1 / 150
婚約者の子を身籠った妹
しおりを挟む
今日はシャルロッテ王女様の御誕生日をお祝いする盛大な舞踏会の日、婚約者であるロレッド侯爵令息を探していたら、突然
「侯爵令嬢クラリス、貴様との婚約は破棄して、妹のレイナと婚約する。」と宣言されてしまった。
しかも腕には、レイナをぶら下げている。
「なぜでございますか?」
「それは、その…。レイナが可愛かったので、つい…。」
なんという理不尽な理由。しかし、本当の理由は、違う。
「レイナがロレッドの子を身ごもったからだ。」
あえて、父ローンバルスが、その場で言う。
ロレッドは、青ざめ、膝から崩れる。
「レイナが裸で迫ってきたから、ほんの浮気心のつもりで1度だけ、抱いたらできてしまった。クラリスには、すまないと思っている。」と謝罪した。
「ひどいわっ!ロレッド様、お姉さまより、私のほうが可愛いと仰ったではありませんか。」
「あんなに愛してくださったのに。」
「それは、お前が今日は、安全日だから、と言ったからではないか。」
二人で、ののしりあいを始めた。いずれにせよ我が家の恥である。
私の持っているものは、昔からなんでも欲しがり、奪い取って行った。ドレスでもアクセサリーでも、人形でも。
私が文句を言うと、決まって、レイナは
「お姉さまは、ずるい!」とふてくされ、モノを投げつけて暴れまくった。いわゆる家庭内暴力である。
家族も結局、「クラリスは、お姉さんだから辛抱しなさい。」ということに落ち着くのだ。
騒ぎを聞きつけた本日のヒロイン王女殿下が、
「クラリスもいつも、いつも妹のことで大変な思いをしてきたものね。」
シャルロッテ王女殿下とは、同い年で、学園も同級生だ。
「でも、これでやっと妹を厄介払いできるのだから、良かったじゃない?」
「尤も家庭内暴力をする妹を娶った侯爵家が、大変だろうけどね。」
ケラケラと王女殿下が妹レイナをバカにして笑ったので、妹が顔を真っ赤にして
「なによぉ。人を阿婆擦れみたいに言わないでよぉ。」と姉の友人だからと、気安さもあったのか、王女殿下に掴みかかって、暴力をふるってしまう。
レイナは、不敬罪と王族に対する暴行罪で、衛兵に引きずられていく。
「離しなさいよぉ。ロレッド様ぁ助けてぇ。お姉さまのせいよ!」
最後まで、クラリスのせいにするバカ妹に呆れながら、佇んでいるとロレッドが
「そのぉ、なんだ。さっきの婚約破棄は取り消すということでいいかな?俺は、クラリスを愛しているし、レイナとのことは、事故みたいなものだから。」
いまさら、復縁を迫るロレッドに呆れてものも言えなくなるクラリス。
「浮気が事故なんて、よくそんな都合のいい、言い訳を思いつくわね。」
「婚約破棄は成立しています。相応の慰謝料を支払ってもらいますからね。」
レイナは、地下の冷たい牢の中に入れられる。
身重のレイナにとって、地下の冷たさが身に堪えたのか、次の日、流産してしまった。
流産が、よほどショックだったのか、レイナはおとなしくなり反省の言葉を口にするようになったのだが。
ローンバルス侯爵が身元引受人となって、釈放される。
レイナは、そのままロレッドの婚約者に収まったまま。
しかし、ロレッドとの仲は、ギクシャクしたままで、なかなか婚姻に至らない。
それから時が流れ、ふたたび王女殿下のお誕生日会でのこと、ロレッドは渋々、レイナをエスコートしている。
クラリスは、誰もエスコートしてくれる人がいないので、壁へ向かったら、王太子殿下がクラリスに跪いて、「クラリス嬢、私と踊っていただけませんか?」と仰ってくださいまして。
アデハルト王太子殿下は、ひと月前、留学先から戻って来られたばかりである。
アデハルト王太子殿下にエスコートしていただけるなんて、夢みたい。
一曲終わって、飲み物を口にした時、アデハルト王太子殿下が
「クラリス嬢、わたくしと婚約していただけないでしょうか?実は留学前から、クラリス嬢のことを愛していましたが、当時、あなたには婚約者がいて、言い出せず、そのまま留学していました。今、どなたとも婚約されていないと妹から聞き及びました。」
「はい。謹んでお受けいたします。」と申し上げたら、何やら鋭い視線が
「ちょっと、待ったぁ!お姉さまの幸せは、私の幸せ。お姉さまの代わりに私、妹レイナが婚約者となりましょう。」
ここのところ、おとなしかったレイナ、やはり何も変わっていなかった。
お父様も私もロレッド様も、もちろんアデハルト様も口をポカンと開けたままです。
「あはは。この阿婆擦れ、もう牢から出てきたの?ロレッド様が、お情けで婚約を継続してくださったのに、事もあろうに兄上にちょっかいを出すとは、狂っている!この乱心者を牢へ。」
衛兵がレイナを引きずって行った。
「王女殿下、また助けていただきましたね。」クラリスが礼を言うと
「なによ、お友達でしょ。それに未来のお義姉さんになるのだから、当然でしょう。」
