75 / 99
第3章
75.思い出の旅1
しおりを挟む
アイリーンの修道院行きは、ムーラン国に衝撃をあたえた。アイリーンが修道院へ送られたということは、アラミスは、やはり間違いなく天罰で落雷死したことが確実になったからで、すなわち、アラミスの故郷に、1000年に一度の聖女様かそれに準ずる存在がいるということが明らかになった瞬間でもある。
これは、なんとしてでも、聖女様をお迎えせねばならない。
ムーラン国は、偽聖女様しか輩出していないということが、あまりにも不名誉なことだから。
大陸を横断して、1年かければ、到着するだろう。しかし、そんなことをしているうちに、他の国に先を越されるかもしれない。途中で、馬を乗り捨てて行けば、もっと早く到着できるだろうが、馬はせいぜい走っても30分が限度、競走馬のような馬は早いが、5分しか走れない。
どうしたものか、諦めるか、思案のしどころというところ。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
その頃、ジェニファーに魔法鳥が届いている。送り主は、ムーラン国で、懐かしいと感じている。
でもそれは、同時に縁談かもしれないと身構えてしまうことも確かだ。
ムーラン国で、アラミスが落雷死したことを知らせる内容から始まる。アラミスの元婚約者という線から辿って、ジェニファーに手紙を送ったらしい。
「もし、聖女様であれば、一度、我が国へいらしてください」
懐かしいだけでは行けないのよ。だって、聖女様であることは、まだ親にも言っていないことだもの。
それに隣国のシドニー国のことはあるしね。今は前世の聖女様の子孫が国の政治を行っているのに、その魂が転生しただけということで口出しすることはできない。
でも、ムーラン国は、懐かしいな。それに聖女島も今もあるのかしら?
思い出してしまったら、急に前々世の聖女領が今はどうなっているのか、見てみたい気がする。
でも、今行ったら、今世の聖女様がジェニファーだってバレてしまう。ご先祖様が、また聖女様になって転生していることは知りたくないだろう。
ちょっと見に行って帰ってくるぐらいなら、問題ないかも?空中クローゼットを自室のクローゼットの中に展開してみる。
驚いたことにアルカイダ行きの扉も、ジャガード国行きの扉も普通にある。聖女領地行きの扉も聖女島行きの扉もそのままある。
これはもう行けるということに他ならない。
父に言う方がいいかな?そうすれば、流通の仕方が激変するもの。わざわざ、遠方まで荷馬車で運ぶ必要もなくなる。
その日、父が帰ってきてから、話をすることにした。
「お父様、お話があります」
「お!ジェニファーか、ひょっとして、向かいの家がアサシン国で盗賊に襲われたことと関係があるのかな?」
「え!なんですって!アラミスばかりか、シャーリー侯爵まで?」
「またシャーリー夫人が、ジェニファーに泣きついて、商品をまわしてくれと言ってきたのかと思ったんだよ。違うのなら、いいよ。話とは、何だい?」
「アサシンは陶磁器が有名ですものね」
「さすが、パパの娘だけあって、よく知っているね」
「実は、お父様、これからいうことは他言無用に願います」
「ふむ。いいだろう」
「実は、わたくし聖女様なのです。それも、3度目の聖女様」
「は?3度目とは、どういうことだ?」
「聖女様は1000年に一度しか誕生しないものなのですが、人々は、残り900年の間、聖女様なしで暮らしていかなければなりません。そこで神様は、最初に誕生した聖女様を転生させて、1000年の時を維持するというわけです」
「なるほど、利にはかなっているな」
「2度転生して、今世は3度目の聖女様をしているというわけですが、先ごろ、アラミスがムーラン国で亡くなったという噂を耳にしまして、……実は、前世、ムーラン国といかばかりのご縁があり、アラミスの元婚約者が聖女様の可能性があるということから、わたくしに魔法鳥をよこしてきた次第でございます」
そう言いながら、父に手紙の内容を見せる。
これは、なんとしてでも、聖女様をお迎えせねばならない。
ムーラン国は、偽聖女様しか輩出していないということが、あまりにも不名誉なことだから。
大陸を横断して、1年かければ、到着するだろう。しかし、そんなことをしているうちに、他の国に先を越されるかもしれない。途中で、馬を乗り捨てて行けば、もっと早く到着できるだろうが、馬はせいぜい走っても30分が限度、競走馬のような馬は早いが、5分しか走れない。
どうしたものか、諦めるか、思案のしどころというところ。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
その頃、ジェニファーに魔法鳥が届いている。送り主は、ムーラン国で、懐かしいと感じている。
でもそれは、同時に縁談かもしれないと身構えてしまうことも確かだ。
ムーラン国で、アラミスが落雷死したことを知らせる内容から始まる。アラミスの元婚約者という線から辿って、ジェニファーに手紙を送ったらしい。
「もし、聖女様であれば、一度、我が国へいらしてください」
懐かしいだけでは行けないのよ。だって、聖女様であることは、まだ親にも言っていないことだもの。
それに隣国のシドニー国のことはあるしね。今は前世の聖女様の子孫が国の政治を行っているのに、その魂が転生しただけということで口出しすることはできない。
でも、ムーラン国は、懐かしいな。それに聖女島も今もあるのかしら?
