3 / 6
3.
しおりを挟む
それからというもの、毎月アラミスは離宮を訪れるようになった。最初の頃こそ、アラミスの方がタジタジで。
慣れてくるとジョセフィーヌのことを苛めるようになっていく。その度に
「アラミス様なんて、大っ嫌い!もう来ないで!」
ジョセフィーヌがそっぽを向いてしまうと焦ったような顔をして、一生懸命取り繕っている姿は、それなりに可愛かった。
初回、カエルに失神したアラミスは、こっぴどくケントホームズ公爵に叱られたらしい。
「たかがカエルぐらいで失神するとは、それでも男か!?そんなことでは、良い公爵にはなれんぞ。それからくれぐれもジョセフィーヌ嬢の機嫌を損ねるようなことは致すな」
でもだんだん成長するにつれて、扇の要と同じように、もう幼い頃のような関係ではいられなくなり、アラミスの足は遠のいてしまった。
ジョセフィーヌは、それをこれ幸いと思っているようで、変わらず、野原を駆けまわって遊んでいる。
そんなジョセフィーヌのことを母は心配そうな顔で見ている。あまりにも、野生児過ぎて、レディとしての部分が欠ける。
黙って佇めば、しおらしい王女にしか見えないが、ひとたび口を開けば、扇で口元を隠すことなく。大口を開けてガハハと笑う娘に心配は尽きない。
幼いころから、ミニスカートで過ごしてきたジョセフィーヌは、長い裾のドレスでは歩きにくいらしく、モタついているし、ハイヒールを履かそうにも、とても無理で断念せざるを得ない。
このまま、大人になっても大丈夫だろうか?母が父に相談し、隣国のミッション系スクールに留学させることにした。
まだ12歳だが、行儀見習いのような形で入学を認めてくれている。3年間、ベッタリと行く必要はない。レディとしての所作が身に着けば、帰国して、こちらの学園に入ればいいのだから。
そう説得されたジョセフィーヌは、喜んで隣国ベルサイユへ留学する。
この国では、アラミス以外のお友達はいない。寂しかったので、新しいお友達を作りに隣国へ行きたいと思った。
動機は違えど、留学する気になってくれたことは喜ばしい。
ベルサイユ学園は、紳士淑女を養成する学園であった。今まで裸足で駆けずり回っていたジョセフィーヌに務まるかどうかはわからないが、とにかく頑張る。
入学式の時に、隣に座った少女と仲良しになる。少女の名前は、ロザリーヌ。話を聞くと、ベルサイユの王女らしい。
「わたくしも、ザルツブルグで王女をしております。ジョセフィーヌ・ザルツブルグにございます」
良かった。挨拶だけは完ぺきに?できた。
「えー!わたくし、自分以外の王女殿下を初めて見たわ。これから仲良くしてくださいね」
「こちらこそ」
「ところで、ジョセフィーヌちゃんは、寮暮らし?」
「ええ。そういうことになりますわね」
「たまに遊びに行ってもいいかしら?」
「いつでも、どうぞ」
「本当っ!ありがとう。いつもお城にいると、窮屈で」
「わたくしは、ザルツブルグでは、3歳までお城暮らしでしたけど、それ以降は離宮で暮らしておりましたわ」
「えーっ。いいなぁ」
「両親からのびのび育ってほしいと言われて、教育方針だったのでしょうけど、お陰でこんな風になってしまいましたわ」
「こんな風って?ジョセフィーヌ様って美人だし、お上品で大人の女性って感じで羨ましいわ」
ヤバイ。ちょっと作り過ぎたかな?でも、第1印象って大事よね。ザルツブルグでは野生児とか、サルと呼ばれていたことは内緒にしておこう。
それからロザリーヌちゃんのお城のお茶会参加やお部屋にも遊びに行き、すっかり打ち解ける。
ある日の放課後、マナー本を探しに図書館へ行くと、すごいイケメン男性が先客としていた。
一礼して、席に着き、読み始めるが、あまりのイケメンぶりが気になって、ついチラチラ見てしまう。
その視線に気づいたのか、イケメンもジョセフィーヌの方をチラ見してくる。
慣れてくるとジョセフィーヌのことを苛めるようになっていく。その度に
「アラミス様なんて、大っ嫌い!もう来ないで!」
