ブチギレ令嬢の復讐婚~親友と浮気され婚約破棄、その上結婚式場として予定していた場所まで提供してほしいと言われ💔

青の雀

文字の大きさ
上 下
93 / 99
第4章

92.ざまあ2

しおりを挟む
「え?ジェニファーが聖女様になられたのなら、大丈夫です!アイツは、俺にぞっこんだから、すぐにでも王配になれることでしょう」

「この国の法で、一度婚約破棄した相手とは、二度と婚約できないという掟がある」

「そんなもの聖女様であるジェニファーが替えたら、何も問題はない」

「お前、本当にバカだな。聖女様がお前みたいなバカともう一度婚約することはあるまい。それにな、初代聖女様がお創りになった世界規範からすれば、ビクトリアは娼館落ち、お前は廃嫡することが決定済みなんだよ。だから貴族でも何でもない一介の平民に堕ちると言っただろ?」

「え!父上、なんとかしてくださいよ。廃嫡に娼館落ちだなんて、あんまりではありませんか?そんな……こんなはずではなかった。俺は今でもアイツを愛している!」

「お前はそれだけのことをしでかしたということが、なぜわからない?いつまで子供気分のお花畑頭をしているのか。もっとも、女を抱く子供など存在せんがな」

 すっかり意気消沈の前王太子に比べ、ビクトリアは今の話を聞いて、こうしちゃいられないとばかりに、暇乞いをして、帰宅する。

 お城にいると、いつ娼館へ売り飛ばされるか分かったものではないから。帰宅して、さっさと逃げる算段でも始めるつもり、それにしても、あのジェニファーが聖女様になったとは、青天の霹靂だったことは間違いない。

 それなら、わざわざ前の王太子なんか略奪しないで、聖女様の幼馴染でご学友のポジションの方がどれだけ美味しかったか計り知れない。

 こんなはずではなかった。ジェニファーの泣きっ面を見られれば、それで満足するはずだったのが、結局見られず、やり過ぎてしまった感は半端なくある。

「あーあ。面白くない。とりあえず、領地にでも、引っ込もうかなぁ」

 スーツケースを取り出し、荷物をまとめていると、部屋の扉がノックされる。

 父だった。父は怖い顔をして、部屋に入ってくるなり、いきなりビクトリアは往復ビンタをされる。

「え?」

「よくも、俺の顔に泥を塗ってくれたな。お前のことはもう娘だとは、思わない勘当する!」

 ビクトリア公爵は、今や公爵でいられるかどうか瀬戸際にいる。聖女様から婚約者を奪った家として、有名になってしまったからで、それどころか、お父様は爵位返上まで考えていらっしゃるとは、思ってもみなかったことに驚いてしまう。

「ごめんなさい。お父様」

「ビクトリア、お前にもう帰る家はないのだぞ。しっかりお勤めしてこい!」

 それは、父から事実上の娼館行きを命ぜられた瞬間だった。

 ビクトリアは、膝から崩れ落ち、号泣したが誰も助けてくれない。世界規範を破った娘に対して、父としてせめてもの温情をかけたつもりでいる。

 大昔も前の話になるが、聖女様から婚約者を奪った貴族令嬢は、いったん修道院に入れられるも、あまりにも魂が汚れていると判断されたのち、修道院から娼館どころか女郎宿に売られ、一生そこから出ることなく生涯を閉じたという話が伝わっている。

 だから修道院ではなく、娼館に公爵家から売った方が、待遇がまだマシだということが明らかになったわけであって、売却代金も公爵家に入ることから、勘当しなければならないほどに迷惑をかけられた娘の賠償金だと捉えられている。

 下手に修道院に送れば、修道院の利益になることから、先に修道院ではなく、娼館に売ってしまう親が多いのも頷ける話。

 娘を娼館行きの馬車に乗せたストロング公爵は、このような結果を招いてしまったのは、すべて自分が子育てを誤ったからのことと申し、爵位と領地をマッキントッシュ家に返上し、そのまま旅に出ることにする。

 その後、ストロング公爵の姿を見たものは誰一人いなく、おそらく死出の旅に旅立ったものと思われた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

【完結】「君を手に入れるためなら、何でもするよ?」――冷徹公爵の執着愛から逃げられません」

21時完結
恋愛
「君との婚約はなかったことにしよう」 そう言い放ったのは、幼い頃から婚約者だった第一王子アレクシス。 理由は簡単――新たな愛を見つけたから。 (まあ、よくある話よね) 私は王子の愛を信じていたわけでもないし、泣き喚くつもりもない。 むしろ、自由になれてラッキー! これで平穏な人生を―― そう思っていたのに。 「お前が王子との婚約を解消したと聞いた時、心が震えたよ」 「これで、ようやく君を手に入れられる」 王都一の冷徹貴族と恐れられる公爵・レオンハルトが、なぜか私に異常な執着を見せ始めた。 それどころか、王子が私に未練がましく接しようとすると―― 「君を奪う者は、例外なく排除する」 と、不穏な笑みを浮かべながら告げてきて――!? (ちょっと待って、これって普通の求愛じゃない!) 冷酷無慈悲と噂される公爵様は、どうやら私のためなら何でもするらしい。 ……って、私の周りから次々と邪魔者が消えていくのは気のせいですか!? 自由を手に入れるはずが、今度は公爵様の異常な愛から逃げられなくなってしまいました――。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ

曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。 婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。 美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。 そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……? ――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。

当麻月菜
恋愛
フェルベラ・ウィステリアは12歳の時に親が決めた婚約者ロジャードに相応しい女性になるため、これまで必死に努力を重ねてきた。 しかし婚約者であるロジャードはあっさり妹に心変わりした。 最後に人間性を疑うような捨て台詞を吐かれたフェルベラは、プツンと何かが切れてロジャードを回し蹴りしをかまして、6年という長い婚約期間に終止符を打った。 それから三ヶ月後。島流し扱いでフェルベラは岩山ばかりの僻地ルグ領の領主の元に嫁ぐ。愛人として。 婚約者に心変わりをされ、若い身空で愛人になるなんて不幸だと泣き崩れるかと思いきや、フェルベラの心は穏やかだった。 だって二度目の婚約者には、もう何も期待していないから。全然平気。 これからの人生は好きにさせてもらおう。そう決めてルグ領の領主に出会った瞬間、期待は良い意味で裏切られた。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

処理中です...