姉の持ち物はすべて妹のもの。それなのに、玉の輿!? 旦那様を渡しなさいよ！

露出狂

　王都にある王立学園の卒業記念祝賀パーティでのこと、午前中に卒業式があり、午後からは立食形式でのパーティが催される。そこでは。卒業生をはじめとして、その父兄である貴族、教職員が一堂に会し、歓談をしている。

　「公爵令嬢キャロライン・エイベルトはいるか？いたら前まで来てくれ。」

　王太子ハリソン殿下が前のほうで大声上げて、キャロラインを呼ぶ。
　キャロラインは、友達や家族と談笑中だったのが、急に呼ばれてビックリするも相手がまだ王太子殿下なので、行くことにした。家族も怪訝な顔をしている。

　「キャロラインただいま参上いたしました。」

　「公爵令嬢キャロライン、貴様とは、今日を限りとして、婚約を破棄するものとする。」

　高らかに宣言されたが、とうの昔に婚約は白紙撤回されているのだ。その理由は、王太子殿下ハリソン様が一番よくご存じのはずが……？

　キャロラインの父、エイベルト公爵がハリソン殿下の前に歩み出て、

　「恐れながら申し上げます。ハリソン殿下と我が娘の婚約は、約3年前に国王陛下からの思し召しで白紙撤回されております。」

　「なんだって？なぜだ？」

　「その理由をここで申し上げてもよろしいのでしょうか？ここにいる学園関係者のほとんどは、その理由を存じ上げておりますが……。」

　「かまわぬ。申せ。」

　「恐れながら申し上げます。殿下がこの学園に入学当初、その……なんといいましょうか。学園内に露出狂が出現いたしました。逃げ惑う女子生徒に下半身を見せびらかすというものでございまして。」

　「うむ、そのようなことが確かにあったな。あれは、犯人が捕まったと聞いておるが？」

　「はい、その犯人が殿下でございました。」

　「は？」

　「はい。ですから殿下が露出狂として、捕まり、当時、殿下は立太子の礼で極度の緊張状態にあらせられまして、それが原因のノイローゼだと伺っておりました。国王陛下は、この事件を重く、御判断なされ、我が娘との婚約を白紙に戻していただきました次第でございます。」

　「うそだろ。ウソだと言ってくれ！ここにいるほとんど全員がそれを知っていた？」

　「「「「「「「「「「 はい。存じ上げております。 」」」」」」」」」」

　「なぜだ！なぜ、今まで黙っていた？」

　「「「「「「「「「「 殿下の古傷に塩を塗りたくはありませんでした。 」」」」」」」」」」

　ガックリと首を垂れるハリソン

　「話はそれだけでは、終わりません。国王陛下の思し召しは、もし学園の卒業パーティでハリソン殿下が我が娘キャロラインに対し、婚約破棄に関して口出しするようなことがあれば、廃嫡するとの仰せがございました。」

　「うそだ！父上がそんなこと言われるはずがない！」

　そこへ国王陛下が登場。

　「ハリソン、嘘ではないのだ。この場で、そのままキャロライン嬢に触れず、卒業してくれたら、帰ってから、儂と王妃で、婚約が白紙撤回になったことを言うだけでよかったのだが。あんな事件を起こしながら、まだキャロライン嬢を傷つけるようなことを仕出かすとは、情けない。お前を廃嫡とする。キャロライン嬢は、第2王子ヘンリーと結婚させる。以上だ。」

　「ま、待ってください。父上！それでは、ここにいる男爵令嬢のリリアーヌと結婚したいのですが？」

　「リリアーヌとやら、ここにいるハリソンと結婚したいか？」

　リリアーヌは、瞳を輝かせながら「はい。」

　「よろしい。それでは二人の結婚を認めるものとする。ただし、ドイル男爵家へ養子に出させる。王家からは、持参金は一切なしでだ。浮気をすることも離婚をすることもならん。もし、約束を違えたら死罪とする。」

　「ええー！王子妃になれないのなら、結婚はお断りします。」

　「それなら、二人とも死罪だ。衛兵！連れていけ！」

　ギャーギャー喚きながら、二人は衛兵に引きずられていった。どうせ、キャロラインに冤罪を吹っかけて、婚約破棄にもちこむつもりだったのだろう。

　国王陛下は、キャロラインに向き直り、「すまんな。許せ。」と申され退場。

　一年後、第2王子のヘンリー様が立太子の礼を終わられ、学園を卒業されて、晴れてヘンリーとキャロラインは、結ばれた。

　「ん……ん……あ！……ぁん……、もう……。」

　「こうしてキャロラインを抱けるのもバカ兄貴のおかげだ。」

　「キャロライン愛している。煽るな。我慢でき…ない…！」

　いつまでもイチャイチャする夜は長い。