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第3章

75.思い出の旅1

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 アイリーンの修道院行きは、ムーラン国に衝撃をあたえた。アイリーンが修道院へ送られたということは、アラミスは、やはり間違いなく天罰で落雷死したことが確実になったからで、すなわち、アラミスの故郷に、1000年に一度の聖女様かそれに準ずる存在がいるということが明らかになった瞬間でもある。

 これは、なんとしてでも、聖女様をお迎えせねばならない。

 ムーラン国は、偽聖女様しか輩出していないということが、あまりにも不名誉なことだから。

 大陸を横断して、1年かければ、到着するだろう。しかし、そんなことをしているうちに、他の国に先を越されるかもしれない。途中で、馬を乗り捨てて行けば、もっと早く到着できるだろうが、馬はせいぜい走っても30分が限度、競走馬のような馬は早いが、5分しか走れない。

 どうしたものか、諦めるか、思案のしどころというところ。



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



 その頃、ジェニファーに魔法鳥が届いている。送り主は、ムーラン国で、懐かしいと感じている。

 でもそれは、同時に縁談かもしれないと身構えてしまうことも確かだ。

 ムーラン国で、アラミスが落雷死したことを知らせる内容から始まる。アラミスの元婚約者という線から辿って、ジェニファーに手紙を送ったらしい。

「もし、聖女様であれば、一度、我が国へいらしてください」

 懐かしいだけでは行けないのよ。だって、聖女様であることは、まだ親にも言っていないことだもの。

 それに隣国のシドニー国のことはあるしね。今は前世の聖女様の子孫が国の政治を行っているのに、その魂が転生しただけということで口出しすることはできない。

 でも、ムーラン国は、懐かしいな。それに聖女島も今もあるのかしら?

 思い出してしまったら、急に前々世の聖女領が今はどうなっているのか、見てみたい気がする。

 でも、今行ったら、今世の聖女様がジェニファーだってバレてしまう。ご先祖様が、また聖女様になって転生していることは知りたくないだろう。

 ちょっと見に行って帰ってくるぐらいなら、問題ないかも?空中クローゼットを自室のクローゼットの中に展開してみる。

 驚いたことにアルカイダ行きの扉も、ジャガード国行きの扉も普通にある。聖女領地行きの扉も聖女島行きの扉もそのままある。

 これはもう行けるということに他ならない。

 父に言う方がいいかな?そうすれば、流通の仕方が激変するもの。わざわざ、遠方まで荷馬車で運ぶ必要もなくなる。

 その日、父が帰ってきてから、話をすることにした。

「お父様、お話があります」

「お!ジェニファーか、ひょっとして、向かいの家がアサシン国で盗賊に襲われたことと関係があるのかな?」

「え!なんですって!アラミスばかりか、シャーリー侯爵まで?」

「またシャーリー夫人が、ジェニファーに泣きついて、商品をまわしてくれと言ってきたのかと思ったんだよ。違うのなら、いいよ。話とは、何だい?」

「アサシンは陶磁器が有名ですものね」

「さすが、パパの娘だけあって、よく知っているね」

「実は、お父様、これからいうことは他言無用に願います」

「ふむ。いいだろう」

「実は、わたくし聖女様なのです。それも、3度目の聖女様」

「は?3度目とは、どういうことだ?」

「聖女様は1000年に一度しか誕生しないものなのですが、人々は、残り900年の間、聖女様なしで暮らしていかなければなりません。そこで神様は、最初に誕生した聖女様を転生させて、1000年の時を維持するというわけです」

「なるほど、利にはかなっているな」

「2度転生して、今世は3度目の聖女様をしているというわけですが、先ごろ、アラミスがムーラン国で亡くなったという噂を耳にしまして、……実は、前世、ムーラン国といかばかりのご縁があり、アラミスの元婚約者が聖女様の可能性があるということから、わたくしに魔法鳥をよこしてきた次第でございます」

 そう言いながら、父に手紙の内容を見せる。
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