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破棄されるはずが
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ある王宮のパーティでのこと、わたくしこと公爵令嬢のジャスミンは、今日、婚約破棄されるらしい。誰に?もちろんこの国の王太子ロバート様からよ。今まで継母と義理の妹に虐げられていて、変なメイクと牛乳瓶の底みたいな丸眼鏡とかつらをかぶせられていたのよ。
ところが、今日を最後に実母の実家から、お迎えが来るのよ。それで、お迎えの人がわからなかったら、困るから、今日だけは、素顔をさらしてきていますのよ。
パーティ会場に入ると、だれ?という視線が痛いわ。今まで、ろくすっぽ鏡も見せてもらえなかったんだけど、わたくしって、そんなにブサイクなのかしら?
婚約破棄の決定的瞬間まで、壁の花としゃれこもう。
王太子ロバート様が義理妹リリアーヌを腕にぶら下げながら、入場されたわ。
王太子殿下がわたくしのほうへ近寄ってくる、そうよね、わかるよね、これから婚約破棄を言い渡されるのだから。どうぞ。と思っていたら、妹を振り切って、ジャスミンの前に跪いた。
「なんと!美しい方、お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?できれば、ダンスを一曲。」手を差し出されたので、ビックリした。
「あ、あの…わたくしにですか?」手の方向を見たら、どう見てもジャスミンにだ。
「さ、お手をどうぞ。」
後ろで義理妹が、猛烈睨みつけてくる。
仕方なく、王太子の手を取り、ダンスを踊った。もう10年ぶりぐらい?15年ぶりぐらいになるだろうか?
「お名前は?」
「ジャスミン・フレグランスですわ。王太子殿下。お久しゅうございます。今日、婚約を破棄していただけると聞いて、参上いたした次第でございます。」
「!!!」殿下が目を見開いたまま、固まっている。
「だ、誰がそのようなことを…。」
「あら、妹のリリアーヌと義母からも聞いております。今日は、破棄していただけたら、そのまま、お暇致します。どうぞ、仰ってくださってかまいません。」
「本当に、ジャスミン嬢か?いつもと様子が違うからびっくりしてしまって…。」
「はい。殿下、いつもは義母から言われてメイクとめがねとかつらで変装いたしましてよ。今日は、恥ずかしながら素顔のままで参りましたの。」
「なぜ?」
「義母から、王太子殿下いえ、当時は王子様にお会いするのに、みっともないと言われまして、それからずっとお会いするたびに、義母がプロのメイクさんを用意してくれたのでそのまま来ていました。早く、破棄していただいて構いません。わたくし、これから隣国へ実母の実家に参りますので、今、仰ってくださらないと婚約破棄できません。」
「婚約破棄はしない。ジャスミン嬢、あなたをずっと探していたのだ。幼いころ、会ったことがあっただろう。あれ以来、あなたに会いたくて両親にお願いして、婚約者にしてもらったのだ。」
「幼い時、2度殿下にお会いいたしましたわ。1度目は遠くから、2度目は婚約の時に、すでに実母は亡くなった後で、義母が婚約式の時に同席してくれていました。その後、一度も殿下から、お呼びがかからず、今日に至ります。そして、今日、破棄は謹んでお受けいたします。殿下は妹のリリアーヌをお好みだとか、わたくし、お役御免でございますわね。」
踊りながら、いろいろ喋った。
「婚約破棄はしない。このまま式を挙げたいぐらいだ。」
「それは、困ります。フレグランス家にわたくしの居場所など、もうございません。今日、破棄していただいたら、わたくしは家から追放されるのです。もう、どこにも行くところがないので、実母の実家が引き取ってくれるのです。」
王太子は、そこまで話を聞き、すべてを悟った。フレグランス公爵夫人は、後妻で自分の娘を王太子に押し付けたいがために、ジャスミンの存在を隠していたのだった。
王太子は、ジャスミンの手を握ったまま、側近を呼んで、何か指示を出していた。この手を離したら、二度とジャスミンと会えなくなるかと思うと、離すことはできなかった。
王太子が指示を出した答えが返ってきたようだった。ジャスミンの前に跪いて、
「ジャスミン嬢、今すぐ、といっても明日になるだろうが、あなたと結婚式を挙げたい。」
「え?どうして?」
「あなたが、ジャスミン嬢だからです。私の婚約者はジャスミン嬢、ただ一人です。」
「で、でも妹とは?」
「あんな平民、王太子と結婚できるわけがないでしょう。」
「え?」
「フレグランス公爵と夫人は、婚姻届を出されていなかった。夫人と夫人の連れ子は、平民扱いで王太子妃にはなれない。それをはっきりとさせるためです。」
今夜は王宮に泊まるように言われて、実母の実家からの馬車は待機してもらった。
翌日、本当に結婚式が行われた。参列者に、義母と義理妹の姿はなく、父公爵のすまなさそうにしている姿だけがあった。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
すみません。タイトルの婚約破棄が書けなかった。
おわびに、無事、婚約破棄できるバージョンも頑張って書きます。
ところが、今日を最後に実母の実家から、お迎えが来るのよ。それで、お迎えの人がわからなかったら、困るから、今日だけは、素顔をさらしてきていますのよ。
パーティ会場に入ると、だれ?という視線が痛いわ。今まで、ろくすっぽ鏡も見せてもらえなかったんだけど、わたくしって、そんなにブサイクなのかしら?
