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あの教会は、バーバラの聖女魔法によりサン・ピエトロ教会として生まれ変わり、宿泊施設兼病院として機能するようになったことを見届けて、再び馬車で移動する。
「それにしてもバービーをこの視察旅行へ連れてきたことは正解だったな。みんな笑顔になって、喜んで幸せになってくれる。これも聖女様効果ってやつかな?」
言われてみればその通り。
聖女様だって知らなかった時でも、この不思議な能力を誰も迷惑がっていない。
「それに何よりありがたいのは、新しい産業を生み出してくれたこと。サマリー領では入浴前の菓子に、入浴中のドリンク、湯上りのビール。それにあのユカタ、ドテラを作る衣装の工房。この前の教会では、病院と宿泊施設。バービーが教えてくれたことにより、それは産業として民が潤う。民が潤えば、領主が潤い、やがて王国も潤うというものだ。」
「そんな……大げさな。」
「いや大げさなことではない。君は名実ともに王妃となったんだよ。」
へ?それって契約更新するって、言われてない?いやいや。そんなはずはない!だったらなぜ金貨10万枚もくれるの?
あれは、契約満期前にわたくしを自由にしたいからではないの?愛されていないはず。お金で買われたのだからと黙ってカラダを開いただけ。元より愛など存在しない……はず。
なぜ?なぜ?頭の中の思考回路を必死に繋ぐ。やっぱり答えは出ない。もういいや。なんでも。時が満ちれば、おのずと答えが出るはずなのだから。
「ククク。何度見てもバービーの百面相は面白いな。案ずるな。バービーは立派な王妃だ。」
え?百面相?ウソ!?
「愛しているよ。バービーこっちへ座れ。
「無理です。」
そのまま馬車は進む。
陛下が目を閉じられたので、バーバラも目を閉じうつらうつらしている。急に馬車の窓から光が差し込んできて、目を開けると海が広がっている。
「わぁ!海!」
その声で陛下も起きられたみたい。
「もうすぐカンダールに着く。」
カンダールと言えば、子爵様で大きな商会を経営していらっしゃるところ。
やがて馬車は立派な建物の前に泊る。
商会主の子爵だろうか、揉み手ニコニコ愛想が良い男がいる。
「ようこそおいでくださいました陛下。それにお美しい聖女様でいらっしゃる妃殿下も、お待ち申し上げておりました。」
げ!もうここまでバーバラが聖女であることがバレている。
「出迎え大儀である。」
どうやら商会の中が今夜のお宿なのかも?また、陛下がお預けになるって機嫌悪くなってしまうけど、わたくしのせいではありませんからねっ!
商会の中にある客間に通される。
しばらくお茶を飲んでから、陛下はこの領内の視察へ行かれる。今日はお留守番の予定だったんだけど、サン・ピエトロ教会の噂で、バーバラが聖女様と言うことになったので、聖女様もぜひご一緒に。と言う話になる。
めんどくさい。
聖女だってわかった途端にこの待遇、だからあれほど水晶玉判定はイヤだって言ったのに。
別に不思議な能力の正体なんて、どうでもよかったのよ。ただ便利だと言うだけだったんだから。
さっさと行って、さっさと終わらせよう。
勢い込んで出たものの、聖女の仕事は祝福を与えるだけでなくけが人病人の治療、魔物退治と多岐にわたっていることがわかる。
そんなのできっこないわよ。だってやったことがないんだもん。誰も教えてくれなかったから。
とにかく祈ればいいなら、祈るけど……?
あとでインチキなんて、言わないでよ。内心ブツブツ文句を言いながら祈る。本当にこんなので効果があるのかどうかもわからない。
とにかくすべての予定をこなし、商会へ戻る。お部屋で侍女が淹れてくれたお茶を飲んでいたら、どうも誰かが走り回っているような音が聞こえる。
「何かございましたの?」
侍女が護衛に聞き、護衛が商会主に聞く。
「いやぁ、王妃様の御寛ぎのところ恐れ入ります。本日国王ご夫妻歓迎の宴に出す魚を獲りに漁を出たものがいまだ戻らず、どうしたものかと案じております。それに今夜は嵐になるという占いが出ておりまして、既に満潮を迎えております。」
「バーバラ今の話を聞いて何かできることはあるか?」
「ないこともないですわね。」
「なんだ。言ってみろ。」
「今日、聖女の仕事をした時から気になっていたのですが、港に灯台がなかったこと。」
「灯台?それはなんだ?どういうものか説明してくれ。」
前世は何処の港にもあった灯台の役目をかいつまんで説明する。
「我が国にはそう言った海の道しるべはないな。よし早速作ろう。手配させるが、今日すぐにはできないかな?」
「何かで代用することは可能です。わたくしを小高い丘の上に案内してください。」
「よし、俺も行こう。バービーに何かあれば困るからな。」
それから商会関係者と小高い丘へ行き、そこにこの間の古びた教会を出す。それから教会の前でやぐらを組んで火を焚いてもらう。ちょうどキャンプファイヤーのようなものを想像すると出てきたので、それで火を焚く。
教会の金を鳴らすことで気づいてくれるかもしれない。
それだけでは不十分なので、バーバラは塔の階段を駆け上がる。
この時代は電気がまだないから、サーチライトを出しても?無駄と思ったけどキャンピングカーなら発電できる。
だからあの時、出さなかったキャンピングカーを今、出す。ヘッドライトを灯台のライトに見立てる作戦。
海に正面をヘッドライト、少し右側にもサーチライト、左側にもサーチライトを設置する。くるくる回るカバーがないので、つけっぱなし光っぱなしにした。
よくよく考えれば、灯台そのものを買うことさえできたかもしれない。まぁ、でも教会が余っていたので、とっさにそこまで考える余裕はなかったのだ。
「それにしてもバービーをこの視察旅行へ連れてきたことは正解だったな。みんな笑顔になって、喜んで幸せになってくれる。これも聖女様効果ってやつかな?」
言われてみればその通り。
聖女様だって知らなかった時でも、この不思議な能力を誰も迷惑がっていない。
「それに何よりありがたいのは、新しい産業を生み出してくれたこと。サマリー領では入浴前の菓子に、入浴中のドリンク、湯上りのビール。それにあのユカタ、ドテラを作る衣装の工房。この前の教会では、病院と宿泊施設。バービーが教えてくれたことにより、それは産業として民が潤う。民が潤えば、領主が潤い、やがて王国も潤うというものだ。」
「そんな……大げさな。」
「いや大げさなことではない。君は名実ともに王妃となったんだよ。」
へ?それって契約更新するって、言われてない?いやいや。そんなはずはない!だったらなぜ金貨10万枚もくれるの?
