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第3章

73.ざまあ

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 婚約破棄騒動以来、オマーン家とシャーリー家は犬猿の仲そのものになってしまい、それまで商品を融通しあっていた契約もすべて白紙撤回される。

 その結果、シャーリー家はジリ貧に陥ることになったのだ。

 シャーリー家は、新たな仕入れ先を模索することになり、アラミスとシャーリー侯爵は、バイヤーよろしく世界各地を飛び回ることになる。当然、家には侯爵夫人と婚約者のアイリーンだけ。

 シャーリー家の奥向きの使用人はいるものの、みんな子爵令嬢上がりのアイリーンなどバカにして、誰もまともに言うことを聞かない。

 せめてオマーン家を円満退職していたなら話は別だが、家令も侯爵夫人の指示で、アイリーンには、お小遣いすら渡してもらえない。

 身の回りのこと、すべて、自分一人でやっているばかりか、侯爵邸の掃除、ベッドメーキングも引き受けているというのに、タダ働きを強いられている。

 アラミスも婚約当時は、抱いてくれたけど、想像妊娠だったことがバレ、今やすっかりご無沙汰のレス状態、アイリーンとしては主家を裏切ってまで、危ない橋を渡った意味がない。

 そんな時に事故が起きる。

 アラミスが感電死したのだ。場所は買い出しに行っているさなか、ムーラン国の国境付近で、アラミス一人だけの上に雷が落ちて死んでしまう。

 シャーリー家から10000キロメートルも離れたところで、そんな遠方に駆け付けることなど不可能に近い。

 それで荼毘に付して、お骨だけを届けてもらえるように手配したのだが、あちらでは、ちょっとした騒ぎになっていると聞き、驚く。

 落雷死が一人だけと聞き、ムーラン国境警備隊は不審を抱く。

 口裏合わせをしていないかということ。もう一つは昔、ムーランで起こった事件に類似している、それは今から約100年ぐらい前のことだが、文献にきちんとした記録があり、騎士団に入団するときの試験問題にもなるほど有名な話。

「今から約100年前ムーラン国に聖女様を騙る不届きな少女が現れた。その少女は我が国の裡ではなく隣国の王妃になりたがりシドニーのコアラルンプール学園に行き、騒動をまき散らした。ムーランの隣国にいらした本物の聖女様は、事実確認のためシドニー国から空をとんでこられ、司祭様と国王陛下、近衛騎士団1個隊と少女の母を同行させ、空からコアラルンプール学園へ行く。そこで少女を尋問し、捕縛したのだが、聖女様はその少女には何の咎めもなさらなかった。その偽聖女が現れてから、聖女様は同級生の女子生徒から嫌がらせを受けていた。その女子生徒は、婚約者の浮気により婚約破棄されたばかりで、同情の余地はあったが、聖女様は怒るどころか、常に優しく冷静に対処されていたというのに、神様が怒ってしまわれたのだ。神様は天罰として、その女子生徒にだけ、雷を落とされ、感電死させたのだ。聖女様はそのことを悲しまれ、パートナーのいる者にちょっかいを出した女性は修道院送りか娼館送りを義務付け、浮気した張本人に対しては、廃嫡もしくは、夫人に爵位を譲位することを決められ、今やそれが世界基準となっている。」

 今回は、これと類似事件であることから、なんとしても、当事者の夫人?婚約者?に来てもらわないといけない。

 感電死したものの正体は、護衛の騎士の話から聞いている。名前はアラミス・シャーリー侯爵令息で、ここから遠く離れたカルダン王国の首都で貿易商を営んでいる。

 さらに、突っ込んで話を聞くと、現在の婚約者は、もともとの婚約者付きの侍女をしていたのが、アラミスに見初められ、元婚約者と婚約破棄したうえで、婚約者に収まったと聞く。

 婚約者の名前はアイリーン・リキエル子爵令嬢。これは、ますます聖女様に代わっての天罰が怪しいところ。
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