28 / 32
捕虜
しおりを挟む
王宮から婚約者の呼出しがあり、急ぎ行ってみると
「公爵令嬢アグネス・スコッティ、貴様との婚約は今をもって破棄させてもらうこととする。」
王太子殿下のロバート・グリーンベルト様が高らかに宣言されたのである。
「それは、なぜでございますか?理由をお聞かせいただきたいのですが。」
「それはだな、今朝がた、聖女様を召喚することに成功したのである。」
「それは重畳でございます。それでは、わたくしはこれにて。」
「いやいや、待て。まだ話は終わっておらん。もしも聖女様との間に子がなさぬ場合、側妃として召し上げたいと思っているが、どうだ?」
「お断りさせていただきます。」
「なぜだ?そなたが子を産めば、スコッティ家は安泰になるのではないか?」
「それでは聖女様が可愛そうです。異世界から召喚されてきて心細い思いをされているのではありませんか?ロバート様の側に別の女性の影を感じられたら、さぞかしお嘆きになることでしょう。ロバート様が聖女様をいつくしみ、そのあたりを支えて差し上げなくて、誰が聖女様の悲しみを和らげることなどできましょうか?」
「うむ、それもそうだな。では、アグネスとも今日でお別れと言うことになるな。今まで、妃教育をしてくれて大儀であった。」
ロバートが側妃云々というのには、理由があったのである。召喚した聖女は、ガリガリで女性としての魅力は皆無であったのだ。ツルペタで髪はぼさぼさで短く、目は閉じているのか開いているのかわからないほど細く、鼻は低く、色も少し浅黒い女だったのだ。肌艶も悪い。
アグネスは妃教育を修了しているので、王妃の仕事は、アグネスに押し付け聖女を太らせ、国のため、聖女の仕事をしてもらうことだけを念頭に於いての魂胆であったのだ。
アグネスは、急ぎ公爵邸に戻り、ロバート王太子殿下と婚約破棄になったことを言い、この国を捨てることを告げる。いつまでもこの国にいると側妃として召し上げられたらかなわない。
アグネスは、最初、自分だけで国を捨てる覚悟であったが、父の公爵に言うと、家族全員で出たほうがいいとの結論に至ったのである。なぜかというと聖女様を召喚すると、王族に対するリスクが大きく、うまく聖女様が国のために働いてくださればいいが、怒らせたりすると、国に天変地異など、災いが降りかかるそうである。
ましてロバートは、最初からアグネスを側妃として召し上げようなどと考えているぐらいだから、怒らせることは目に見えている。
早急に国を捨てる準備を進めていく。領地の使用人にも魔法鳥を飛ばして、連絡を取る。
スコッティ家では、使用人も家族同然なのである。用意ができた人から国境を目指すことにしたのである。集合場所は、国境の森、聖女様がいらっしゃる間は、国境の森は安全である。
アグネスも自身の出国を進めて、用意ができた人とともに国を捨て、国境の森に向かったのである。
国境の森では、すでに何十人もの使用人が先に来ていたのである。ほとんどが領地の使用人とその家族で、アグネスは労いの言葉をかけて回ると
「お嬢様こそ、大変でございましたわね。」
逆に慰められたのである。
公爵家の使用人と家族全員が国境の森に集合できたのは、もう夜中になっていた。とりあえず、今晩は、ここで一泊してから、明日朝になってから、森を抜けようと考えていたが、一刻も早く森を抜けたほうが良いとの意見があり、深夜ランタンを灯して、森を進むことになったのである。
聞くところによると、召喚された聖女様は90歳ぐらいの高齢女性であったことがわかったのである。異世界ニッポンの老人ホームから呼ばれたらしい。気の毒。
それでは、ロバート殿下との間に子を成すことなど不可能である。召喚した聖女様をもしもすぐに死なすことがあれば、たちまち天罰が当たるというもので、どちらにしても早い目に国境の森を抜けることができて良かったと言えよう。
朝陽があたりを照らすころには、隣国ネイヴィーランドの国境警備兵のところまで来ていたのである。
グリーンベルト国からの脱出してきたことを告げ、匿われることになったのである。
グリーンベルト国で聖女を召喚したが、王太子の婚約を破棄され、代わりに側妃として召し上げられることを嫌がり、逃げてきたと正直に話したことにより、匿われることになる。王都まで護衛付きで、匿ってくださるらしいですが、これって捕虜の扱い?