私たちは、いつまでも笑いあった。
一方、レイナは、今回は情状酌量も認められず、ロレッド様との婚約は解消後、侯爵家を勘当の上、国外追放になりました。
今日は、アデハルト王太子殿下との結婚式
父ローンバルス侯爵とヴァージンロードを歩いている。
「お父様、今までいろいろありましたが育てていただき、ありがとうございました。」
「今までの分を取り返す覚悟で幸せにおなり。クラリス」
「義父上、クラリスのことは、お任せください。必ず、幸せにします。」
結婚式が終わり、私たちは初夜を迎え、
1年後、可愛い王子が生まれました。
おしまい
「侯爵令嬢クラリス、貴様との婚約は破棄して、妹のレイナと婚約する。」と宣言されてしまった。
しかも腕には、レイナをぶら下げている。
「なぜでございますか?」
「それは、その…。レイナが可愛かったので、つい…。」
なんという理不尽な理由。しかし、本当の理由は、違う。
「レイナがロレッドの子を身ごもったからだ。」
あえて、父ローンバルスが、その場で言う。
ロレッドは、青ざめ、膝から崩れる。
「レイナが裸で迫ってきたから、ほんの浮気心のつもりで1度だけ、抱いたらできてしまった。クラリスには、すまないと思っている。」と謝罪した。
「ひどいわっ!ロレッド様、お姉さまより、私のほうが可愛いと仰ったではありませんか。」
「あんなに愛してくださったのに。」
「それは、お前が今日は、安全日だから、と言ったからではないか。」
二人で、ののしりあいを始めた。いずれにせよ我が家の恥である。
私の持っているものは、昔からなんでも欲しがり、奪い取って行った。ドレスでもアクセサリーでも、人形でも。
私が文句を言うと、決まって、レイナは
「お姉さまは、ずるい!」とふてくされ、モノを投げつけて暴れまくった。いわゆる家庭内暴力である。
家族も結局、「クラリスは、お姉さんだから辛抱しなさい。」ということに落ち着くのだ。
騒ぎを聞きつけた本日のヒロイン王女殿下が、
「クラリスもいつも、いつも妹のことで大変な思いをしてきたものね。」
シャルロッテ王女殿下とは、同い年で、学園も同級生だ。
「でも、これでやっと妹を厄介払いできるのだから、良かったじゃない?」
「尤も家庭内暴力をする妹を娶った侯爵家が、大変だろうけどね。」
ケラケラと王女殿下が妹レイナをバカにして笑ったので、妹が顔を真っ赤にして
「なによぉ。人を阿婆擦れみたいに言わないでよぉ。」と姉の友人だからと、気安さもあったのか、王女殿下に掴みかかって、暴力をふるってしまう。
レイナは、不敬罪と王族に対する暴行罪で、衛兵に引きずられていく。
「離しなさいよぉ。ロレッド様ぁ助けてぇ。お姉さまのせいよ!」
最後まで、クラリスのせいにするバカ妹に呆れながら、佇んでいるとロレッドが
「そのぉ、なんだ。さっきの婚約破棄は取り消すということでいいかな?俺は、クラリスを愛しているし、レイナとのことは、事故みたいなものだから。」
いまさら、復縁を迫るロレッドに呆れてものも言えなくなるクラリス。
「浮気が事故なんて、よくそんな都合のいい、言い訳を思いつくわね。」
「婚約破棄は成立しています。相応の慰謝料を支払ってもらいますからね。」
レイナは、地下の冷たい牢の中に入れられる。
身重のレイナにとって、地下の冷たさが身に堪えたのか、次の日、流産してしまった。
流産が、よほどショックだったのか、レイナはおとなしくなり反省の言葉を口にするようになったのだが。
ローンバルス侯爵が身元引受人となって、釈放される。
レイナは、そのままロレッドの婚約者に収まったまま。
しかし、ロレッドとの仲は、ギクシャクしたままで、なかなか婚姻に至らない。
それから時が流れ、ふたたび王女殿下のお誕生日会でのこと、ロレッドは渋々、レイナをエスコートしている。
クラリスは、誰もエスコートしてくれる人がいないので、壁へ向かったら、王太子殿下がクラリスに跪いて、「クラリス嬢、私と踊っていただけませんか?」と仰ってくださいまして。
アデハルト王太子殿下は、ひと月前、留学先から戻って来られたばかりである。
アデハルト王太子殿下にエスコートしていただけるなんて、夢みたい。
一曲終わって、飲み物を口にした時、アデハルト王太子殿下が
「クラリス嬢、わたくしと婚約していただけないでしょうか?実は留学前から、クラリス嬢のことを愛していましたが、当時、あなたには婚約者がいて、言い出せず、そのまま留学していました。今、どなたとも婚約されていないと妹から聞き及びました。」
「はい。謹んでお受けいたします。」と申し上げたら、何やら鋭い視線が
「ちょっと、待ったぁ!お姉さまの幸せは、私の幸せ。お姉さまの代わりに私、妹レイナが婚約者となりましょう。」
ここのところ、おとなしかったレイナ、やはり何も変わっていなかった。
お父様も私もロレッド様も、もちろんアデハルト様も口をポカンと開けたままです。