あれは、契約満期前にわたくしを自由にしたいからではないの?愛されていないはず。お金で買われたのだからと黙ってカラダを開いただけ。元より愛など存在しない……はず。
なぜ?なぜ?頭の中の思考回路を必死に繋ぐ。やっぱり答えは出ない。もういいや。なんでも。時が満ちれば、おのずと答えが出るはずなのだから。
「ククク。何度見てもバービーの百面相は面白いな。案ずるな。バービーは立派な王妃だ。」
え?百面相?ウソ!?
「愛しているよ。バービーこっちへ座れ。
「無理です。」
そのまま馬車は進む。
陛下が目を閉じられたので、バーバラも目を閉じうつらうつらしている。急に馬車の窓から光が差し込んできて、目を開けると海が広がっている。
「わぁ!海!」
その声で陛下も起きられたみたい。
「もうすぐカンダールに着く。」
カンダールと言えば、子爵様で大きな商会を経営していらっしゃるところ。
やがて馬車は立派な建物の前に泊る。
商会主の子爵だろうか、揉み手ニコニコ愛想が良い男がいる。
「ようこそおいでくださいました陛下。それにお美しい聖女様でいらっしゃる妃殿下も、お待ち申し上げておりました。」
げ!もうここまでバーバラが聖女であることがバレている。
「出迎え大儀である。」
どうやら商会の中が今夜のお宿なのかも?また、陛下がお預けになるって機嫌悪くなってしまうけど、わたくしのせいではありませんからねっ!
商会の中にある客間に通される。
しばらくお茶を飲んでから、陛下はこの領内の視察へ行かれる。今日はお留守番の予定だったんだけど、サン・ピエトロ教会の噂で、バーバラが聖女様と言うことになったので、聖女様もぜひご一緒に。と言う話になる。
めんどくさい。
聖女だってわかった途端にこの待遇、だからあれほど水晶玉判定はイヤだって言ったのに。
別に不思議な能力の正体なんて、どうでもよかったのよ。ただ便利だと言うだけだったんだから。
さっさと行って、さっさと終わらせよう。
勢い込んで出たものの、聖女の仕事は祝福を与えるだけでなくけが人病人の治療、魔物退治と多岐にわたっていることがわかる。
そんなのできっこないわよ。だってやったことがないんだもん。誰も教えてくれなかったから。
とにかく祈ればいいなら、祈るけど……?
あとでインチキなんて、言わないでよ。内心ブツブツ文句を言いながら祈る。本当にこんなので効果があるのかどうかもわからない。
とにかくすべての予定をこなし、商会へ戻る。お部屋で侍女が淹れてくれたお茶を飲んでいたら、どうも誰かが走り回っているような音が聞こえる。
「何かございましたの?」
侍女が護衛に聞き、護衛が商会主に聞く。
「いやぁ、王妃様の御寛ぎのところ恐れ入ります。本日国王ご夫妻歓迎の宴に出す魚を獲りに漁を出たものがいまだ戻らず、どうしたものかと案じております。それに今夜は嵐になるという占いが出ておりまして、既に満潮を迎えております。」
「バーバラ今の話を聞いて何かできることはあるか?」
「ないこともないですわね。」
「なんだ。言ってみろ。」
「今日、聖女の仕事をした時から気になっていたのですが、港に灯台がなかったこと。」
「灯台?それはなんだ?どういうものか説明してくれ。」
前世は何処の港にもあった灯台の役目をかいつまんで説明する。
「我が国にはそう言った海の道しるべはないな。よし早速作ろう。手配させるが、今日すぐにはできないかな?」
「何かで代用することは可能です。わたくしを小高い丘の上に案内してください。」
「よし、俺も行こう。バービーに何かあれば困るからな。」
それから商会関係者と小高い丘へ行き、そこにこの間の古びた教会を出す。それから教会の前でやぐらを組んで火を焚いてもらう。ちょうどキャンプファイヤーのようなものを想像すると出てきたので、それで火を焚く。
教会の金を鳴らすことで気づいてくれるかもしれない。
それだけでは不十分なので、バーバラは塔の階段を駆け上がる。
この時代は電気がまだないから、サーチライトを出しても?無駄と思ったけどキャンピングカーなら発電できる。
だからあの時、出さなかったキャンピングカーを今、出す。ヘッドライトを灯台のライトに見立てる作戦。
海に正面をヘッドライト、少し右側にもサーチライト、左側にもサーチライトを設置する。くるくる回るカバーがないので、つけっぱなし光っぱなしにした。
よくよく考えれば、灯台そのものを買うことさえできたかもしれない。まぁ、でも教会が余っていたので、とっさにそこまで考える余裕はなかったのだ。
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