ジョセフィーヌがそっぽを向いてしまうと焦ったような顔をして、一生懸命取り繕っている姿は、それなりに可愛かった。
初回、カエルに失神したアラミスは、こっぴどくケントホームズ公爵に叱られたらしい。
「たかがカエルぐらいで失神するとは、それでも男か!?そんなことでは、良い公爵にはなれんぞ。それからくれぐれもジョセフィーヌ嬢の機嫌を損ねるようなことは致すな」
でもだんだん成長するにつれて、扇の要と同じように、もう幼い頃のような関係ではいられなくなり、アラミスの足は遠のいてしまった。
ジョセフィーヌは、それをこれ幸いと思っているようで、変わらず、野原を駆けまわって遊んでいる。
そんなジョセフィーヌのことを母は心配そうな顔で見ている。あまりにも、野生児過ぎて、レディとしての部分が欠ける。
黙って佇めば、しおらしい王女にしか見えないが、ひとたび口を開けば、扇で口元を隠すことなく。大口を開けてガハハと笑う娘に心配は尽きない。
幼いころから、ミニスカートで過ごしてきたジョセフィーヌは、長い裾のドレスでは歩きにくいらしく、モタついているし、ハイヒールを履かそうにも、とても無理で断念せざるを得ない。
このまま、大人になっても大丈夫だろうか?母が父に相談し、隣国のミッション系スクールに留学させることにした。
まだ12歳だが、行儀見習いのような形で入学を認めてくれている。3年間、ベッタリと行く必要はない。レディとしての所作が身に着けば、帰国して、こちらの学園に入ればいいのだから。
そう説得されたジョセフィーヌは、喜んで隣国ベルサイユへ留学する。
この国では、アラミス以外のお友達はいない。寂しかったので、新しいお友達を作りに隣国へ行きたいと思った。
動機は違えど、留学する気になってくれたことは喜ばしい。
ベルサイユ学園は、紳士淑女を養成する学園であった。今まで裸足で駆けずり回っていたジョセフィーヌに務まるかどうかはわからないが、とにかく頑張る。
入学式の時に、隣に座った少女と仲良しになる。少女の名前は、ロザリーヌ。話を聞くと、ベルサイユの王女らしい。
「わたくしも、ザルツブルグで王女をしております。ジョセフィーヌ・ザルツブルグにございます」
良かった。挨拶だけは完ぺきに?できた。
「えー!わたくし、自分以外の王女殿下を初めて見たわ。これから仲良くしてくださいね」
「こちらこそ」
「ところで、ジョセフィーヌちゃんは、寮暮らし?」
「ええ。そういうことになりますわね」
「たまに遊びに行ってもいいかしら?」
「いつでも、どうぞ」
「本当っ!ありがとう。いつもお城にいると、窮屈で」
「わたくしは、ザルツブルグでは、3歳までお城暮らしでしたけど、それ以降は離宮で暮らしておりましたわ」
「えーっ。いいなぁ」
「両親からのびのび育ってほしいと言われて、教育方針だったのでしょうけど、お陰でこんな風になってしまいましたわ」
「こんな風って?ジョセフィーヌ様って美人だし、お上品で大人の女性って感じで羨ましいわ」
ヤバイ。ちょっと作り過ぎたかな?でも、第1印象って大事よね。ザルツブルグでは野生児とか、サルと呼ばれていたことは内緒にしておこう。
それからロザリーヌちゃんのお城のお茶会参加やお部屋にも遊びに行き、すっかり打ち解ける。
ある日の放課後、マナー本を探しに図書館へ行くと、すごいイケメン男性が先客としていた。
一礼して、席に着き、読み始めるが、あまりのイケメンぶりが気になって、ついチラチラ見てしまう。
その視線に気づいたのか、イケメンもジョセフィーヌの方をチラ見してくる。
124
お気に入りに追加
176
あなたにおすすめの小説
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
私達、政略結婚ですから。
黎
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。
どうして別れるのかと聞かれても。お気の毒な旦那さま、まさかとは思いますが、あなたのようなクズが女性に愛されると信じていらっしゃるのですか?
石河 翠
恋愛
主人公のモニカは、既婚者にばかり声をかけるはしたない女性として有名だ。愛人稼業をしているだとか、天然の毒婦だとか、聞こえてくるのは下品な噂ばかり。社交界での評判も地に落ちている。
ある日モニカは、溺愛のあまり茶会や夜会に妻を一切参加させないことで有名な愛妻家の男性に声をかける。おしどり夫婦の愛の巣に押しかけたモニカは、そこで虐げられている女性を発見する。
彼女が愛妻家として評判の男性の奥方だと気がついたモニカは、彼女を毎日お茶に誘うようになり……。
八方塞がりな状況で抵抗する力を失っていた孤独なヒロインと、彼女に手を差し伸べ広い世界に連れ出したしたたかな年下ヒーローのお話。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID24694748)をお借りしています。
置き去りにされた聖女様
青の雀
恋愛
置き去り作品第5弾
孤児のミカエルは、教会に下男として雇われているうちに、子供のいない公爵夫妻に引き取られてしまう
公爵がミカエルの美しい姿に心を奪われ、ミカエルなら良き婿殿を迎えることができるかもしれないという一縷の望みを託したからだ
ある日、お屋敷見物をしているとき、公爵夫人と庭師が乳くりあっているところに偶然、通りがかってしまう
ミカエルは、二人に気づかなかったが、二人は違う!見られたと勘違いしてしまい、ミカエルを連れ去り、どこかの廃屋に置き去りにする
最近、体調が悪くて、インフルの予防注射もまだ予約だけで……
それで昔、書いた作品を手直しして、短編を書いています。
あなたの1番になりたかった
トモ
恋愛
姉の幼馴染のサムが大好きな、ルナは、小さい頃から、いつも後を着いて行った。
姉とサムは、ルナの5歳年上。
姉のメイジェーンは相手にはしてくれなかったけど、サムはいつも優しく頭を撫でてくれた。
その手がとても心地よくて、大好きだった。
15歳になったルナは、まだサムが好き。
気持ちを伝えると気合いを入れ、いざ告白しにいくとそこには…
本当に私がいなくなって今どんなお気持ちですか、元旦那様?
新野乃花(大舟)
恋愛
「お前を捨てたところで、お前よりも上の女性と僕はいつでも婚約できる」そう豪語するノークはその自信のままにアルシアとの婚約関係を破棄し、彼女に対する当てつけのように位の高い貴族令嬢との婚約を狙いにかかる。…しかし、その行動はかえってノークの存在価値を大きく落とし、アリシアから鼻で笑われる結末に向かっていくこととなるのだった…。
妹とともに婚約者に出て行けと言ったものの、本当に出て行かれるとは思っていなかった旦那様
新野乃花(大舟)
恋愛
フリード伯爵は溺愛する自身の妹スフィアと共謀する形で、婚約者であるセレスの事を追放することを決めた。ただその理由は、セレスが婚約破棄を素直に受け入れることはないであろうと油断していたためだった。しかしセレスは二人の予想を裏切り、婚約破棄を受け入れるそぶりを見せる。予想外の行動をとられたことで焦りの色を隠せない二人は、セレスを呼び戻すべく様々な手段を講じるのであったが…。
【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます
もふきゅな
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。
エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。
悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる