115 / 150
田舎暮らし
しおりを挟む
スターライト王国の王宮での舞踏会の一夜のこと
「侯爵令嬢ボニー・スタンレー、貴様とは、今をもって婚約を破棄するものとする。」
公爵令息のクリフォード・バーボン様が高らかに宣言される。
「なぜでございますか?」
「貴様のように田舎暮らしの令嬢など、片腹痛いわ。王都には、もっと洗練された俺にふさわしい女がいる。」
こうして、ボニーは婚約破棄されたのだが、ボニーは生まれつきのぜんそくもちで、スタンレー領地で静養を兼ねて、父が領地経営に忙しくしているため、その経営を手伝っている。
ぜんそくもちであったが、領地に帰ってからは一度も発作が起きていない。領地の空気がいいのだろう。領地に帰ってからは、学園に行けないので、代わりに侯爵邸の図書室で蔵書を読む日々であり、ほとんど読破している状態である。
おかげで、世界各国の植物図鑑はすべて頭に入っている状態である。父が他国へ出張するときに買ってきてほしい種をチョイスしているのもボニーの役割である。
この前、買ってきてもらったのは、カカオ、今このカカオ豆からチョコレートを作ることに勤しんでいる。あとは、お砂糖の配分量を決めるだけになった。もともとカカオポリフェノールは、苦みだけなので、あまり甘すぎても?クリームで調整しようか?いろいろ研究中である。
それともう一つは、チアシード。アミノ酸の宝庫であり、体内でしか作ることができないアミノ酸を含んでいて、スーパーフードと呼ばれるものである。現代では、水とチアの種さえあれば、生きていけると言われるほどの栄養価の高さである。
チョコレートにチアを混ぜ込めば、無敵のスーパーフードになること間違いなしなのだが、チアは、黒ゴマ状で見た目が悪い。まずは、チョコレートはチョコレートだけ、チアシードはチアシードだけにしてみようか?チアは、自分の美容と健康増進のためだけ生産すればいい。
ブラック、セミブラック、ミルク、スイートの4種類のチョコレートを完成させた。板チョコ状とトリュフになったもの、ナッツを載せたもの、クランチにしたものを用意して、領地の役員さんを呼び、試食会をしたところ。大盛況のうちに終わる。
お父様に頼んで、この完成品のチョコレートを菓子として、売り出してもらうことにする。
チョコレートは、我が領地の一大産業に発展し、チョコレートとして、クリームとして、ケーキに混ぜ込むなど、かき氷にかける、パンケーキのトッピングなど、調理人がそれぞれアイデアを出し合って、広めていく。
王都からもたくさんの貴族が買いに来て、一人二箱までと制限を付けるようになる。
公爵令息のクリフォード・バーボン様もそのうちのお一人で、元婚約者のよしみで大目に買えないか?と打診があるものの、不公平感があるので断る。ともう一度婚約したいと申し入れがある。もちろん、お断りしましたわよ。人を田舎者呼ばわりしときながら、チョコレート欲しさに婚約だなんて、バカにするにも大概にしろ!と言いたいわ。
もちろんクリフォード様は、ただ単にチョコレートが食べたいわけではなく、その利益、利権狙いである。お金のにおいにつられて婚約を言い出したのである。
チョコレートの噂は外国にまで広がり、承認が買い付けに来たと思えば、外国の王族自ら乗り込んできて、ボニーにプロポーズしてくるものまで現れる。
それに焦ったのが、スターライト王国、王太子殿下をはじめ、第2王子、第3王子までもが婚約の打診をしてくる始末。
打診だけではねぇ。外国の王族みたいに自ら、スタンレー領地へ足を運んでこそ打診に意味があるというもの。
もうより取り見取り状態なボニー・スタンレー、結納金が一番高いところへ嫁に行こうと思うが、いったいいくら出してくれるか見当もつかない。
意外なことに一番ケチだったのが、スターライト王国で、スタンレー領地は我が国の一部であるから、という理由。
「ええー!それとこれとは違う話だろ?って言いたいわ。だって、チョコレートそのものの製法はボニーだけしか知らないことだから。ボニーさえいれば、他国でもどこでもカカオ豆の栽培さえすれば、チョコレートを作れるのだからということを、スターライト王国はわかっていない。
ただの病弱な田舎者の令嬢だから、王子と結婚させてやると言えば、ホイホイと乗ってくると思い込んでいるのである。
ちょっとムカつく態度に、ボニーはキレる。誰が、王家なんぞに嫁に行ってやるか!ということで、ボニーの結婚相手は、外国の王族に絞られる。
その中で、結納金、支度金の高い国で、絵姿が美形のところに嫁に行くつもりである。何人かとお見合いをすることになり、手始めに隣国クレーンブルー帝国のリチャード皇太子殿下と会うことになった。隣国から近いという理由と絵姿がけっこうボニーのタイプだったから。
それにお見合いに当たって、手土産をいただいてしまった。色とりどりの宝石が詰まった宝石箱に、ドレス、チアシード。え?クレーンブルー帝国は、チアシードを栽培されているの?実際に食用されているの?
お見合いでは、趣味は?とかいうのそっちのけでチアシードの質問ばかりしていたぐらいで、少し引かれたかもしれない。
「さすがボニー嬢は、チアシードのこともよくご存じで。」どういうわけか、気に入られた。
それからというもの、とんとん拍子で話が決まって、ついにリチャード殿下の元へ輿入れする日が来てしまう。
「お父様、お母様、永い間お世話になりました。わたくしクレーンブルー帝国で新たなチョコレートを作成できるよう精いっぱい頑張ってまいります。新しいチョコレートができましたら、レシピを送りますから、ぜひ、スタンレー領でも作ってみてくださいませ。」
「無理することはないよ。体に気を付けて行っておいで。困ったことがあれば、なんでもすぐに相談するんだよ。ボニーのためなら、いつでも全力でなんだってするから。」
両親と涙の別れをして、カカオの苗木とともにクレーンブルー帝国へ嫁いでいく。
クレーンブルー帝国で世界最大規模のチョコレート工場ができるのは、いうまでもないこととなった。
「侯爵令嬢ボニー・スタンレー、貴様とは、今をもって婚約を破棄するものとする。」
公爵令息のクリフォード・バーボン様が高らかに宣言される。
「なぜでございますか?」
「貴様のように田舎暮らしの令嬢など、片腹痛いわ。王都には、もっと洗練された俺にふさわしい女がいる。」
こうして、ボニーは婚約破棄されたのだが、ボニーは生まれつきのぜんそくもちで、スタンレー領地で静養を兼ねて、父が領地経営に忙しくしているため、その経営を手伝っている。
ぜんそくもちであったが、領地に帰ってからは一度も発作が起きていない。領地の空気がいいのだろう。領地に帰ってからは、学園に行けないので、代わりに侯爵邸の図書室で蔵書を読む日々であり、ほとんど読破している状態である。
おかげで、世界各国の植物図鑑はすべて頭に入っている状態である。父が他国へ出張するときに買ってきてほしい種をチョイスしているのもボニーの役割である。
この前、買ってきてもらったのは、カカオ、今このカカオ豆からチョコレートを作ることに勤しんでいる。あとは、お砂糖の配分量を決めるだけになった。もともとカカオポリフェノールは、苦みだけなので、あまり甘すぎても?クリームで調整しようか?いろいろ研究中である。
それともう一つは、チアシード。アミノ酸の宝庫であり、体内でしか作ることができないアミノ酸を含んでいて、スーパーフードと呼ばれるものである。現代では、水とチアの種さえあれば、生きていけると言われるほどの栄養価の高さである。
チョコレートにチアを混ぜ込めば、無敵のスーパーフードになること間違いなしなのだが、チアは、黒ゴマ状で見た目が悪い。まずは、チョコレートはチョコレートだけ、チアシードはチアシードだけにしてみようか?チアは、自分の美容と健康増進のためだけ生産すればいい。
ブラック、セミブラック、ミルク、スイートの4種類のチョコレートを完成させた。板チョコ状とトリュフになったもの、ナッツを載せたもの、クランチにしたものを用意して、領地の役員さんを呼び、試食会をしたところ。大盛況のうちに終わる。
お父様に頼んで、この完成品のチョコレートを菓子として、売り出してもらうことにする。
チョコレートは、我が領地の一大産業に発展し、チョコレートとして、クリームとして、ケーキに混ぜ込むなど、かき氷にかける、パンケーキのトッピングなど、調理人がそれぞれアイデアを出し合って、広めていく。
王都からもたくさんの貴族が買いに来て、一人二箱までと制限を付けるようになる。
公爵令息のクリフォード・バーボン様もそのうちのお一人で、元婚約者のよしみで大目に買えないか?と打診があるものの、不公平感があるので断る。ともう一度婚約したいと申し入れがある。もちろん、お断りしましたわよ。人を田舎者呼ばわりしときながら、チョコレート欲しさに婚約だなんて、バカにするにも大概にしろ!と言いたいわ。
もちろんクリフォード様は、ただ単にチョコレートが食べたいわけではなく、その利益、利権狙いである。お金のにおいにつられて婚約を言い出したのである。
チョコレートの噂は外国にまで広がり、承認が買い付けに来たと思えば、外国の王族自ら乗り込んできて、ボニーにプロポーズしてくるものまで現れる。
それに焦ったのが、スターライト王国、王太子殿下をはじめ、第2王子、第3王子までもが婚約の打診をしてくる始末。
打診だけではねぇ。外国の王族みたいに自ら、スタンレー領地へ足を運んでこそ打診に意味があるというもの。
もうより取り見取り状態なボニー・スタンレー、結納金が一番高いところへ嫁に行こうと思うが、いったいいくら出してくれるか見当もつかない。
意外なことに一番ケチだったのが、スターライト王国で、スタンレー領地は我が国の一部であるから、という理由。
「ええー!それとこれとは違う話だろ?って言いたいわ。だって、チョコレートそのものの製法はボニーだけしか知らないことだから。ボニーさえいれば、他国でもどこでもカカオ豆の栽培さえすれば、チョコレートを作れるのだからということを、スターライト王国はわかっていない。
ただの病弱な田舎者の令嬢だから、王子と結婚させてやると言えば、ホイホイと乗ってくると思い込んでいるのである。
