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 俺ことバトラー・アルキメデスが契約期間を2年と定めたことには訳があった。

 1年では懐妊できないかもしれないが、2年もあれば、毎晩すれば、いずれ時間の問題で懐妊すると思っていたのだが……。

 それにバーバラは覚えていないだろうが、あの夜、バーバラは俺に「責任を取れ」と言ったのに、結婚以来、ずっと初夜を拒み続けている。

 実際、面と向かって断られていない分だけまだマシなのだろうか?

 白い結婚狙いか……?白い結婚で俺と離婚して、金貨10万枚を手に入れ、その後はもっと自由な人生を送るというわけか?

 金のことは、やはり言わなければよかったのかもしれない。でもあの時は、そうでも言わないと結婚してもらえなかったから。

 でも閨事以外の王妃としての仕事は完璧にこなす。

 だから文句のつけようがない。はた目からは俺を立て、仲睦まじい姿を演じてくれる。

 なぜこんなことになってしまったのだろう。初夜の時、妻の部屋へ行こうとしたら中から施錠されていた。

 結婚式の夜から、一度も妻の部屋へ行けずにいる。

 後宮へ行くといつも必ず、従姉弟の王女が出迎え……俺はあいつの顔を見るだけで萎えてしまう。

 それに幼い時に会った従姉弟とは面影が全然違うのだ。似ても似つかないと言うのは、このこと。髪の色も目の色が全然違う。

 幼い時の記憶では、紺色の髪に紺色の目だったはずなのに、今、目の前にいる女は叔父と同じブラウン髪とブラウン眼だ。

 だからこの女を俺は、ニセモノだと疑っている。

 叔父は戦争で負けて、自分の首を差し出す代わりに娘のニセモノを仕立て上げ、この女を妻にするよう求めてきたのだが、妻は却下、それならば人質か性奴隷にでも、といわれ渋々承諾したのだ。

 もし、ホンモノの従姉弟だったとしても、俺には近親相姦の趣味はない。コイツが来たとき、家臣に下賜するつもりでいたが、そうなると後宮の維持がままならず仕方なく女官として後宮に住まわせているだけ。

 それなのに、後宮へ行けば必ずこの女が出張ってくる。鬱陶しい。俺は妻を抱きたいだけなのに。妻の部屋へ案内されず、いつもお茶を飲み帰るだけ。

 一度、強く妻への面会をしたけども、それも無視と言うか?

 「王妃殿下は風邪で臥せっておられます。」

 昼間、公務で出会ったときは元気だったのに……。つまり閨は俺と共にしたくないという意思表示だと思い込んでいた。

 もう残すところ、後3か月しかないではないか!

 このまま何もせず、ただ金貨100000枚支払って、終わりにするつもりなどない!

 金貨は全額耳をそろえて支払うが、その前に今度の視察旅行に王妃の同行を命令する。
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