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第4章
88.駆け落ち
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「あっ。あっ。あっ。あっ。ああん、いや、ダメ……っっ」
「そう?じゃ、やめるよ?」
「意地悪!もっと、もっと奥まで突いて……、ああん、イイ、そこ……」
いつものように、ひとしきり愛し合った後、ジェニファーは、急に真面目な顔をして、レオナルドと向き合う。
「あのね。月のモノが来ないの。妊娠したかもしれない」
一時期、自暴自棄になったことがあり、ジェニファーを孕まそうとしたことがあったけど、あの時はタイミングが合わず、結局、できなかったというのに、なんで今更、と思うこのタイミングで妊娠したと告げられるのか?
「そうか。ありがとう。嬉しいよ」
「結婚してくれますか?」
「旦那様は、お許しにならないだろう?」
「それでも産みたいの」
「平民になっても、いいというのか?」
「ええ。覚悟はできております」
「わかった。駆け落ちしよう。誰も知らない土地に行き、そこで親子3人で暮らそう」
「嬉しいですわ。この家から持ち出せるものを準備しないといけませんわね」
それからというものジェニファーとレオナルドは、少しずつ宝石や現金を貯めるようにして、いつでも駆け落ちできるように準備を進めていく。
そして、今度の満月の夜に決行することが決まる。
「本当に旦那様には、何も言わなくていいのか?」
「言ってもどうせダメって言われることがわかっていて、言うわけにはいきませんし、それにレオナルド様と引き離される可能性が十分考えられますから、置手紙をして黙って出ていくつもりです」
「わかった。俺も気取られぬように気をつける。馬車ではなく、馬で行こうと思う」
「ええ。わたくしも愛馬のカルメンを連れて行くつもりでいます」
レオナルドは、ジェニファーを伴い市井にある実家を訪れる。駆け落ちしたとなれば、一番にレオナルドの実家が調べられると思うことから、実家になるだけ迷惑をかけたくなかったが、今度ばかりは仕方がない。
それであらかじめ、ジェニファーを伴い、これから起こりうることを話しておくことにしたのだ。
「ほう。お貴族様のお嬢様と駆け落ちとは……」
「そういうわけで、これから何かとこのあたりも騒がしくなるが、辛抱してくれ」
「いいってことよ。それより、あの話はそちらのお嬢さんにしたのかい?」
「いや、まだ」
「あの話とは?」
「倅は、私ら夫婦の本当の倅ではないのさ」
「つまり捨て子だということさ」
「それは、ひょっとすれば、どこかのご落胤という可能性もあるのでは?」
「そうだとしても、捨て子に変わりがないわけで、親父やおふくろには感謝しているよ」
「わたくしからも、お礼を言わせていただきますわ。よくぞ、立派な息子さんに育てていただき、ありがとうございました」
「よしとくれなよ。カラダに気をつけてな」
そして、いよいよ満月の夜が来て、二人は示し合わせたかのように真夜中にそろって、家を後にする。
静寂な空気の中で、馬の蹄の音だけが聞こえる。
国境付近まで、一気に駆け抜きたいところだが、月明かりしかない中、むやみに暴走することは却って危険を招きかねない。
明日になれば、公爵邸で大騒ぎになることは目に見えている。でも、こうでもしなければ、レオナルドと一緒になることは不可能。お腹の子供も堕ろせと言われるのがオチというものだから。
目指すは、ここから一番近い国境はシドニー国との境、シドニー国に入れば、海を渡って、さらに遠くへ逃げるつもりでいる。
逃げて、逃げて、そして誰も知らない土地で、子供を産む。子供さえ産めば、後は何とでもなるはず。その気になれば、どこかのメイドにでもなればいいのだもの。
一応、お妃教育という名の高等教育を受けているもの。今から考えると、あれはあれでかなり役立つと思うわ。
だから何も心配していない。とにかく聖女国の息のかからないところまで、レオナルドと二人で逃げおおせばいいだけのこととその時は、信じていた。
「そう?じゃ、やめるよ?」
「意地悪!もっと、もっと奥まで突いて……、ああん、イイ、そこ……」
いつものように、ひとしきり愛し合った後、ジェニファーは、急に真面目な顔をして、レオナルドと向き合う。
「あのね。月のモノが来ないの。妊娠したかもしれない」
一時期、自暴自棄になったことがあり、ジェニファーを孕まそうとしたことがあったけど、あの時はタイミングが合わず、結局、できなかったというのに、なんで今更、と思うこのタイミングで妊娠したと告げられるのか?
