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大聖女
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王宮から婚約者のアーノルド王太子殿下から呼び出しを受け、駆け付けてみたら、
「公爵令嬢ヴィヴィアンヌ、貴様とは今をもって婚約を破棄するものとする。」
「え?なぜでございますか?」
「貴様は聖女だと、俺に嘘を吐いていたからである。」
「嘘ではございません。わたくしは、大聖女でございます。ですが、王太子殿下が婚約を破棄したいとの仰せなら、甘んじてお受けいたします。では、これにて。」
「へ?いやいや、待て。大聖女とは?なんだ?」
「聖女の上に位置するものでございますが……。」
そそくさとヴィヴィアンヌは王宮を後にした。こうしちゃいられない。
ヴィヴィアンヌが王太子の婚約者で居られたら、困る勢力が動き出したのである。
この国は神国であるものの政治的に聖女派と反聖女派にわかれている。
アーノルド殿下に嘘を吹き込んだのは、まぎれもなく反聖女派であろう。
その頃、アーノルド殿下も苛立っていたのである。
「大聖女だなんて、聞いていなかったぞ?婚約破棄してしまったではないか?国に対する影響はいかばかりか計り知れない。どうする?どうする?」
アーノルドは国王陛下から、叱責を受けて項垂れている。
「なぜ、ヴィヴィアンヌと婚約破棄する前に儂に一言相談しなかったのだ?」
「では、もう一度、ヴィヴィアンヌを呼出し、婚約しましょう。」
「ダメだ。一度婚約破棄した相手とは、二度と婚約できない不文律がある。その法を破ると国が滅んでしまう。」
その頃、ヴィヴィアンヌは父の公爵に相談して、この国を捨てる決意をしたところだったのである。
反聖女派が動きだしたとなると、どうなるかわからないからである。
急ぎ引っ越しの用意をする。
先にヴィヴィアンヌだけ逃がし、後で公爵家が追いかけることにする。
ヴィヴィアンヌだけなら、身軽だし、いざとなれば、転移魔法も使えるからである。公爵という位にあるから、すぐには手出しできないという見方もできるが、王太子に嘘を吹き込むぐらいであるから、何をするかわからない。
反聖女派は、王太子がヴィヴィアンヌと婚約破棄したことを知ると自分の娘と婚約してくれと王家に申し出たらしいが、王家はこれを蹴ったのである。聖女でなければ、国がもたない。
大聖女の代わりなど誰にもできないのである。
その頃、ヴィヴィアンヌは隣国にたどり着く。ヴィヴィアンヌが国境を越えたことにより、張り巡らされていた結界が消滅するのである。
これには、反聖女派も慌てだした。聖女など、名前だけの肩書だと思っていたのであった。神国にいながら聖女の存在を否定していた彼らは、国を捨てることを決意するが、今さら国境まで行けなくなっていたのである。国境付近には、魔物がたむろしていて近づくことすら難しい。
公爵家には、ヴィヴィアンヌとの連絡用の秘密の抜け穴があるから、それを通って、ヴィヴィアンヌのもとに行ける。
魔物が押し寄せる間一髪のところで、公爵家全員は避難できたのである。
その頃、ヴィヴィアンヌは、隣国の王太子殿下に求婚されていたのである。
「ヴィヴィアンヌ様を聖女ではないなどと甘言を信じるなどアーノルド様も大したことがないのぉ。」
そこへなだれ込んできた公爵家の人々の姿に王太子殿下が驚かれる。
「お父様、ご無事でございましたか?」
「ヴィヴィアンヌも息災で何より。して、こちらは?」
「この国のジェフリー・バークランド様でございます。」
「え?王太子殿下の?」
「申し遅れました。ヴィヴィアンヌ様のお父君とは知らず、ご挨拶が遅れ申し訳ございません。」
「いやいや、娘がお世話になっているようで。」
被災してきた公爵家のために、バークランド王家は、王都に立派な家をくださいまして、全員でそこに住むことになりました。もちろんヴィヴィアンヌも一緒に。
ヴィヴィアンヌは申し訳なさから、バークランド国の周りに結界を張り巡らしました。これぐらいしか、お世話になるお礼ができませんから。
その代わり、ジェフリー王太子殿下との婚約はどうしたものかしら?
大して、好きでもないし。
ずるずるとこのまま、現状維持がいいのだけれど。
そのうち、誰か好きな人ができたら、こっそりこの国を出ていくのもいいかもね。でもその時、結界が消滅しちゃうから、またバレるかしらね。
大聖女としての仕事をしながら、妃教育をしてきたヴィヴィアンヌ、しばらくはのんびり自由に過ごしたい。これが本音です。
「公爵令嬢ヴィヴィアンヌ、貴様とは今をもって婚約を破棄するものとする。」
「え?なぜでございますか?」
「貴様は聖女だと、俺に嘘を吐いていたからである。」
「嘘ではございません。わたくしは、大聖女でございます。ですが、王太子殿下が婚約を破棄したいとの仰せなら、甘んじてお受けいたします。では、これにて。」
「へ?いやいや、待て。大聖女とは?なんだ?」
「聖女の上に位置するものでございますが……。」
そそくさとヴィヴィアンヌは王宮を後にした。こうしちゃいられない。
ヴィヴィアンヌが王太子の婚約者で居られたら、困る勢力が動き出したのである。
この国は神国であるものの政治的に聖女派と反聖女派にわかれている。
アーノルド殿下に嘘を吹き込んだのは、まぎれもなく反聖女派であろう。
その頃、アーノルド殿下も苛立っていたのである。
「大聖女だなんて、聞いていなかったぞ?婚約破棄してしまったではないか?国に対する影響はいかばかりか計り知れない。どうする?どうする?」
アーノルドは国王陛下から、叱責を受けて項垂れている。
「なぜ、ヴィヴィアンヌと婚約破棄する前に儂に一言相談しなかったのだ?」
「では、もう一度、ヴィヴィアンヌを呼出し、婚約しましょう。」
「ダメだ。一度婚約破棄した相手とは、二度と婚約できない不文律がある。その法を破ると国が滅んでしまう。」
その頃、ヴィヴィアンヌは父の公爵に相談して、この国を捨てる決意をしたところだったのである。
反聖女派が動きだしたとなると、どうなるかわからないからである。
急ぎ引っ越しの用意をする。
先にヴィヴィアンヌだけ逃がし、後で公爵家が追いかけることにする。
ヴィヴィアンヌだけなら、身軽だし、いざとなれば、転移魔法も使えるからである。公爵という位にあるから、すぐには手出しできないという見方もできるが、王太子に嘘を吹き込むぐらいであるから、何をするかわからない。
反聖女派は、王太子がヴィヴィアンヌと婚約破棄したことを知ると自分の娘と婚約してくれと王家に申し出たらしいが、王家はこれを蹴ったのである。聖女でなければ、国がもたない。
大聖女の代わりなど誰にもできないのである。
その頃、ヴィヴィアンヌは隣国にたどり着く。ヴィヴィアンヌが国境を越えたことにより、張り巡らされていた結界が消滅するのである。
これには、反聖女派も慌てだした。聖女など、名前だけの肩書だと思っていたのであった。神国にいながら聖女の存在を否定していた彼らは、国を捨てることを決意するが、今さら国境まで行けなくなっていたのである。国境付近には、魔物がたむろしていて近づくことすら難しい。
公爵家には、ヴィヴィアンヌとの連絡用の秘密の抜け穴があるから、それを通って、ヴィヴィアンヌのもとに行ける。
魔物が押し寄せる間一髪のところで、公爵家全員は避難できたのである。
その頃、ヴィヴィアンヌは、隣国の王太子殿下に求婚されていたのである。
「ヴィヴィアンヌ様を聖女ではないなどと甘言を信じるなどアーノルド様も大したことがないのぉ。」
そこへなだれ込んできた公爵家の人々の姿に王太子殿下が驚かれる。
「お父様、ご無事でございましたか?」
「ヴィヴィアンヌも息災で何より。して、こちらは?」
「この国のジェフリー・バークランド様でございます。」
「え?王太子殿下の?」
「申し遅れました。ヴィヴィアンヌ様のお父君とは知らず、ご挨拶が遅れ申し訳ございません。」
「いやいや、娘がお世話になっているようで。」
被災してきた公爵家のために、バークランド王家は、王都に立派な家をくださいまして、全員でそこに住むことになりました。もちろんヴィヴィアンヌも一緒に。
ヴィヴィアンヌは申し訳なさから、バークランド国の周りに結界を張り巡らしました。これぐらいしか、お世話になるお礼ができませんから。
その代わり、ジェフリー王太子殿下との婚約はどうしたものかしら?
大して、好きでもないし。
ずるずるとこのまま、現状維持がいいのだけれど。
そのうち、誰か好きな人ができたら、こっそりこの国を出ていくのもいいかもね。でもその時、結界が消滅しちゃうから、またバレるかしらね。
大聖女としての仕事をしながら、妃教育をしてきたヴィヴィアンヌ、しばらくはのんびり自由に過ごしたい。これが本音です。
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