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第3章

77.思い出の旅3

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 父は、聖女様過去の旅が気に入ったみたいで、良かったというべきか、複雑な心境である。

 次は、バラード国に行くつもりでいるが、ジャガード国が本当の生まれ故郷だけど、ここへはどうしても行きたくない。もうあれから200年は経っているので、たぶん復興はしていると思うけど、あまりいい思い出がないので、行きたくない。

 ジャガードで暮らしているときは、失意のどん底で、どんなに元婚約者のアーノルドや親友のスカーレットを憎んだかわからない。

 それなのに、ジャガード国へ行き、聖女様に祀り上げられてから、人生は一変してしまったのだ。

 あれだけ他人を憎んでも、聖女になる時はなるものだと身に染みて、わかったこと。

 聖女だからと言って、聖人君子ではない。普通の人間で、少し神様に近いというだけなのだ。

 そういう意味でも、あの時ジェニファーをもらってくれたアレクサンダーには、感謝してもしきれない恩義がある。

 それにイケメンだったしね。

 アーノルドなんかより、比べ物にならないぐらい綺麗な顔立ちをされていた。だからスカーレットやアーノルドに対して、ざまあみろと言う気持ちもあり、結婚を承諾したんだっけ。

 思えば、ずいぶん失礼な結婚だったと今でも思うところがあるけど、あの時は、もう自分を守ることだけで必死だったもの。

 バラード国は、今も昔も変わらぬ大国だった。目抜き通りを出ると、聖女様像が嫌でも目に入ってくる。慈愛に満ちた微笑みで、大勢の子供たちに取り囲まれている像、隣には初代アレクサンダー様の像もあり、死ぬまでわたくしのことをいつくしみ愛してくださった殿方であったことに間違いはない。

 ジェニファーは、そっとアレクサンダー様の像に駆け寄り、その足を撫でる。

「初代の旦那様か?」

 返事の代わりにニッコリと微笑む。

 バラード国から、いったん帰宅し、食堂で、料理長からもらったお弁当を広げることにしたのだ。

 それをお母様が不思議そうに眺めていらっしゃる。

「有意義な仕入れだったよ」

「嘘ばっかり」

 ジェニファーは買ってきたモノを伝票とともに、いったん倉庫に入れる。

 もし、可能なら、もう一度アレクサンダー様にお会いしたい。ただし、銅像だけど、もう120年ぐらい前にお亡くなりになっているから、どこかに転生されていてもおかしくはない。

 午後からは、同じようにケセラン、パサランから始まって、南国の旅を楽しむことにする。

 パサラン国は、鉱業の国で、確かここでお祈りを捧げたんだっけ。

 お土産に宝石の小粒をたくさんいただいたけど、ここの王子様とは結婚に至らなかった。王子様の心には、前の婚約者がいらっしゃったから。不幸にして、亡くなられた婚約者の身代わりには、なれない。

 パサラン国で、宝石をたくさん買い求める。これも売るつもりの商品として、宝石を加工する技術も、この国は他国と比べて、圧倒的に進んでいるが、今日のところは、加工前の品物だけを買うことにする。

 そうだわ!ついでだから、ここでお母様にお土産を買っていこう。あの時は、ロクに観光もせずに、お祈りと祝福だけで、時間がかかって、その後、こちらの王子様から夜這いされてしまって、メロメロになったけどね。

 後は、シドニー国とムーラン国、それに聖女島を覗いて、帰るだけとなり、もう気分的には帰路モードに入っている。

 先に聖女島が近かったので、それで聖女島を覗く。大聖堂の前にゲートで現れたジェニファーとお父様に、修道士が近づいてきて、

「おかえりなさい。聖女様」

 ビックリした。もうジェニファーを知っている人はみんな死んだと思っていたのに。聞けば、この大聖堂の前に若い女性が通りかかれば、誰にでも言っているサービスだそうで、真に受けたことに苦笑する。
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