ま、いいけど。
王都に到着後、あれやこれやと聖女様の話を聞かれ、知っていることをすべて話したら、無事、解放されて、王都の一軒家が貸し与えられることになったのである。
グリーンベルト国の公爵家がそのまま脱出してきたことから、国王陛下が一度、謁見してくださることになり、父とアグネスは、謁見するため正装に着替え、王城に行くことになる。
そこで、王太子殿下チャールズ様のお目に留まり、晴れて婚約することになりました。
結婚式の打ち合わせのため、大聖堂へ行くと、大聖堂に置かれてある水晶玉がやたら反応したので、手をかざしてみたところ、アグネスが聖女として覚醒した瞬間でした。
グリーンベルト国は、もともとロバート王太子の婚約者だったのだから、聖女として覚醒した今、戻ってくるように促されるも、ネイヴィーランド、とりわけチャールズ様が承知なさいません。
アグネス自身も戻る気がないため、チャールズ様とそのまま結婚式を挙げ、幸せになります。
「公爵令嬢アグネス・スコッティ、貴様との婚約は今をもって破棄させてもらうこととする。」
王太子殿下のロバート・グリーンベルト様が高らかに宣言されたのである。
「それは、なぜでございますか?理由をお聞かせいただきたいのですが。」
「それはだな、今朝がた、聖女様を召喚することに成功したのである。」
「それは重畳でございます。それでは、わたくしはこれにて。」
「いやいや、待て。まだ話は終わっておらん。もしも聖女様との間に子がなさぬ場合、側妃として召し上げたいと思っているが、どうだ?」
「お断りさせていただきます。」
「なぜだ?そなたが子を産めば、スコッティ家は安泰になるのではないか?」
「それでは聖女様が可愛そうです。異世界から召喚されてきて心細い思いをされているのではありませんか?ロバート様の側に別の女性の影を感じられたら、さぞかしお嘆きになることでしょう。ロバート様が聖女様をいつくしみ、そのあたりを支えて差し上げなくて、誰が聖女様の悲しみを和らげることなどできましょうか?」
「うむ、それもそうだな。では、アグネスとも今日でお別れと言うことになるな。今まで、妃教育をしてくれて大儀であった。」
ロバートが側妃云々というのには、理由があったのである。召喚した聖女は、ガリガリで女性としての魅力は皆無であったのだ。ツルペタで髪はぼさぼさで短く、目は閉じているのか開いているのかわからないほど細く、鼻は低く、色も少し浅黒い女だったのだ。肌艶も悪い。
アグネスは妃教育を修了しているので、王妃の仕事は、アグネスに押し付け聖女を太らせ、国のため、聖女の仕事をしてもらうことだけを念頭に於いての魂胆であったのだ。
アグネスは、急ぎ公爵邸に戻り、ロバート王太子殿下と婚約破棄になったことを言い、この国を捨てることを告げる。いつまでもこの国にいると側妃として召し上げられたらかなわない。
アグネスは、最初、自分だけで国を捨てる覚悟であったが、父の公爵に言うと、家族全員で出たほうがいいとの結論に至ったのである。なぜかというと聖女様を召喚すると、王族に対するリスクが大きく、うまく聖女様が国のために働いてくださればいいが、怒らせたりすると、国に天変地異など、災いが降りかかるそうである。
ましてロバートは、最初からアグネスを側妃として召し上げようなどと考えているぐらいだから、怒らせることは目に見えている。
早急に国を捨てる準備を進めていく。領地の使用人にも魔法鳥を飛ばして、連絡を取る。
スコッティ家では、使用人も家族同然なのである。用意ができた人から国境を目指すことにしたのである。集合場所は、国境の森、聖女様がいらっしゃる間は、国境の森は安全である。
アグネスも自身の出国を進めて、用意ができた人とともに国を捨て、国境の森に向かったのである。
国境の森では、すでに何十人もの使用人が先に来ていたのである。ほとんどが領地の使用人とその家族で、アグネスは労いの言葉をかけて回ると
「お嬢様こそ、大変でございましたわね。」
逆に慰められたのである。
公爵家の使用人と家族全員が国境の森に集合できたのは、もう夜中になっていた。とりあえず、今晩は、ここで一泊してから、明日朝になってから、森を抜けようと考えていたが、一刻も早く森を抜けたほうが良いとの意見があり、深夜ランタンを灯して、森を進むことになったのである。
聞くところによると、召喚された聖女様は90歳ぐらいの高齢女性であったことがわかったのである。異世界ニッポンの老人ホームから呼ばれたらしい。気の毒。
それでは、ロバート殿下との間に子を成すことなど不可能である。召喚した聖女様をもしもすぐに死なすことがあれば、たちまち天罰が当たるというもので、どちらにしても早い目に国境の森を抜けることができて良かったと言えよう。
朝陽があたりを照らすころには、隣国ネイヴィーランドの国境警備兵のところまで来ていたのである。
グリーンベルト国からの脱出してきたことを告げ、匿われることになったのである。
グリーンベルト国で聖女を召喚したが、王太子の婚約を破棄され、代わりに側妃として召し上げられることを嫌がり、逃げてきたと正直に話したことにより、匿われることになる。王都まで護衛付きで、匿ってくださるらしいですが、これって捕虜の扱い?
