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番外編

97.ワーホリ2

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 ワーホリ生活も順調で、ケビンとも付き合うようになり、毎日が充実してくる。ケビンは、なんと医療従事者で、ここでも真理は、実家の病院を引きずっているようで、出会う男性は皆、医療関係者ばかりなのが不思議だと思う。

 真理は、異世界でどういうわけか、聖女様と呼ばれていることから、真理からは何かしら、そういうオーラが漏れ出ているのではないかと考えられる。

 まあ、とどのつまりが考えてもよくわからないのだけど、ケビンは、今年医師国家試験を受けるそうで、だから互いに切磋琢磨しているというわけ。

「マリの家じゃ、病院をやっているんだろう?その病院に実務研修に行くことは可能だろうか?」

「行けると思うけど、それでは離れ離れになっちゃうじゃん!せっかく仲良くなれたのに」

 真理は、ぷぅーっと頬を膨らませながら言う。

「もちろんマリのワーキングホリデーが修了した後に行こうと思っているよ。だから一緒にニッポンへ行って、案内してくれると嬉しいな、と思ってね」

「なんだ。そういうこと?それなら大丈夫よ。今度は私が東京を案内してあげる」

「ねえ、少し気が早いけど、マリ、僕と結婚してくれない?」

「え?それは結婚を前提としたお付き合いっていう意味?」

「もちろんだよ。僕、マリとはきちんとした気持ちで真面目に付き合いたいと思っている。だから、マリが望むなら、今すぐにでも結婚してもいいと思っているよ。ただ在留資格が変更になってもいいなら、という話だけど」

「ありがとう。ケビン、嬉しいわ」

「え!いいの?本当?やったぁー!一生大事にするよ」

 二人は抱き合い、そのまま唇を重ねる。

 真理は、悦びでいっぱい。やっとカレシができたので、マサユキとは婚約していても、政略だから恋人関係ではなかったから、やっとできた彼氏に心躍る。

 これでもう、大きな顔をしてニッポンへ帰れる。真理は、雑賀記念病院の跡取り娘だから、これまでも大学の友達や同級生から、そういう目で見られていて、正直なところ、息が詰まる思いをしていたのだ。

 真理に近寄ってくる男性は皆、将来の院長先生になりたがるものばかりで、本当に好きで近づいてくる者はいない。

 雑賀の財産とお金目的だから、真理のことはいつも金づるにしか見てもらえない。

 それがワーキングホリデーがきっかけとして、まさか結婚を前提とした恋人までできるだなんて、夢にも思ってもみなかったことで、嬉しいというか、やっと春が来たって感じがする。

 そんな時に、また異世界から魔法鳥が飛んでくる。

 ったく、しつこいというにも程があるってものよ。どうしたものかと、思い悩んでいると、ケビンがいろいろ聞いてくれる。

「どうしたのマリ?何か困っていることがあるの?あっったら相談に乗るよ」

「ありがとう。でも、言っても信じてもらえないことだから」

「信じるよ。真理がどこかへ行くのなら、僕も一緒に行く」

「でも……」

 ケビンは、マリの手を握りしめながら、優しく問いかける。

「何でも話してごらん。僕たちは夫婦になるのだから、これからは夫婦の問題として乗り越えよう」

「……実は、約半年前に異世界へ召喚されてしまって、そこから走って逃げたの。でもその後も、何度もお手紙が来て、今回もまた……」

「え!まるでラノベみたいな話だね。それで?マリだけが呼ばれているの?」

「たまたま逃げ出したのが私だけで、4人で召喚されて、私だけが1時間も大理石の床の上で座らせ続けさせられて、近くにいた人に問い詰めたら、元の世界に帰った人は今までいないとか、なんとか言われて、カっとなって逃げだしたの。そしたら、たまたま懐かしい光景が光の中に見えたので、その光の中に思い切って飛び込んでみたら、元の世界に戻ってくることができたの」

「それは、たぶん魔法だな。異世界へ行ったことでチートスキルがもらえたのだと思うよ」

「チートスキル?それ以来、私だけが聖女認定されたみたいで、何か聖女様になる条件があったのかもしれないけど、以降、時々異世界から鳥が飛んでくるのよ」

「マリはとにかく魔法の勉強をした方がいいよ、学業以外に」

「ええっ!?どうやってすれば、いいかわからない」

「昔、呼んだラノベの中にそういうのがあったよ。確か心の中か口に出してかは、忘れたけど、ステータスと呟いてみて」

「ステータス?」

 突如、ボワンと目の前にアクリル板のような形状のものが現れ、何か書いてあるのが見える。

 何?これ?



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



名前: 雑賀真理   
職業: 聖女、見習い医師、ベビーシッター

HP体力: 999999/999999
MP創造力: 999999/999999

基礎レベル: 999

聖魔法: ∞



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



「え…と、聖魔法が無限大になっているけど、それ以外は何も書いていないわ」

「だったら、やりたいと思えることなんでもできるのでは?」

「やりたいことって?例えば?」

「僕と抱き合いたいとか?」

「んもうっ!真面目に聞いていて、損した気分だわ」

「異空間収納や転移魔法、鑑定魔法もできるはずだよ?」

「うーん。ノベルでは読んだことがあるけど、よくわからないわ」

「よくあるのは、クローゼットの中で、転移魔法を使うと、異空間で通路ができて、誰でも一瞬にして、その通路が行く先につながっているという物語はあるね」

「だいたい自分が転移魔法を使っているなどという意識はまるでないの。小鳥ちゃんが来て、指定された魔方陣が出現するとそれに乗って、異世界へ行くという感じなのだから、でも向こうから、元の世界へ戻る時は、なぜか行きたい場所が目の前に浮かんでくるので、そこに気持ちを持っていくと知らない間に、その場所に飛ぶように行けているということなのよ」

「ふーん。じゃあ試しにニッポン、真理の家に遊びに行きたいな」

「えーっ!行けるかな?失敗したらどうしよう」

「大丈夫だよ。今のところ、僕しか見ていないのだから」

 ちょっと深呼吸して、息を整える。そして、真理の自宅の部屋を思い浮かべ、思い切って飛んでみた。

 目の前にいたケビンの顔がみるみる薄れていく。その中で、ケビンは雲を掴むような手つきで、真理を抱きしめようともがいている。

 気が付けば、東京の真理の部屋にいる。ここに来たという証拠を何か持って帰った方がいいわね。

 庭へ出て、色づき始めたモミジの葉っぱを一枚拾うと、ケビンがいる公園に戻る。

「ただいま。これ、お土産ね」

「まさか……本当だったとは、思ってもみなかったよ」

「コレって考えれば、便利よね。ちょっと大学に顔を出してくるわね」

「あ!ちょっと待って、それならマリのご両親に挨拶するため、僕も連れて行ってよ」

「ああ、うん。さっきも一瞬、それを考えたけど、一人でしか飛んだことがなくて……、失敗したら、ケビンを時空のはざまに落っことしちゃうかもしれないので……」

「ほらSF小説にあるみたいに、クローゼットとクローゼットを繋げば、問題なく行けるのでは?」

「そうね。問題は、どことどこを繋ぐかよね?」

 いろいろ悩んで、ケビンの家のクローゼットとニッポンを繋ぐことにする。

 もう朱美先輩とルームシェアは解消して、今はケビンと同棲しているので、真理の家でもある。

 この魔法を使いこなすことができたなら、通学時間、通勤時間がゼロに案るという喜ばしいことが実現する。

 メルボルンは、それほどでもないけど、東京のメトロに乗らなくてもいいということはかなり助かる。

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