「そうか。ありがとう。嬉しいよ」
「結婚してくれますか?」
「旦那様は、お許しにならないだろう?」
「それでも産みたいの」
「平民になっても、いいというのか?」
「ええ。覚悟はできております」
「わかった。駆け落ちしよう。誰も知らない土地に行き、そこで親子3人で暮らそう」
「嬉しいですわ。この家から持ち出せるものを準備しないといけませんわね」
それからというものジェニファーとレオナルドは、少しずつ宝石や現金を貯めるようにして、いつでも駆け落ちできるように準備を進めていく。
そして、今度の満月の夜に決行することが決まる。
「本当に旦那様には、何も言わなくていいのか?」
「言ってもどうせダメって言われることがわかっていて、言うわけにはいきませんし、それにレオナルド様と引き離される可能性が十分考えられますから、置手紙をして黙って出ていくつもりです」
「わかった。俺も気取られぬように気をつける。馬車ではなく、馬で行こうと思う」
「ええ。わたくしも愛馬のカルメンを連れて行くつもりでいます」
レオナルドは、ジェニファーを伴い市井にある実家を訪れる。駆け落ちしたとなれば、一番にレオナルドの実家が調べられると思うことから、実家になるだけ迷惑をかけたくなかったが、今度ばかりは仕方がない。
それであらかじめ、ジェニファーを伴い、これから起こりうることを話しておくことにしたのだ。
「ほう。お貴族様のお嬢様と駆け落ちとは……」
「そういうわけで、これから何かとこのあたりも騒がしくなるが、辛抱してくれ」
「いいってことよ。それより、あの話はそちらのお嬢さんにしたのかい?」
「いや、まだ」
「あの話とは?」
「倅は、私ら夫婦の本当の倅ではないのさ」
「つまり捨て子だということさ」
「それは、ひょっとすれば、どこかのご落胤という可能性もあるのでは?」
「そうだとしても、捨て子に変わりがないわけで、親父やおふくろには感謝しているよ」
「わたくしからも、お礼を言わせていただきますわ。よくぞ、立派な息子さんに育てていただき、ありがとうございました」
「よしとくれなよ。カラダに気をつけてな」
そして、いよいよ満月の夜が来て、二人は示し合わせたかのように真夜中にそろって、家を後にする。
静寂な空気の中で、馬の蹄の音だけが聞こえる。
国境付近まで、一気に駆け抜きたいところだが、月明かりしかない中、むやみに暴走することは却って危険を招きかねない。
明日になれば、公爵邸で大騒ぎになることは目に見えている。でも、こうでもしなければ、レオナルドと一緒になることは不可能。お腹の子供も堕ろせと言われるのがオチというものだから。
目指すは、ここから一番近い国境はシドニー国との境、シドニー国に入れば、海を渡って、さらに遠くへ逃げるつもりでいる。
逃げて、逃げて、そして誰も知らない土地で、子供を産む。子供さえ産めば、後は何とでもなるはず。その気になれば、どこかのメイドにでもなればいいのだもの。
一応、お妃教育という名の高等教育を受けているもの。今から考えると、あれはあれでかなり役立つと思うわ。
だから何も心配していない。とにかく聖女国の息のかからないところまで、レオナルドと二人で逃げおおせばいいだけのこととその時は、信じていた。
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