ま、いいけど。
王都に到着後、あれやこれやと聖女様の話を聞かれ、知っていることをすべて話したら、無事、解放されて、王都の一軒家が貸し与えられることになったのである。
グリーンベルト国の公爵家がそのまま脱出してきたことから、国王陛下が一度、謁見してくださることになり、父とアグネスは、謁見するため正装に着替え、王城に行くことになる。
そこで、王太子殿下チャールズ様のお目に留まり、晴れて婚約することになりました。
結婚式の打ち合わせのため、大聖堂へ行くと、大聖堂に置かれてある水晶玉がやたら反応したので、手をかざしてみたところ、アグネスが聖女として覚醒した瞬間でした。
グリーンベルト国は、もともとロバート王太子の婚約者だったのだから、聖女として覚醒した今、戻ってくるように促されるも、ネイヴィーランド、とりわけチャールズ様が承知なさいません。
アグネス自身も戻る気がないため、チャールズ様とそのまま結婚式を挙げ、幸せになります。
0
お気に入りに追加
409
あなたにおすすめの小説

婚約破棄でも構いませんが国が滅びますよ?
亜綺羅もも
恋愛
シルビア・マックイーナは神によって選ばれた聖女であった。
ソルディッチという国は、代々国王が聖女を娶ることによって存続を約束された国だ。
だがシェイク・ソルディッチはシルビアという婚約者を捨て、ヒメラルダという美女と結婚すると言い出した。
シルビアは別段気にするような素振りも見せず、シェイクの婚約破棄を受け入れる。
それはソルディッチの終わりの始まりであった。
それを知っているシルビアはソルディッチを離れ、アールモンドという国に流れ着く。
そこで出会った、アレン・アールモンドと恋に落ちる。
※完結保証
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……

【完結】無能な聖女はいらないと婚約破棄され、追放されたので自由に生きようと思います
黒幸
恋愛
辺境伯令嬢レイチェルは学園の卒業パーティーでイラリオ王子から、婚約破棄を告げられ、国外追放を言い渡されてしまう。
レイチェルは一言も言い返さないまま、パーティー会場から姿を消した。
邪魔者がいなくなったと我が世の春を謳歌するイラリオと新たな婚約者ヒメナ。
しかし、レイチェルが国からいなくなり、不可解な事態が起き始めるのだった。
章を分けるとかえって、ややこしいとの御指摘を受け、章分けを基に戻しました。
どうやら、作者がメダパニ状態だったようです。
表紙イラストはイラストAC様から、お借りしています。

魔法を使える私はかつて婚約者に嫌われ婚約破棄されてしまいましたが、このたびめでたく国を護る聖女に認定されました。
四季
恋愛
「穢れた魔女を妻とする気はない! 婚約は破棄だ!!」
今日、私は、婚約者ケインから大きな声でそう宣言されてしまった。

妹から「地味でダサいお姉様には需要はありませんのよ!」と言われ、婚約者を奪っていかれてしまいました。が、その後私の方が幸せになりました。
四季
恋愛
妹から「地味でダサいお姉様には需要はありませんのよ!」と言われ、婚約者を奪っていかれてしまいました。が、その後私の方が幸せになりました。
【完結】双子の妹にはめられて力を失った廃棄予定の聖女は、王太子殿下に求婚される~聖女から王妃への転職はありでしょうか?~
美杉。祝、サレ妻コミカライズ化
恋愛
聖女イリーナ、聖女エレーネ。
二人の双子の姉妹は王都を守護する聖女として仕えてきた。
しかし王都に厄災が降り注ぎ、守りの大魔方陣を使わなくてはいけないことに。
この大魔方陣を使えば自身の魔力は尽きてしまう。
そのため、もう二度と聖女には戻れない。
その役割に選ばれたのは妹のエレーネだった。
ただエレーネは魔力こそ多いものの体が弱く、とても耐えられないと姉に懇願する。
するとイリーナは妹を不憫に思い、自らが変わり出る。
力のないイリーナは厄災の前線で傷つきながらもその力を発動する。
ボロボロになったイリーナを見下げ、ただエレーネは微笑んだ。
自ら滅びてくれてありがとうと――
この物語はフィクションであり、ご都合主義な場合がございます。
完結マークがついているものは、完結済ですので安心してお読みください。
また、高評価いただけましたら長編に切り替える場合もございます。
その際は本編追加等にて、告知させていただきますのでその際はよろしくお願いいたします。
お飾り王妃の愛と献身
石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。
けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。
ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。
国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる