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行き遅れ

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 ある公爵邸のパーティでのこと

 「侯爵令嬢クリスティーナ、貴様とは今夜をもって、婚約を破棄させてもらおう。」

 わたくしの元婚約者だったジェームズ公爵様より、言い渡された。ジェームズ様は、この度、御父上から公爵の家督を譲り受けたばかりで、いよいよ結婚かと思われていた。
 もともとクリスティーナとは、政略であったが、公爵の家督を譲り受けた時に婚姻を成すという約束だったのだ。
 今日は、家督を譲り受けた祝賀会を兼ねているものだった。

 「理由は何でございましょうか?」

 「は。知れたことよ。誰が好き好んでお前のようなばばぁと結婚したい奴がいるか?俺は、もっと若い肌がいいんだよ。婚前交渉させてくれてたら、考えたかもしれないが、お前は一向に抱かせてくれなかった。身持ちの堅いばばぁより、誰とでも寝る若い肌がいいのだ。」

 そう言って、近くにいた男爵令嬢のリリアーヌ様の腰を抱いた。リリアーヌ様は、今年学園を卒業されたばかりで、確か第3王子様と噂があった方だ。
 クリスティーヌは、王立学園で非常勤講師をしている。あまり学園内の噂には疎いが、この前の卒業パーティで公爵令嬢が第3王子殿下から、断罪されているところをたまたま見てしまった。でも、断罪、婚約破棄には至らず、結局、リリアーヌ様が負けたらしい。
 あの騒動で謹慎処分を食らったはずなのに、ジェームズにちょっかいを出したのね。バカな二人ね。王家に知られれば、二人ともただですまないとは、思わないのかしら。

 「そうですか。それでは、婚約破棄の書類は、そちらでご用意くださいませね。失礼。」

 さっさと引き返した。

 ほどなくして、王家に婚約破棄の書類が提出され、違約金や賠償金を受け取った。

 話はこれで終わるはずだったのだが、いや、終わってるのだが、3か月ほどしてからジェームズ様より、再度、婚約したいとの申し出が来た。当然、NOである。

 噂によると、リリアーヌ様からよからぬ病気をもらわれて、鼻が溶け出してきたらしい。

 身持ちの堅いばばぁを今さら、なにゆえ?若い肌がいいと言っていなかった?尻の軽い女が好きだって言ってたよね?

 ジェームズは、第3王子殿下が引っかかった女に、引っ掛けられたと、王宮で笑いものにされた挙句、領地替えが行われ、辺境伯にまで落ちた。

 リリアーヌ様は、謹慎中にジェームズに言い寄ったとして、しばらく修道院で幽閉後、平民落ちになったそうだ。

 それでわたくし、行き遅れの侯爵令嬢は、どうなったかと言いますと、相変わらず王立学園の非常勤講師をしていましたが、勤務態度が良好ということで常勤講師に格上げしていただきました。

 そして、ついにわたくしにも春が!
 お相手は、なんと王太子殿下で、わたくしの元・教え子でございます。一つ年下の王太子殿下が在学中から、わたくしに憧れを持っていてくださいました。
 それならそうと早く言ってよね。そしたら、あの浮気男と早めに婚約解消できたものを。まぁ、あの男のおかげで、わたくしが.身持ちが堅いことを証明してもらったわけですし、よしとしますか。

 ということで、今日は結婚式なんですぅ。
 父とバージンロードを歩きましたよ。
 わたくしも嫁に行けるなどとは、思っていなかったので嬉しいです。幸せです。
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