ちょっとムカつく態度に、ボニーはキレる。誰が、王家なんぞに嫁に行ってやるか!ということで、ボニーの結婚相手は、外国の王族に絞られる。
その中で、結納金、支度金の高い国で、絵姿が美形のところに嫁に行くつもりである。何人かとお見合いをすることになり、手始めに隣国クレーンブルー帝国のリチャード皇太子殿下と会うことになった。隣国から近いという理由と絵姿がけっこうボニーのタイプだったから。
それにお見合いに当たって、手土産をいただいてしまった。色とりどりの宝石が詰まった宝石箱に、ドレス、チアシード。え?クレーンブルー帝国は、チアシードを栽培されているの?実際に食用されているの?
お見合いでは、趣味は?とかいうのそっちのけでチアシードの質問ばかりしていたぐらいで、少し引かれたかもしれない。
「さすがボニー嬢は、チアシードのこともよくご存じで。」どういうわけか、気に入られた。
それからというもの、とんとん拍子で話が決まって、ついにリチャード殿下の元へ輿入れする日が来てしまう。
「お父様、お母様、永い間お世話になりました。わたくしクレーンブルー帝国で新たなチョコレートを作成できるよう精いっぱい頑張ってまいります。新しいチョコレートができましたら、レシピを送りますから、ぜひ、スタンレー領でも作ってみてくださいませ。」
「無理することはないよ。体に気を付けて行っておいで。困ったことがあれば、なんでもすぐに相談するんだよ。ボニーのためなら、いつでも全力でなんだってするから。」
両親と涙の別れをして、カカオの苗木とともにクレーンブルー帝国へ嫁いでいく。
クレーンブルー帝国で世界最大規模のチョコレート工場ができるのは、いうまでもないこととなった。
10
お気に入りに追加
2,395
あなたにおすすめの小説
【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」
まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05
仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。
私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。
王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。
冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。
本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
転生令嬢だと打ち明けたら、婚約破棄されました。なので復讐しようと思います。
柚木ゆず
恋愛
前世の記憶と膨大な魔力を持つサーシャ・ミラノは、ある日婚約者である王太子ハルク・ニースに、全てを打ち明ける。
だが――。サーシャを待っていたのは、婚約破棄を始めとした手酷い裏切り。サーシャが持つ力を恐れたハルクは、サーシャから全てを奪って投獄してしまう。
信用していたのに……。
酷い……。
許せない……!。
サーシャの復讐が、今幕を開ける――。
私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!
近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。
「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」
声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。
※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です!
※「カクヨム」にも掲載しています。
悪役令嬢のお姉様が、今日追放されます。ざまぁ――え? 追放されるのは、あたし?
柚木ゆず
恋愛
猫かぶり姉さんの悪事がバレて、ついに追放されることになりました。
これでやっと――え。レビン王太子が姉さんを気に入って、あたしに罪を擦り付けた!?
突然、追放される羽目になったあたし。だけどその時、仮面をつけた男の人が颯爽と助けてくれたの。
優しく助けてくれた、素敵な人。この方は、一体誰なんだろう――え。
仮面の人は……。恋をしちゃった相手は、あたしが苦手なユリオス先輩!?
※4月17日 本編完結いたしました。明日より、番外編を数話投稿いたします。
クズな義妹に婚約者を寝取られた悪役令嬢は、ショックのあまり前世の記憶を思い出し、死亡イベントを回避します。
無名 -ムメイ-
恋愛
クズな義妹に婚約者を寝取られ、自殺にまで追い込まれた悪役令嬢に転生したので、迫りくる死亡イベントを回避して、義妹にざまぁしてやります。
7話で完結。
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。気長に待っててください。月2くらいで更新したいとは思ってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる