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茶番
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学園の卒業記念パーティでのこと
「公爵令嬢マリアンヌ、貴様とは。本日この場にて、婚約を破棄し、俺はリリアーヌと婚約することを宣言する。」
この国のバカ王子いや、第1王子のリチャードが高らかに宣言した。
午前中学園で卒業式が行われ、夕方から保護者や父兄、卒業生を交えてパーティが行われるのだが、突然の大声に皆、茫然として手を止めた。
皆、誰も発言しない。バカ王子の癇癪を知っているからだ。
とりあえず無視しよう。本当に婚約破棄してくれるんなら助かるし、ラッキーだから。
マリアンヌが無視を決め込んで、ほかの貴族たちと談笑を始めたから、周りの者たちもそれに倣い、次々、歓談の輪が広がっていく。
第2王子のチャールトン様も加わって、大賑わいだ。学年が一つ下のチャールトン様は、本日の卒業生に対する祝辞を述べるため、参加していらっしゃる。
「なぜ?マリアンヌ、無視するのだ!」
「婚約破棄してくださるのでしょう。元婚約者を呼び捨てにするとは?王家に抗議しなければなりませんね。婚約破棄上等!もう、リチャード王子の尻ぬぐいをしなくて済むのかと思うと、うれしくて、嬉しくて。あー清々したわ。」
皆、せっかくの祝いの席での婚約破棄宣言に無粋な奴だと不快感をあらわにしている。マリアンヌの意見にも賛同していると、また、バカが怒り出した。
「なぜ?理由を聞かない?」
「は?理由なんて、どうだっていいでしょ?リチャード様と婚約破棄できるのですから、これほど喜ばしいことはありませんわ。このことは、父や陛下はご存じなのですか?」
「公爵にはまだだが、陛下からは了承された。」
「それなら、何も問題がございませんわね。婚約破棄をお受けいたします。」
「いやいや、だから、理由を聞かないのか?と聞いておる。」
「もう、さっきからしつこいわね。さっさと理由を言いたいなら言いなさい!」
「あまり言いたくないのだが……。」
「だったら、言わなくていいわよ!」
チャールトン殿下が、マリアンヌの側に来てくれた。「大丈夫ですか?」小声でささやく。
「言う、言うから、待て。実はだな、先頃、教会で聖女認定儀式があっただろう。それにこのリリアーヌ様が選ばれて、なんと!大聖女様の反応が出たらしいのだ。それで…、」
「ああ、それでその大聖女様のリリアーヌ様と結婚したいから、わたくしと婚約破棄するということですね。よくわかりま…。」
また、さえぎって
「いやいやそういうことではなく、リリアーヌ様は平民出身だろう。だから、王妃の仕事は無理だと思うのだ。それで、マリアンヌは正妃教育が済んでいるので、表の仕事はリリアーヌ様に、マリアンヌは、正妃の仕事をしてもらいたいのだ。」
「は?お断りします。殿下と婚約破棄されたので、これから婚活しなければなりませんし、よその貴族の正室が、王家の正妃の仕事など兼務できるはずがございません。それにこれ以上、リチャード様の尻拭いなんて、まっぴらごめんですわ。」
「婚活などしなくてよい。マリアンヌは、側妃においてやろう。」
「いやです。嫌です。人をぬか喜びさせといて、側妃ですって!冗談じゃない!陛下に断固抗議しますわ。それにですね、わたくし両親から、この国はマリアンヌがいるから保っているのだ、と散々聞かされ、正妃教育も血反吐が出るぐらい幼いころより頑張ってまいりました。それもこれも両親と国王陛下から頭を下げられたからです。なぜだと思いますか?わたくし、教会から大聖女の認定を受けたからです。だから、リリアーヌ様が大聖女なら代わって差し上げますが、正妃教育はきちんとしなさい!」
「嘘です。マリアンヌ様は嘘を言っておられます。」
ここで、チャールトン様が、
「マリアンヌ様が仰っていることは事実です。陛下から、書状を預かってきました。
【もし、リチャードが卒業記念パーティの席上でマリアンヌと婚約破棄し、平民リリアーヌと婚儀することを宣言し、大聖女マリアンヌ様を側妃にするような 大馬鹿な発言をした場合、 リチャードを廃嫡するものとする。
もし、二人が抵抗する場合、衛兵、その者をいったん牢に入れ、沙汰を待て。
リチャード廃嫡後、チャールトンがその任に就き、大聖女マリアンヌ様と婚約することを願う。結婚後は、二人でこの国をさらなる発展へ導いてほしい。 】
「嘘だろ?」チャールトン様の手から勅命書をひったくって、しげしげと見て
「本当だ。父上のサインがある。」
「うそよ、うそよ、うそ。」突如、リリアーヌが叫び出した。すぐさま衛兵がリリアーヌを拘束し、牢へ引きずっていった。
「チャールトン様、これは?」
「教会の中に最近、膿が蔓延っていまして、一掃するためマリアンヌ様を茶番に付き合わせてしまい、私のほうからも謝罪させていただきます。」
そして、マリアンヌの前に跪いて
「大聖女マリアンヌ様、どうか、私の妻になってほしい。幼いころからマリアンヌ様だけを愛し、敬い、憧れてまいりました。この気持ちに嘘偽りは、ございません。どうか。」と言って、マリアンヌの手の甲にキスを落とした。
「はい、わたくしでお役に立てるのなら。」
二人で手を取り合った時、会場が大歓声に包まれた。
「「「「「「「「「「 おめでとうございます! 」」」」」」」」」」
「公爵令嬢マリアンヌ、貴様とは。本日この場にて、婚約を破棄し、俺はリリアーヌと婚約することを宣言する。」
この国のバカ王子いや、第1王子のリチャードが高らかに宣言した。
午前中学園で卒業式が行われ、夕方から保護者や父兄、卒業生を交えてパーティが行われるのだが、突然の大声に皆、茫然として手を止めた。
皆、誰も発言しない。バカ王子の癇癪を知っているからだ。
とりあえず無視しよう。本当に婚約破棄してくれるんなら助かるし、ラッキーだから。
マリアンヌが無視を決め込んで、ほかの貴族たちと談笑を始めたから、周りの者たちもそれに倣い、次々、歓談の輪が広がっていく。
第2王子のチャールトン様も加わって、大賑わいだ。学年が一つ下のチャールトン様は、本日の卒業生に対する祝辞を述べるため、参加していらっしゃる。
「なぜ?マリアンヌ、無視するのだ!」
「婚約破棄してくださるのでしょう。元婚約者を呼び捨てにするとは?王家に抗議しなければなりませんね。婚約破棄上等!もう、リチャード王子の尻ぬぐいをしなくて済むのかと思うと、うれしくて、嬉しくて。あー清々したわ。」
皆、せっかくの祝いの席での婚約破棄宣言に無粋な奴だと不快感をあらわにしている。マリアンヌの意見にも賛同していると、また、バカが怒り出した。
「なぜ?理由を聞かない?」
「は?理由なんて、どうだっていいでしょ?リチャード様と婚約破棄できるのですから、これほど喜ばしいことはありませんわ。このことは、父や陛下はご存じなのですか?」
「公爵にはまだだが、陛下からは了承された。」
「それなら、何も問題がございませんわね。婚約破棄をお受けいたします。」
「いやいや、だから、理由を聞かないのか?と聞いておる。」
「もう、さっきからしつこいわね。さっさと理由を言いたいなら言いなさい!」
「あまり言いたくないのだが……。」
「だったら、言わなくていいわよ!」
チャールトン殿下が、マリアンヌの側に来てくれた。「大丈夫ですか?」小声でささやく。
「言う、言うから、待て。実はだな、先頃、教会で聖女認定儀式があっただろう。それにこのリリアーヌ様が選ばれて、なんと!大聖女様の反応が出たらしいのだ。それで…、」
「ああ、それでその大聖女様のリリアーヌ様と結婚したいから、わたくしと婚約破棄するということですね。よくわかりま…。」
また、さえぎって
「いやいやそういうことではなく、リリアーヌ様は平民出身だろう。だから、王妃の仕事は無理だと思うのだ。それで、マリアンヌは正妃教育が済んでいるので、表の仕事はリリアーヌ様に、マリアンヌは、正妃の仕事をしてもらいたいのだ。」
「は?お断りします。殿下と婚約破棄されたので、これから婚活しなければなりませんし、よその貴族の正室が、王家の正妃の仕事など兼務できるはずがございません。それにこれ以上、リチャード様の尻拭いなんて、まっぴらごめんですわ。」
「婚活などしなくてよい。マリアンヌは、側妃においてやろう。」
「いやです。嫌です。人をぬか喜びさせといて、側妃ですって!冗談じゃない!陛下に断固抗議しますわ。それにですね、わたくし両親から、この国はマリアンヌがいるから保っているのだ、と散々聞かされ、正妃教育も血反吐が出るぐらい幼いころより頑張ってまいりました。それもこれも両親と国王陛下から頭を下げられたからです。なぜだと思いますか?わたくし、教会から大聖女の認定を受けたからです。だから、リリアーヌ様が大聖女なら代わって差し上げますが、正妃教育はきちんとしなさい!」
「嘘です。マリアンヌ様は嘘を言っておられます。」
ここで、チャールトン様が、
「マリアンヌ様が仰っていることは事実です。陛下から、書状を預かってきました。
【もし、リチャードが卒業記念パーティの席上でマリアンヌと婚約破棄し、平民リリアーヌと婚儀することを宣言し、大聖女マリアンヌ様を側妃にするような 大馬鹿な発言をした場合、 リチャードを廃嫡するものとする。
もし、二人が抵抗する場合、衛兵、その者をいったん牢に入れ、沙汰を待て。
リチャード廃嫡後、チャールトンがその任に就き、大聖女マリアンヌ様と婚約することを願う。結婚後は、二人でこの国をさらなる発展へ導いてほしい。 】
「嘘だろ?」チャールトン様の手から勅命書をひったくって、しげしげと見て
「本当だ。父上のサインがある。」
「うそよ、うそよ、うそ。」突如、リリアーヌが叫び出した。すぐさま衛兵がリリアーヌを拘束し、牢へ引きずっていった。
「チャールトン様、これは?」
「教会の中に最近、膿が蔓延っていまして、一掃するためマリアンヌ様を茶番に付き合わせてしまい、私のほうからも謝罪させていただきます。」
そして、マリアンヌの前に跪いて
「大聖女マリアンヌ様、どうか、私の妻になってほしい。幼いころからマリアンヌ様だけを愛し、敬い、憧れてまいりました。この気持ちに嘘偽りは、ございません。どうか。」と言って、マリアンヌの手の甲にキスを落とした。
「はい、わたくしでお役に立てるのなら。」
二人で手を取り合った時、会場が大歓声に包まれた。
「「「「「「「「「「 おめでとうございます! 」」」」」」」」」」
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