「あはは。この阿婆擦れ、もう牢から出てきたの?ロレッド様が、お情けで婚約を継続してくださったのに、事もあろうに兄上にちょっかいを出すとは、狂っている!この乱心者を牢へ。」
衛兵がレイナを引きずって行った。
「王女殿下、また助けていただきましたね。」クラリスが礼を言うと
「なによ、お友達でしょ。それに未来のお義姉さんになるのだから、当然でしょう。」
私たちは、いつまでも笑いあった。
一方、レイナは、今回は情状酌量も認められず、ロレッド様との婚約は解消後、侯爵家を勘当の上、国外追放になりました。
今日は、アデハルト王太子殿下との結婚式
父ローンバルス侯爵とヴァージンロードを歩いている。
「お父様、今までいろいろありましたが育てていただき、ありがとうございました。」
「今までの分を取り返す覚悟で幸せにおなり。クラリス」
「義父上、クラリスのことは、お任せください。必ず、幸せにします。」
結婚式が終わり、私たちは初夜を迎え、
1年後、可愛い王子が生まれました。
おしまい
21
お気に入りに追加
2,394
あなたにおすすめの小説
【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」
まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05
仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。
私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。
王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。
冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。
本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
転生令嬢だと打ち明けたら、婚約破棄されました。なので復讐しようと思います。
柚木ゆず
恋愛
前世の記憶と膨大な魔力を持つサーシャ・ミラノは、ある日婚約者である王太子ハルク・ニースに、全てを打ち明ける。
だが――。サーシャを待っていたのは、婚約破棄を始めとした手酷い裏切り。サーシャが持つ力を恐れたハルクは、サーシャから全てを奪って投獄してしまう。
信用していたのに……。
酷い……。
許せない……!。
サーシャの復讐が、今幕を開ける――。
私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!
近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。
「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」
声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。
※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です!
※「カクヨム」にも掲載しています。
婚約破棄から聖女~今さら戻れと言われても後の祭りです
青の雀
恋愛
第1話
婚約破棄された伯爵令嬢は、領地に帰り聖女の力を発揮する。聖女を嫁に欲しい破棄した侯爵、王家が縁談を申し込むも拒否される。地団太を踏むも後の祭りです。
悪役令嬢のお姉様が、今日追放されます。ざまぁ――え? 追放されるのは、あたし?
柚木ゆず
恋愛
猫かぶり姉さんの悪事がバレて、ついに追放されることになりました。
これでやっと――え。レビン王太子が姉さんを気に入って、あたしに罪を擦り付けた!?
突然、追放される羽目になったあたし。だけどその時、仮面をつけた男の人が颯爽と助けてくれたの。
優しく助けてくれた、素敵な人。この方は、一体誰なんだろう――え。
仮面の人は……。恋をしちゃった相手は、あたしが苦手なユリオス先輩!?
※4月17日 本編完結いたしました。明日より、番外編を数話投稿いたします。
転生した女性騎士は隣国の王太子に愛される!?
桜
恋愛
仕事帰りの夜道で交通事故で死亡。転生先で家族に愛されながらも武術を極めながら育って行った。ある日突然の出会いから隣国の王太子に見染められ、溺愛されることに……
クズな義妹に婚約者を寝取られた悪役令嬢は、ショックのあまり前世の記憶を思い出し、死亡イベントを回避します。
無名 -ムメイ-
恋愛
クズな義妹に婚約者を寝取られ、自殺にまで追い込まれた悪役令嬢に転生したので、迫りくる死亡イベントを回避して、義妹にざまぁしてやります。
7話で完結。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる