上 下
14 / 32

認定儀式

しおりを挟む
 聖女認定儀式の前日のこと、王宮で婚約者だった王太子から呼び出され

 「公爵令嬢シャルロット、申し訳ないが、聖女と結婚したいので、君との婚約をなかったことにしてほしい。幼い時から政略で婚約したから、君を愛することができないのは、仕方がないが、長きにわたり妃教育、大儀であった。」

 たったそれだけ、まだシャルロットが聖女でないと決まったわけでもないのに、それだけの理由で15年間の長きに渡った辛く苦しい妃教育がパァになった瞬間だった。

 聖女候補で最も次期聖女として有力者が子爵令嬢のリリアーヌ、勝ち誇った顔とシャルロットに対して、憐みの表情がめっちゃムカつく。

 そして、シャルロットの後釜婚約者に、リリアーヌがついた。もし、聖女になってもあの妃教育が待ってるよ、って聖女なら妃教育免除されるの?知らないけど。

 もういいや。明日の聖女認定儀式が済めば、自害しようか?それとも隣国へ行き、新たな旦那様を探そうとするか?それとも一生独身で、兄のお世話になるか?それとも修道院に行こうか?いろいろ選択肢がある。

 王太子に捨てられた女、という一生モノの傷を負わされたシャルロットの運命やいかに?もう、妃教育も終わっているのだから、何やってもいいよね。

 王太子のことは、はっきり言えば嫌いだったのよ。いくら政略結婚とはいえ、シャルロットに優しい言葉ひとつもかけてくれなかった。恨み言のひとつも言えず、ただ聖女候補の有力者でないという理由だけで、あっけなく婚約を破棄されたのだ。

 ばかばかしい。明日の聖女認定儀式をすっぽかしてやろうか?どうせ、選ばれなくて、リリアーヌが選ばれて、幸せそうな二人の姿を目にするのは、ばかばかしい。

 儀式が済めば、すぐに出国できるように用意を整えておくことにした。
 ばかばかしいことも、あっという間に忘れられるだろう。

 そして、聖女認定儀式の当日、順番に水晶玉に手をかざしていくことになった。
 一番最初に、手をかざすのは、リリアーヌ、これで決まれば、即刻、出国するつもりなのだが、いつまでたっても決まらない。水晶玉がなんにも反応しないのだ。リリアーヌは、ほとんど泣いているが、バカ王太子は慰めもしないで、茫然としている。

 あははは。バーカ、べ-だ。次の人も、その次の人も、水晶玉は反応しなかった。もしかしたら、この中に聖女はいないのかしらね、と考え事をしていたら、シャルロットが呼ばれた。もう、出国準備は万端で、手をかざしてダメなら、とっとと馬車に乗って…と、手をかざしたら、……なん…と、水晶玉がキラキラと輝きだして、金色に輝き続けた。

 うっそ?その後、大騒ぎになりそうな感じだったので、すぐさま馬車に飛び乗った。

 そのまま、シャルロットが乗った馬車は、隣国へ向かったのでした。だって、また、婚約破棄の破棄なんてことになったら、いやだもの。王太子は、はっきりとシャルロットを愛せないと明言したのよ。シャルロットとて、好きでもない王太子と結婚する気はない。

 愛のない結婚をするほど、シャルロットもバカではない。シャルロットを心から愛してくれる殿方を見つけるまで、がんばるわ。

 シャルロットの実家の公爵家には、王家からの使いやお迎えが来ていたが、シャルロットは、もうこの国から愛想を尽かして出て行ったあとで、混乱する中、父が

 「昨日、王太子殿下から婚約破棄を言い渡され、傷心のもと出国いたしました。聖女であったことは、よろこばしいことですが、シャルロットはもう戻ってきません。どうか、お引き取りください。」

 王太子は、ガックリと肩を落として帰っていった。
 シャルロットの行方は、公爵家でもわからず、彼女がちゃんとした相手を見つけるまでは、わからずじまいのまま2年が過ぎた。

 王太子は、聖女に愛想を尽かされたバカ王太子のレッテルを貼られ、廃嫡になった。15年間もの間の婚約者が聖女かどうかも、わからなかったのは大失点だったようだ。

 一方、リリアーヌ嬢は、聖女に成りすましたものの水晶玉が反応しなかったことから、偽聖女として罰せられた。

 シャルロットは、ようやく一人の女として愛してくれる人が見つかり、幸せな時を過ごしていました。その人は隣国の皇太子殿下で、結婚式の前日、シャルロットが聖女であることを打ち明け、国中がお祝いムードに包まれました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか

あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。 「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」 突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。 すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。 オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……? 最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意! 「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」 さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は? ◆小説家になろう様でも掲載中◆ →短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます

あなたをかばって顔に傷を負ったら婚約破棄ですか、なおその後

アソビのココロ
恋愛
「その顔では抱けんのだ。わかるかシンシア」 侯爵令嬢シンシアは婚約者であるバーナビー王太子を暴漢から救ったが、その際顔に大ケガを負ってしまい、婚約破棄された。身軽になったシンシアは冒険者を志して辺境へ行く。そこに出会いがあった。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

嘘つきと言われた聖女は自国に戻る

七辻ゆゆ
ファンタジー
必要とされなくなってしまったなら、仕方がありません。 民のために選ぶ道はもう、一つしかなかったのです。

【完結】逆行した聖女

ウミ
恋愛
 1度目の生で、取り巻き達の罪まで着せられ処刑された公爵令嬢が、逆行してやり直す。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書いた作品で、色々矛盾があります。どうか寛大な心でお読みいただけるととても嬉しいですm(_ _)m

石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど

ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。 でも私は石の聖女。 石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。 幼馴染の従者も一緒だし。

平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ
恋愛
 「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」  それが両親の口癖でした。  ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。  ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。  ですから私決めました!  王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。  

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

処理中です...