから……、ねっ、ゼナ」
ゼナの肩を抱いて引き寄せるフレデリク。ゼナは頬を染めて俯いた。
(もう、フレデリク様ったら)
「あっ、すみません、お二人ともお忙しかったんですね。ではまた今度お誘いさせてください」
「い、忙しいわけではなくて、その」
「ああ、とても急いでいるんだ。じゃあな、トゥルッセくん。パスカルとナルティーヌによろしく」
「はい、かしこまりました」
ぺこり、と頭を下げる美少年トゥルッセ。
フレデリクはゼナの肩を抱いたままその場を離れた。
「邪魔が入ったな」
ゼナの耳元で囁いたフレデリクの声音には不機嫌さが滲み出ていた。
「まあ、フレデリク様ったらそんなことおっしゃって……。パスカル様がお世話になっている方なのでしょう?」
「パスカルのことは関係ないよ」
ゼナの肩を抱く腕の力が増す。
「僕はただゼナと二人で居たかっただけだ」
「フレデリク様……」
ゼナの顔が真っ赤に染まっていく。フレデリクはゼナの顎に手をかけると自分のほうへ向かせた。
「ゼナ、可愛いゼナ、僕のゼナ、君は僕だけのものだ。君を想う気持ちは他の誰にも負けていない自信がある」
「フレデリク様……」
「だからゼナ、あっちの木陰に行こうか。していない体位があるだろ? 試してみよう」
結局そうなるらしい。
しかし、ゼナの身体が奥からうずくのも確かだ。
身も心もすっかりフレデリクに惚れてしまっているゼナであった。
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