思い出してしまったら、急に前々世の聖女領が今はどうなっているのか、見てみたい気がする。
でも、今行ったら、今世の聖女様がジェニファーだってバレてしまう。ご先祖様が、また聖女様になって転生していることは知りたくないだろう。
ちょっと見に行って帰ってくるぐらいなら、問題ないかも?空中クローゼットを自室のクローゼットの中に展開してみる。
驚いたことにアルカイダ行きの扉も、ジャガード国行きの扉も普通にある。聖女領地行きの扉も聖女島行きの扉もそのままある。
これはもう行けるということに他ならない。
父に言う方がいいかな?そうすれば、流通の仕方が激変するもの。わざわざ、遠方まで荷馬車で運ぶ必要もなくなる。
その日、父が帰ってきてから、話をすることにした。
「お父様、お話があります」
「お!ジェニファーか、ひょっとして、向かいの家がアサシン国で盗賊に襲われたことと関係があるのかな?」
「え!なんですって!アラミスばかりか、シャーリー侯爵まで?」
「またシャーリー夫人が、ジェニファーに泣きついて、商品をまわしてくれと言ってきたのかと思ったんだよ。違うのなら、いいよ。話とは、何だい?」
「アサシンは陶磁器が有名ですものね」
「さすが、パパの娘だけあって、よく知っているね」
「実は、お父様、これからいうことは他言無用に願います」
「ふむ。いいだろう」
「実は、わたくし聖女様なのです。それも、3度目の聖女様」
「は?3度目とは、どういうことだ?」
「聖女様は1000年に一度しか誕生しないものなのですが、人々は、残り900年の間、聖女様なしで暮らしていかなければなりません。そこで神様は、最初に誕生した聖女様を転生させて、1000年の時を維持するというわけです」
「なるほど、利にはかなっているな」
「2度転生して、今世は3度目の聖女様をしているというわけですが、先ごろ、アラミスがムーラン国で亡くなったという噂を耳にしまして、……実は、前世、ムーラン国といかばかりのご縁があり、アラミスの元婚約者が聖女様の可能性があるということから、わたくしに魔法鳥をよこしてきた次第でございます」
そう言いながら、父に手紙の内容を見せる。
0
お気に入りに追加
801
あなたにおすすめの小説
【完結】結婚しておりませんけど?
との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」
「私も愛してるわ、イーサン」
真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。
しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。
盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。
だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。
「俺の苺ちゃんがあ〜」
「早い者勝ち」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\
R15は念の為・・
【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。
airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。
どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。
2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。
ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。
あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて…
あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ★9/3『完全別居〜』発売
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
「これは私ですが、そちらは私ではありません」
イチイ アキラ
恋愛
試験結果が貼り出された朝。
その掲示を見に来ていたマリアは、王子のハロルドに指をつきつけられ、告げられた。
「婚約破棄だ!」
と。
その理由は、マリアが試験に不正をしているからだという。
マリアの返事は…。
前世がある意味とんでもないひとりの女性のお話。
(完結)私はあなた方を許しますわ(全5話程度)
青空一夏
恋愛
従姉妹に夢中な婚約者。婚約破棄をしようと思った矢先に、私の死を望む婚約者の声をきいてしまう。
だったら、婚約破棄はやめましょう。
ふふふ、裏切っていたあなた方まとめて許して差し上げますわ。どうぞお幸せに!
悲しく切ない世界。全5話程度。それぞれの視点から物語がすすむ方式。後味、悪いかもしれません。ハッピーエンドではありません!
死者からのロミオメール
青の雀
ミステリー
公爵令嬢ロアンヌには、昔から将来を言い交した幼馴染の婚約者ロバートがいたが、半年前に事故でなくなってしまった。悲しみに暮れるロアンヌを慰め、励ましたのが、同い年で学園の同級生でもある王太子殿下のリチャード
彼にも幼馴染の婚約者クリスティーヌがいるにも関わらず、何かとロアンヌの世話を焼きたがる困りもの
クリスティーヌは、ロアンヌとリチャードの仲を誤解し、やがて軋轢が生じる
ロアンヌを貶めるような発言や行動を繰り返し、次第にリチャードの心は離れていく
クリスティーヌが嫉妬に狂えば、狂うほど、今までクリスティーヌに向けてきた感情をロアンヌに注いでしまう結果となる
ロアンヌは、そんな二人の様子に心を痛めていると、なぜか死んだはずの婚約者からロミオメールが届きだす
さらに玉の輿を狙う男爵家の庶子が転校してくるなど、波乱の学園生活が幕開けする
タイトルはすぐ思い浮かんだけど、書けるかどうか不安でしかない
ミステリーぽいタイトルだけど、自信がないので、恋愛で書きます
聖女召喚された科捜研の女~異世界科学捜査で玉の輿を狙う
青の雀
ファンタジー
分析オタクのリケジョ早乙女まりあは、テレビドラマに憧れ京都府警の科捜研の研究員となる。
京大院生との合コンの日、面白半分で行われた魔方陣によって異世界へ召喚されてしまうハメに
今は聖女様は間に合っていると言われ、帰る手立てもなく、しばらく異世界で分析を満喫することにする
没落した貴族の邸宅を自宅兼研究室、ならびに表向き料理屋をすることにして、召喚の慰謝料代わりに分捕った。
せっかく異世界へ来たのだから、魔法という非科学的なものを極めたいとポジティヴな主人公が活躍する
聖女様と言えども今は用なしの身分だから、平民と同じだけど邸宅だけは貴族仕様
かりそめの貴族ライフを楽しみつつ、異世界で巻き起こる様々な事件を現代科学の粋で解決に導く……予定です
ついでにイケメン騎士団長や王弟殿下のハートを射止めることができるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる