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光と闇

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 学園の卒業記念パーティで
 「公爵令嬢カトリーヌ、貴様は義妹リリアーヌをいじめ、あまつさえ先日、闇魔法に目覚めたことから、本日、婚約を破棄するものとし、カトリーヌを国外追放とすることを宣言する。」

 カトリーヌは、幼い頃に母を失い、喪も開けぬうちから、父である公爵が娼婦であった女と妹を家に入れ、それから、ずっと義母と義妹に虐げられている。リリアーヌを虐めているのではなく、虐められているのである。王太子とリリアーヌは浮気をしている。不義を隠して、邪魔者のカトリーヌを追い出す意味である。

 それなのに、闇魔法に目覚めたことぐらいで、断罪されて追放されるなど、身に覚えがないことばかりだったわ。でも、公爵家にいることは、死ぬより辛い日々だった。毎日、物置小屋で寝泊まりし、着るものも与えられず、いつも昔のドレスを修繕しながら着ていた。食べるものは、すべて、毒?カビが生えているものばかり、ぬるい水のようなスープとカビの生えた固いパン。実母と王妃は姉妹だったので、政略的な意味合いから、王太子の婚約者に選ばれた。王妃が生きているときは、まだ、マシな暮らしができていたが、王妃が身罷られた後は、今の生活が10年以上続いている。

 もう、カトリーヌには、味方がいないのだ。言われたように、身の回り品、といっても大したものはないが、母の形見などをもって、国から歩いて出た。

 その後、国境付近まで来たところ、隣国の騎士が待ち構えていた。
 ここで、隣国からの魔女を成敗するために来ているという。
 カトリーヌの見た目は、亡き母や王妃と同じで、絶世の美女である。
 騎士は、見目麗しい美女が、魔女であるとは思えず、何かの間違いかと疑う。
 仕方なく、卒業記念パーティでの断罪劇を話すと、驚いたように目を見開き、隣国の王太子は大バカ者だと嘲笑った。

 急に真面目な顔をして、「あなた様を聖女様と見込んで、お願いがあります。実は、私の妹が長い間、病に臥せっています。どうか、お助けいただけないのでしょうか?」

 その申し出にカトリーヌは、心底、ビックリした。闇魔法が使えるから、魔女と言いがかりをつけられても、おかしくないのに、聖女と言われるとは⁉

 「光と闇は紙一重です。闇魔法が使えるのならば、光魔法も使えるはず。光があるから、闇がある。闇があるから、光がある。その両方を操れるのが、聖女様ということです。ですから、その隣国の王太子は、前代未聞の大馬鹿者です。」といって、また笑った。

 半信半疑ながらも、騎士の妹さんを看ることになった。

 「これは!病ではなく、毒です。毒を盛られていますね。毒を浄化できるかどうか、やってみます。」

 祈るように、妹さんに手をかざすと、みるみる妹さんが光に包まれて、顔色がよくなっていき、普通の穏やかな寝息に変わった。

 「聖女様だ!」妹さんの近くにいた人が全員、口々にカトリーヌに対して、賛美している。

 そう、光と闇は、相一対しているもの、実感として聖女として覚醒したことがわかった。

 隣国から、この話を聞いた王国では、カトリーヌに戻ってくるように招集命令を出したが、時すでに遅し、隣国から旅立った後でした。

 バカ王太子は浮気しておきながら、聖女であるカトリーヌを国外追放にしたことから、廃嫡となり、リリアーヌもカトリーヌを虐めていた罪で、平民落ちとなりました。
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