婚約破棄の決定的瞬間まで、壁の花としゃれこもう。
王太子ロバート様が義理妹リリアーヌを腕にぶら下げながら、入場されたわ。
王太子殿下がわたくしのほうへ近寄ってくる、そうよね、わかるよね、これから婚約破棄を言い渡されるのだから。どうぞ。と思っていたら、妹を振り切って、ジャスミンの前に跪いた。
「なんと!美しい方、お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?できれば、ダンスを一曲。」手を差し出されたので、ビックリした。
「あ、あの…わたくしにですか?」手の方向を見たら、どう見てもジャスミンにだ。
「さ、お手をどうぞ。」
後ろで義理妹が、猛烈睨みつけてくる。
仕方なく、王太子の手を取り、ダンスを踊った。もう10年ぶりぐらい?15年ぶりぐらいになるだろうか?
「お名前は?」
「ジャスミン・フレグランスですわ。王太子殿下。お久しゅうございます。今日、婚約を破棄していただけると聞いて、参上いたした次第でございます。」
「!!!」殿下が目を見開いたまま、固まっている。
「だ、誰がそのようなことを…。」
「あら、妹のリリアーヌと義母からも聞いております。今日は、破棄していただけたら、そのまま、お暇致します。どうぞ、仰ってくださってかまいません。」
「本当に、ジャスミン嬢か?いつもと様子が違うからびっくりしてしまって…。」
「はい。殿下、いつもは義母から言われてメイクとめがねとかつらで変装いたしましてよ。今日は、恥ずかしながら素顔のままで参りましたの。」
「なぜ?」
「義母から、王太子殿下いえ、当時は王子様にお会いするのに、みっともないと言われまして、それからずっとお会いするたびに、義母がプロのメイクさんを用意してくれたのでそのまま来ていました。早く、破棄していただいて構いません。わたくし、これから隣国へ実母の実家に参りますので、今、仰ってくださらないと婚約破棄できません。」
「婚約破棄はしない。ジャスミン嬢、あなたをずっと探していたのだ。幼いころ、会ったことがあっただろう。あれ以来、あなたに会いたくて両親にお願いして、婚約者にしてもらったのだ。」
「幼い時、2度殿下にお会いいたしましたわ。1度目は遠くから、2度目は婚約の時に、すでに実母は亡くなった後で、義母が婚約式の時に同席してくれていました。その後、一度も殿下から、お呼びがかからず、今日に至ります。そして、今日、破棄は謹んでお受けいたします。殿下は妹のリリアーヌをお好みだとか、わたくし、お役御免でございますわね。」
踊りながら、いろいろ喋った。
「婚約破棄はしない。このまま式を挙げたいぐらいだ。」
「それは、困ります。フレグランス家にわたくしの居場所など、もうございません。今日、破棄していただいたら、わたくしは家から追放されるのです。もう、どこにも行くところがないので、実母の実家が引き取ってくれるのです。」
王太子は、そこまで話を聞き、すべてを悟った。フレグランス公爵夫人は、後妻で自分の娘を王太子に押し付けたいがために、ジャスミンの存在を隠していたのだった。
王太子は、ジャスミンの手を握ったまま、側近を呼んで、何か指示を出していた。この手を離したら、二度とジャスミンと会えなくなるかと思うと、離すことはできなかった。
王太子が指示を出した答えが返ってきたようだった。ジャスミンの前に跪いて、
「ジャスミン嬢、今すぐ、といっても明日になるだろうが、あなたと結婚式を挙げたい。」
「え?どうして?」
「あなたが、ジャスミン嬢だからです。私の婚約者はジャスミン嬢、ただ一人です。」
「で、でも妹とは?」
「あんな平民、王太子と結婚できるわけがないでしょう。」
「え?」
「フレグランス公爵と夫人は、婚姻届を出されていなかった。夫人と夫人の連れ子は、平民扱いで王太子妃にはなれない。それをはっきりとさせるためです。」
今夜は王宮に泊まるように言われて、実母の実家からの馬車は待機してもらった。
翌日、本当に結婚式が行われた。参列者に、義母と義理妹の姿はなく、父公爵のすまなさそうにしている姿だけがあった。
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すみません。タイトルの婚約破棄が書けなかった。
おわびに、無事、婚約破棄できるバージョンも頑張って書きます。
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